岡山県の瀬戸内海沿いのどこかに大きな四つ手網が備わった寝泊まりできる小屋があり、そこでは夕方から翌朝まで好きなだけ漁をしつつ、獲れたての魚を調理して食べることができるらしい。どう考えても私好みの最高なレクリエーションである。
とはいっても、小屋を借りるには4人以上が望ましいのが悩みどころ。かなりの遠方で人を集めるというハードルを前に、数年間ただただモヤモヤしていたのだが、なんと大阪在住で四つ網経験者のスズキナオさんが誘ってくれた。
憧れの四つ手網は、すごくすごく、楽しかった。
動画を用意しました
当日の様子を動画にまとめたので、記事を読む前でも後でもどちらでもいいので、よろしければ観てください。
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楽しかったんですよ。
四つ手網を上げるために岡山へ
私は埼玉在住なので、岡山の地はまあまあ遠い。せっかくだからと途中の大阪に数日滞在して、今回の幹事であるナオさんと一緒に取材やらイベントやらをこなしてから、旅の最終目的地として四つ手網へと向かった。
今回のメンバーは全部で7人らしいが、ナオさん以外はまったく存じ上げていない方々。事前に用意されたLINEグループで多少の情報共有はあったのだが、そこは5人だけだったし。
いろいろとふわっとしているが、不安よりも楽しみの方がずっと大きい。四つ手網の小屋とは一体どんな場所で、なにが網に入るのだろう。
参加メンバーの一人は仕事の都合で遅れて合流するそうで、とりあえず6人が西大寺駅に集まった。事前に全員と会ったことがあるという人はおらず、友人の友人という関係性が強い集まりである。
この日は5月末の平日で、なんと明日も平日。お天気の話などをしつつ参加者の様子をうかがうと、みんな岡山で網を引き揚げるために仕事をどうにか休んで、大阪、神戸、名古屋などから集ったようだ。
お互いがお互いを「四つ手網のためにわざわざ?」と思っているに違いない。
過度の期待はせずに食材をしっかり買う
四つ手網の経験があるナオさんによると、網に掛かった魚ですべてのおかずを賄うというのは現実的ではないので、事前に必要量の食料や酒類を購入すべきとのこと。あくまで四つ手網というアトラクション付きのキャンプ、お泊り会なのである。
みんなで食べる食材は割り勘、各自で飲むお酒は個人購入という、飲む人と飲まない人が平等なお会計が提案され、即採用された。気遣いのできる大人たちである。結果として全員がそこそこ飲むメンバーだったのだが。
今日の夕方から明日の朝までという期間で、我々はどれくらいの食材を食べて、どれくらいの酒を飲むのか。そこに四つ手網漁という不確定要素も加わるため、何をどれだけ買ったらよいのかが悩ましく、だからこそ楽しい。
これが岡山県児島湾の四つ手網小屋だ
西大寺駅から四つ手網のある場所まではかなり遠いので、いったん駅まで戻ってタクシーに分乗して向かう。
「田中さんの四つ手網はわかりますか?」と聞いてみたが、さすがにベテラン運転手さんでもそこまでピンポイントにわかる訳ない。後から分かったことだが、四つ手網の小屋はズラッと20基以上も並んでいるのだ。
一度行ったことのあるナオさんが、スマホのグーグルマップで大体の場所を伝えようとしたところ、そこには「四手網 田中」と表示されていた。めでたし、めでたし。
きれいに護岸整備された岸壁に、海の上へと大胆にせり出した小屋がいくつも並び、その先には大きな四つ手網が構えられていた。我々はここで朝を迎えるのだ。
ナオさんが予約した青い屋根の田中さんの小屋は、気の利いたことにすでに網が降ろされている。
網の設置された場所の水深は50センチ程度だろうか。魚が集まるような場所とは思えないが、こんな場所でも獲れてしまうのが瀬戸内海なのだと信じよう。
これは素敵な場所だ
小屋の扉を開けると、そこは子供の頃に夢描いた秘密基地そのものだった。いやそれ以上だ。
ガスこそカセットコンロだが、電気と水道はちゃんと使える。冷蔵庫と流しがあり、鍋や包丁もあるので料理し放題。
もし私が岡山に生まれていたならば、どうにかして小屋を一つ買い取って、ここでのんびり原稿を書いたり、日々の水揚げをツイートしていたかもしれない。
まだ一度も網を引き揚げていないのに、もうすでに興奮と妄想が止まらない。