なぜそこまで働くのか?:社会にお金を廻す為に、私は稼ぎ投資をする

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人生の向かうところ

ずいぶん昔、ある方から「お金は使ってなんぼです」と言われたことがあります。自分だけが独り占めしないで貯めたお金を還元させるために使う、そのお金が世の中をくるくる回ることであらゆる層に幸せが行き渡り、最後はまた自分に戻ってくると。

「お前は確か、ミニマリストだったよな。なら、ビジネスもボチボチやっているのに消費しなければお金が社会に還元しないじゃないか」とご指摘を受けると思います。まずはこの辺りからご説明差し上げましょう。

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基本的に私のポケットにはお金がない、これが事実です。多少の貯金はありますが、月々のキャッシュフローとしてはタイトです。会社にはそれなりにあります。が、ミニマリストゆえ、お金を使わないというのは事実。よってさほど必要としないので給与は5-6年は上げていないと思います。従業員の給与はもちろん、毎年、引き上げていますし、引き上げ幅もできる限りのことはしているつもりです。ただ、私個人でいうと事業のスキームと税務、財務の戦略上、一旦もらって同時に違う形で手取りの大半が会社に戻るので結局、何も残らない、これがもう10年は続いています。

ではお前は何が楽しくて仕事をしているのか、とおっしゃるでしょう。私のことを金銭的に恵まれているというご意見もあると思います。恵まれているかどうかはその人の価値観の問題であってお金だけがその人を幸せにするわけではありません。日々を前向きに歩めるか、健康で文化的な生活を送っているか、家族や友人に囲まれた調和ある日々か、仕事やボランティア活動は楽しいか、長期的な人生のビジョンや目標を持っているか、そして社会に貢献しているか、などエレメントはいろいろあると思います。

その中で経営者を長年やり、いわゆるプロジェクトものが中心だった私の事業スタイルにおいて「すごろく」を例えに使うのですが、既に3回ぐらいゴールしていると思っています。一度目は事業を成功させたい、二度目は社会的に認知されたい、三度目は自分自身を強くしたい、だったと思います。これらを経て今、四度目ならば社会貢献が主力です。

2005年に24時間営業の駐車場のビジネスを始めた際、日本から来たワーホリの若者を主力で採用しました。2007年にカフェをオープンした時も同じで日本の若者が主力労働力でした。理由は自分が19歳から外国をさまよい、外国で学んだ時のチャンスや苦い経験がその後、国際人として大いに役立ったこと踏まえ、日本の若者に多くの経験のチャンスを提供したかったのです。

英語が通じない、あるいは下手すぎ、客対応ができないなど当時、私のクライアントからはクレームだらけでしたが、彼らになぜうまく出来なかったかを諭しながら守ってきたつもりです。今は非営利団体の会長を通じて学生さんたちを様々な形で支援しているし、一緒に業務をやっている介護事業の40名近いスタッフの人事やトラブルシュートもやっています。

また、これらは私が本業の時間を削ってでもやっていることです。一種の信念でもあります。

では事業とお金の話はどうなのでしょうか?多分、私は北米で感化されたことがあるようです。アメリカの成功者がなぜ巨額の寄付や慈善団体運営をするのだろうと考えた時、自分の稼いだお金から自分の一生分の生活費とわずかの子供たちへの支援金や資産の譲渡分を差し引いた残りは社会に還元すべきだという考え方を学びました。ビルゲイツさんはその典型ですね。しかもお金だけではなく、時間的コミットメントもしています。

なので私が今、ろくな給与も取らず、シャカリキに働いているのは社会にメリットがあることを残すために止まらぬ投資と事業展開を行うのです。そして私の具体的目的はバンクーバーにおける日本のプレゼンス(存在感)と日系社会の充実なのです。

例えば今、開発中のグループホームはわずか10床なのに事業費が5億円ぐらいかかっています。今、このバンクーバーで日系の施設は一つしかなく、入居には長いウエイティングリストがあります。要は全く足りないのです。ではもっと作ればよいといっても日本のように簡単にポンポン許可がおり、安価なコストで建築はできません。このグループホームの許可取得には2年7か月かかっていて議会に4回かかり、当局と激しい攻防の末に取得したのです。今これをできる日本人はほとんどいません。それ以上に資金がかかるので事業をしながら稼がなくてはいけないのです。

私は日本の書籍と教科書の輸入卸と販売事業もやっています。私どもはカナダで唯一の正規ルートの輸入販売業者です。書籍なんて利益を考えてビジネスをしたらやっていられません。だけど、日本の本が読みたいと思った時どうしますか?つまり、日本の存在感と日本の書籍へのアクセスというインフラのようなものなのです。つまり、これも私なりの社会貢献のスタイルなのです。

ある方からバンクーバー中央図書館に最新の日本の絵本や児童向けの本が溢れていて重宝していると言われました。嬉しいです。私どもは同図書館に年間1000冊以上卸していてそのうち、児童書が1/3を占めており、図書館からはもっと増やしてほしいと言われています。当地にいる日本のお子さんにも絵本や児童書が提供できることは私どもの社会的存在意義があると思っています。

私はこの経済活動をもう少し続けなくてはいけません。だから稼がねばなりません。株の話をするのも投資の話をするのも最終的にはその還元が目的です。社会にお金を廻す、その為には私は稼ぎ、更に投資をし、新たなインフラを作り、社会の整備をしたいのです。自分の快楽や贅沢を考えたことはないしそんな暇もないのです。

ストイックに、これが私のスタンスです。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年9月18日の記事より転載させていただきました。

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