ここはミステリー小説の舞台だろうか 静岡県焼津市(行ってかよかった市区町村)

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はじめに

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ここはミステリー小説の舞台だろうか
静岡県焼津市
(JUNERAY)

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あいにくの曇天だが、本当はここに大きな富士山が見えるらしい。

水に関連した名の土地は、かつて水害が多かった場所だから、家を建てるときは気をつけろと聞いたことがある。
「蛇」は「蛇崩(土砂崩れのこと)」とか、「梅」は「埋め」の当て字だとか。

それにしたってこの町の海岸はすごい。地名にさんずいが入ってるどころの騒ぎではない。
だって、その名を「大崩海岸」というのだ。

筆者が焼津に行ったのは、この記事のときの話だ。ワーケーションの予定で、焼津の良い雰囲気の老舗ホテルに部屋を取り、MacBookを片手に砂利浜を散歩した。

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砂利浜の波打ち際は透明度が高い。裸足で入ると足ツボマッサージよろしく痛い目に遭うので、サンダルには犠牲となってもらった。

その数十分後。
なにやら街の方が騒がしいと思ったら、街灯もまばらな暗い道に、パトカーがずらりと並んでいる。何か事件だろうかと横を通り過ぎようとしたら、警察の方が出てきて、「土砂崩れがあったので、この道は通れません」と言われた。

ホテルに向かう、唯一の車道だった。

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それではホテルに戻れないのですが、と言ったら、階段で遠回りの道ならあるから、そちらを通ってくださいとのことだった。遠くに波の音を聴きながら、真っ暗な細道をiPhoneのライトで照らして歩く。

きっと「せっかくの旅行が」とでも思うべきなのだろうが、正直ちょっとドキドキしていたし、死傷者も出なかったと聞いて、さらにワクワクしてしまっていた。友人に「土砂崩れがあってホテルへ繋がる道が通れなくなった」とメッセージを送ったら、「ホテルに戻ったら電話線が切られてるよ」と返事があった。

ミステリー小説の舞台になりそうな、レトロでいい雰囲気のホテルだったし、正直それも面白いかもなと考えた。不謹慎だけど、真っ暗な細道で、とぼとぼ歩く人間にはそのくらいの妄想がちょうどいい。

ようやくホテルに辿り着けたのは深夜で、誰もいない薄暗いロビーは、海外サイトでいう「Liminal Space」のミームみたいで格好良く見えた。平日に宿泊していたせいか、自分達以外の宿泊客は老人ばかりだったし、まるで昭和の時代のままずっと穏やかに閉ざされているようだった。

そのホテルが心から気に入った。ぜひまた泊まりたいと思った。

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崖の上に聳え立つホテルは、フィクションの探偵が休暇にでも来てそうな、それはそれは素敵なところだったのだ。

一晩経っても、幸運なことに殺人事件は怒らなかった。ただし道路は塞がったままだ。

ホテルのスタッフさんたちはとても優しく、隣町に行くための道がもう一つあるから、駅のある街まで車を出してくれるという。
車窓から見た海岸はまるでツギハギで、崩れ落ちた道路を塞いで、新たな道を海の上に増設していた。スタッフさんは「大きな土砂崩れなんて、ここ10年くらいなかったんですがねえ」と言った。

なんとも不思議な海岸だと思い、Googleマップで現在地の地形を拡大したら、堂々と踊る「大崩海岸」の文字。

痛快なオチをつけられたようで、なんだか笑ってしまったのだった。

終わってふたたび解説です

静岡県焼津でのワーケーションの際のエピソードを、JUNERAYさんが紹介してくれました。

サンダルで海へ入っていた数十分後に、ここ10年くらいなかったくらい激しい大雨に見舞われたという話でした。大変な体験をされていますが、ホテルのスタッフの方は優しかったそうで良かった…。天気の良い日にぜひ再訪していただきたいです。

今から入会しても、過去に掲載したコラムのバックナンバーは、はげます会専用ページで全部読めます。(はげます会担当 橋田)

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