サル痘は新型コロナのように「自宅検査」ができるのか?

GIGAZINE
2022年08月11日 20時00分
メモ



ヨーロッパやアメリカでサル痘の感染が急速に拡大していることを受けて、WHOが2022年7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したほか、アメリカも8月4日に緊急事態を宣言しました。日本でも8月5日に国内での感染事例としては初の感染例が報告され、10日には4例目の感染者が報告されるなど流行のきざしを見せて始めているサル痘を家庭用の簡易な検査キットで検査できるのかどうかについて、専門家は慎重な姿勢を示しています。

Monkeypox can’t use the same at-home testing playbook as COVID-19 – The Verge
https://www.theverge.com/2022/8/4/23292267/monkeypox-home-testing-saliva-lesions-covid


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック発生初期には、多くの国で検査体制の不備が問題となりました。なぜなら、正確かつ迅速に感染者が特定できれば、感染の急拡大が抑制できた可能性があるからです。この反省から新型コロナウイルス感染症の検査に多くの研究資金が投じられた結果、家庭でも感染の有無が検査できる検査キットが一般に流通したり、自治体から無料で配布されたりするようになりました。

新型コロナウイルス感染症の教訓を踏まえると、感染拡大に歯止めがかからなくなりつつあるサル痘についても、迅速に検査キットを開発すべきだという声が上がっています。しかし、スタンフォード・ヘルスケアで簡易迅速検査システムの担当者を務めているベン・ピンスキー教授は、「新型コロナウイルス感染症とサル痘は全く違う感染症です」と警告しました。

具体的には、検査用サンプルの採取方法に違いがあります。新型コロナウイルス感染症は呼吸器疾患なので、検査するためのサンプルは鼻にスワブと呼ばれる綿棒を差し込むことで採取できます。一方、顔や手足にできる水疱(すいほう)などが主な症状であるサル痘を検査する場合は、水疱の内容液やかさぶたなどの体組織、つまり病変部の採取が必要になります。


ピンスキー氏によると、このタイプの検査は困難だったり痛みを伴ったりするので、同様の症状を呈するヘルペスにも家庭用の検査キットはないそうです。

また、検査に病変部が必要だということは、症状が出てからでなければ検査を受けられないということでもあります。新型コロナウイルス感染症の場合、症状の有無にかかわらず検査が可能ですが、サル痘では「できものはないけど発熱したので心配」という人を検査することはできません。ワシントン大学生物工学科のポール・イェーガー教授は、「私はサル痘の自宅検査を強く支持していますが、適切な時期に適切なサンプルが必要なので、まだそれが可能なところまで来ていません」と話しています。

自宅検査キットの登場を期待している人にとって明るいニュースもあります。2022年6月に実施された、男性と性交渉をする若い男性12人を対象とした小規模な研究によると、唾液や精液からサル痘を検査することも可能かもしれないとのこと。また、医療ベンチャーのFlow Healthは既に、唾液をチューブに入れるだけで検査できるPCR検査を発表しています。ただし、この検査はまだアメリカ食品医薬品局(FDA)の許可も承認も得ていません。

Flow Healthは、「サル痘の検査は病変部を用いるべき」との立場を崩さないFDAと唾液検査のデータを共有していると、同社のアレックス・メシュキンCEOは述べています。しかし、サル痘ウイルスやサル痘に感染した兆候が唾液に現れるのかどうかやその時期について見極めるには、まだ確かな研究データが不足しているのが現状です。


2022年8月8日時点で確認されているサル痘の感染者数が8934人に達しているアメリカでは、サル痘患者への偏見から検査技師が採血を拒否するという問題も発生しています。

また、同国では新型コロナウイルス感染症の死者数が100万人を突破し、第二次世界大戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争で命を落としたアメリカ人の2倍以上の犠牲者を出しています。そうした中でまた新しい感染症が流行しつつあることについて、The Vergeは「新型コロナウイルス感染症とは異なりサル痘は既知の疾患であり、検査や治療の方法は確立されていてワクチンもあります。それにもかかわらずこれほど対応が遅れているのは、この2年間からほとんど何も学んでいないということです」と厳しく批判しました。

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