セブンの『海苔弁当』はコスパ悪いのか…オリジン、ほっともっとと徹底比較


セブンと弁当チェーンの『のり弁』
セブン-イレブンと弁当チェーン各社の「のり弁」

 コンビニエンス・ストア最大手のセブン-イレブン。その主力商品のひとつである弁当は、多くの人にとって身近であるがゆえに、価格の改変やリニューアルなどを行うと「改悪」と言われ、悪目立ちしてしまう印象がある。折しも、原材料高騰などで値上げせざるを得ない状況だけに、その内容やコスパに関して消費者はよりシビアになってきている。

 そんななかで、やり玉にあげられたのが、ベーシックな定番商品である「のり弁当」だ。

 セブンの『海苔弁当』は4月に価格変更を行い、464円(税込み、以下同)から496円に値上げとなった。さらに、白身魚フライやちくわ天のサイズが明らかに小さくなっており、一部の消費者からは「高くなったうえに、サイズダウンは最悪」との声がネットなどで溢れた。

 セブンでは、5月下旬から包装パックなどを従来の黒いものから、環境に配慮して着色工程を省いた白色の容器に変えている。この施策に対しても「また上げ底のステルス改悪か?」と、不信感を募らせている消費者も多い。

 そこで本記事では、セブンイレブンの『海苔弁当』を、持ち帰り系弁当チェーンの「のり弁」と比較。そのコスパと実力を改めてチェックしてみた。

「のり弁」は、あらゆる世代に愛されている定番商品。その構成要素は、ごはんの上に醤油で和えた鰹節を敷き、その上から海苔でカバー。おかずは白身魚フライ、ちくわ磯部揚げ、きんぴらごぼうにお漬物が定番。非常にシンプルなだけに、海苔やごはん、そしてそれぞれのおかずがしっかりしていないと、途端にチープになってしまうという奥深いメニューだ。

 各お弁当チェーンにとっても、「のり弁当」は売れ筋の看板商品。全メニューのなかでも最安値に設定されていることが多く、さまざまな価格が高騰中の現在では、あらゆる企業努力の結晶となっている。

 価格と味で火花を散らす大手弁当チェーン4社と、セブンの『海苔弁当』を、価格順に比較していこう。

コスパ抜群、オリジン弁当『タルタルのり弁当』

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 まずは首都圏を中心に全国516店舗を展開するオリジン弁当の『タルタルのり弁当』。価格はなんと320円。税抜き価格が300円を切るのは大手チェーンとしては驚異的で、それだけでコスパ抜群だ。

 おかずは、白身魚フライがミニサイズの2個付けとなっているのが特徴的。ちくわは、ちゃんと青海苔の入った磯部揚げになっている。さらに1つ25円で別売しているタルタルソースが添付されており、醤油も付いているので味変も自由自在だ。

 容器込みの重量は350グラム。ごはんのボリュームも十分といったところで、ベーシックに徹しながらも隙のない完成度。不動の人気ナンバー1商品だという。

弁当店らしさがあふれる本家かまどや

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 つづいては、屋号の前に「全国チェーン」と誇らしげに宣言する本家かまどやだ。

 こちらの『のり弁当』は360円。白身魚フライ、ちくわ揚げ、きんぴら、大根漬けといった定番おかずが並ぶ。ごはんの上には、海苔と鰹節に隠れて見えにくいが、昆布の佃煮も入っているのが素晴らしい。さらに揚げ物同士の間に緑のバランが挟んであるのも、弁当店の矜持を感じる。添付調味料はストレートな「ソース」で、これはこれで白身魚フライにピッタリだ。

 海苔にもこだわりがあるようで、色が濃く、厚め。白身魚フライは魚の風味が強く、ワイルドな味わい。ちくわは斜め切りの剣先タイプで大きめに見せている。磯辺ではないので風味はいまひとつだが、独特な食感のちくわとモフっとした衣は悪くない。容器込み重量は約360グラムだった。

満足感は十分、ほっともっと

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 弁当チェーンで最大の店舗数を誇るほっともっと。地域によってメニュー、価格の変動はあるようだが、定番の『のり弁当』は全国的に380円で統一されている。

 こちらの特徴は、とにかくシンプルでボリューミー。ちくわ天の大きさは、今回比較したなかでも最大級。味も濃い目なので、このちくわだけでごはんを食べ進めることができる推進力がある。さらに、添付の「だし醤油」も肉厚の白身魚フライにかければ、ごはんが進む。ごはんには隠し味のように昆布の佃煮が仕込んであり、味と食感の変化を楽しめる。

 容器込み重量は、なんと約400グラム。成人男性でもおなかいっぱいになること確実で、コスパ十分といえるだろう。

マヨしょうゆの魔力が光る、ほっかほっか亭

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 弁当チェーンの老舗ほっかほっか亭。「のり弁当」の値段は大台に乗った400円で、大きめの白身魚フライ、ちくわ天、きんぴらごぼう、そしてお新香は今回の比較したなかでは唯一の「きゅうり漬け」。味わいは全体的にプレーンな印象で、白身魚フライは懐かしい感じの衣感。ちくわ天も“ノン磯辺”なので淡白だ。

 しかし、そのすべてをジャンクに変貌させるのが添付の「マヨしょうゆ」。これをかけると、途端にごはんが進む。しっかりとした海苔も存在感十分で、容器込み重量は約380グラムとなっている。

弁当チェーン各社より高価格、セブン-イレブンの『海苔弁当』

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 意外と個性的で、それぞれ強みがあるライバルたちを比較してみた所で、いよいよセブンイレブンの『海苔弁当』をチェックしてみよう。

 496円は、価格でいえば最高値。コスパに関しては、この時点でかなりのビハインドだ。

 おかずの構成要素は白身魚フライ、ソース付きコロッケ、ちくわ磯辺天、トマトソーススパゲッティ、ごま入りピリ辛きんぴらごぼう、玉ねぎ入りタルタルソース、大根漬けといったところ。

 白身魚は風味が強いが、どことなくマクドナルドの「フィレオフィッシュ」系の味わい。ちくわも味が濃い目だが、ちゃんと磯辺なのはポイントが高い。ただし、サイズは明らかに小さめだ。そのボリューム不足を補うのが、他社の弁当には入っていないコロッケ。ぎゅっとプレスされたような食感で味は濃いが、全体を引っ張るほどの存在感は無いというのが正直な感想だ。トマトスパゲッティは、いわゆるガロニなので味は期待していないが、若干のトマトテイストが箸休め的な役割を担ってはいる。

 コスパ感に影響を与えるボリュームだが、意外にも容器込み重量は約390グラムとトップクラス。“ステルス減量”が噂されていたが、弁当しては十分な満足感を保持しているといっていいだろう。

コンビニの弁当が弁当専門店よりコスパ悪い理由

 今回の比較では、セブンの『海苔弁当』が価格的にも内容的にも劣勢となってしまったが、『ある意味では仕方ない。しかし、その企業努力に対して消費者は応援するべき」と評価するのは、流通ジャーナリストの渡辺広明氏だ。

「お弁当という商品は、食材のレベル同じだとしても、できたてのほうが美味しく感じるものなんです。それに流通や廃棄ロスの問題もあり、その場で調理する弁当チェーンのほうがコスト的にも効率良いのは否めません」(渡辺氏)

 のり弁当は各弁当チェーンの看板商品であるため、採算度外視の“お値打ち商品”として提供していることが多い。その土台から違っているので、コスパ的にもコンビニ弁当と単純な比較はできないのだ。

「実はコンビニ弁当は、この数年間で売り上げが落ちている商品なんです。消費税の軽減税率やコロナ禍のロックダウン時などを経て、スーパーや一般的な飲食店も、弁当や持ち帰り商品に力を入れ始めました。要するに、ライバルが増えたんです。また、最近にコンビニではスマホを観ながら片手で食べられるようなワンハンドな食品は伸びていますが、腰を据えて食べる弁当のような商品は敬遠される傾向にあるようです」(同)

 すでに売れ筋商品ではなくなっている弁当に対して、コンビニが注力するのは難しい局面にあるのかもしれない。

「とはいえ、コンビニも様々な企業努力はしています。素材の選定、買付けから製造、流通過程にいたるまで、あらゆる部門でコストカットを図っています。セブン-イレブンは、環境的負荷を減らすために容器を一新しましたが、一部の商品では同じ形のトレイを流用することで効率性を高めてコストも下げるなどの施策をしています」(同)

 内容のリニューアルや容器変更は、一部の消費者から「ステルス値上げ」と揶揄されがちだが、その目的はお客に最大限の価値を提供するための企業努力にほかならない。

「日本の経済はシュリンクしており、食料自給率も低いので、紛争などの国際的なリスクを除いても、食料品に対する値上げ基調というのは避けられません。その大きな流れに対しては、いくら企業努力をしても逆らえない。大手コンビニも企業ですから、今までと同じ利益率で商売するためには、値上げするしかないんです」(同)

 値上げした価格であっても、海苔弁当のような日常食は「薄利多売」が前提となる。

「薄利多売であるからには、消費者は『多買』して買い支えないといけない。その循環があってこそ、よりお得な商品が開発されていくので、多少値段が高くなったとしても買い控えはしないほうが経済的にはいいですね」(同)

 こうして、様々な「のり弁当」を比較できること自体が、消費者にとって恵まれている状況のようだ。値上げラッシュの今だからこそ、ここに挙げた商品だけでなく様々な「のり弁当」を買って、食べ比べてみてほしい。

(構成=清談社)

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