「核融合」は一体どんな反応なのか?次世代のクリーンエネルギーとして期待される理由とは

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核分裂とは異なり放射性廃棄物をほとんど排出せず、温室効果ガスも排出しないという特性を持っているのが「核融合」です。この核融合とは一体どんな反応なのかを、科学系メディアのLiveScienceが解説しています。

What is nuclear fusion?
https://www.livescience.com/23394-fusion.html

軽い核種同士が融合してより重い核種になる反応を、「核融合(核融合反応)」と呼びます。核融合は恒星の内部などでも起きており、これを用いた発電方法は「核廃棄物をほとんど生成しない」「温室効果ガスを排出しない」といった特徴を持っているため、従来のエネルギー源に変わるクリーンエネルギーのひとつとして注目を集めています。

核融合時、新しく生まれた重い核種の総質量は、元となった2つの軽い核種の総質量よりも小さくなります。この時に失われた質量は、アルベルト・アインシュタインの質量とエネルギーの等価性で説明されている通り、エネルギーとして放出されます。

通常、原子核は同じ電荷を持っているため互いに反発します。核融合を起こすにはこの反発力に打ち勝つ必要があり、それには高温、高圧、あるいはその両方が必要となるそうです。オークリッジ国立研究所によると、地球上に存在する核融合炉は恒星の核ほどの高圧を再現することができないため高温に頼っているそうで、その温度は太陽の核温度の約6倍にも達する模様。この極度の高温により、核融合炉の中で水素は気体から、原子から電子がはぎ取られた非常に高エネルギーの物質状態であるプラズマに変わります。


この「核融合を引き起こすのに必要なエネルギー」以上のエネルギーを反応後に得ることができれば、核融合は核分裂とは異なりクリーンなエネルギーであるため、人類にとって非常に有用なエネルギー源となります。そのため、科学者たちは何十年もの間、この目標を追求するべく研究を行ってきました。

そして2022年12月13日、アメリカ合衆国エネルギー省はついに核融合を引き起こすのに必要なエネルギーよりも多くのエネルギーを核融合により生み出すことに成功したと発表しました。実験ではローレンス・リバモア国立研究所の研究者が、約200本の高出力レーザーを照射することで水素の同位体である重水素と三重水素のプラズマを閉じ込め、核融合を引き起こしています。

エネルギー省が正式に核融合実験でエネルギー投入を上回る出力を達成し「点火」を確認したと発表 – GIGAZINE


ただし、専門家は商用の核融合炉が実現するのは数十年先になる可能性が高いと言及しています。その理由は、反応を引き起こすのに必要なエネルギー量があまりにも膨大過ぎるから。プラズマを加熱するには送電網からエネルギーを引き出す必要があるため、核融合炉に供給される電力が光に変換される際に失われるエネルギー量も考慮すると、かなり膨大なエネルギーを生成できるようにならなければいけないというわけです。

記事作成時点で地球上で最も有望と考えられているのは、重水素と三重水素(トリチウム)を核融合させるというもの。このプロセスでは摂氏3900万度という高温が必要となり、1760万電子ボルトのエネルギーを生成することができます。重水素と三重水素の核融合は、カリフォルニア州サンディエゴにあるDIII-D国立核融合施設で実験が進行中。フランスのITER計画でも同様の核融合実験が進行中で、こちらの計画では強力な磁石を使用したトカマク型の核融合炉が採用されています。


重水素と重水素の核融合は、理論的には2つの重水素原子を簡単に取得でき、生成されるエネルギー収率も高いため、重水素と三重水素の核融合よりも有望とされています。この方法も非常に高い温度が必要です。ITERによると、いくつかの試験用核融合炉は摂氏約1億5000万度の温度に達する可能性があるそうですが、重水素と重水素の核融合には少なくとも摂氏4~5億度の温度が必要になるとのこと。そのため、重水素と重水素の核融合は重水素と三重水素の核融合よりも実現が近いとは言えないのが現状です。

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