銅は「2020年代の産業のコメ」に

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銅というのは実に地味な存在でオリンピックのメダルでも金、銀の次の3番目に甘んじています。一方、その輝きに対し、産業用途としては金の用途は割と限られています。装飾品以外ですと電子基板の表面処理だったりかつては音楽再生のプラグで金メッキしたものが使われていました。その点ではプラチナ(白金)も産業用途が多いのですが、価格は金が圧倒的に高い状態が続きます。

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その金の陰に隠れて目立たない銅ですが、実は「ドクターカッパー」とも言われるほど世界経済の先行きを占う非鉄金属として一部の世界では常に着目度が高かったのですが、いよいよその銅は「産業のコメ」として最重要資源と化す可能性が高まってきています。

私が長年売買を繰り返しているカナダ最大級の非鉄金属鉱山会社、テック リソーシズが数か月ほど前、スイスの資源メジャー、グレンコア社から買収提案を受けました。本件は珍しくカナダ政府が非常に真剣に取り組み、副首相で財務大臣のフリーランド氏が早々とテック社支援を表明し、同社の株主総会の直前にはトルドー首相までが国益を守ると述べ、スイスの会社による買収を防止する姿勢を強く見せました。私もこの時ばかりはオンラインの株主総会に出席し、行方をチェックしたほどです。

またカナダ第2位の銅採掘会社であるファースト クォンタム社が金採掘最大手でカナダのバリックゴールドから水面下で買収を探っているというニュースが本日伝わり、株価に’動意が見られます。

今、世界中で銅採掘会社を巡る買収合戦が繰り広げられています。アメリカの最大級鉱山企業、ニューモントがオーストラリアのニュークレストの買収提案を現在行っています。目的は銅です。鉱山会社の多くはGold Mining と名がついているところが多いのですが、金鉱山は掘削すれば金も出ますが、他の鉱物資源も同時に採掘できます。Gold Miningの社名がつく企業が多いのはそれだけ価値が高く見えるからでしょう。前述のオリンピックの話と同じです。まさか、Copper Miningではあまり聞こえがよくありません。

では銅がなぜ注目されているのでしょうか?私はこのブログで10年ぐらい前に銅が今後の世界経済を占うという趣旨のことを述べました。理由は電気自動車の普及に伴う銅の爆発的需要の増大なのです。また各種送電線や自動車のワイヤーハーネスなどその用途は広く、世界銅会議では2035年に需要が供給を超過する状態になると予想されています。その理由は銅が採取できる鉱山が限定されているからです。

例えば世界最大の銅採掘のポテンシャルがあるとされるモンゴルのオユトルゴイ鉱山については私も長年その採掘をしていた会社に投資をしていましたが、世界的巨大鉱山会社リオ ティント社に昨年、買収されました。オユトルゴイの採掘については株主としては非常にイライラした4年間だったと思います。理由はモンゴル政府の難癖です。またゴビ砂漠にあることで運搬を含めたインフラの問題もあり未だにうまく展開していないのが現状です。

我々は世界経済がどんどん右肩上がりに成長する夢を描いています。自動車はEV化が進むと想定しています。ある程度は進むのでしょう。しかし、それは資源供給ができるという前提での話だということを多くの人が忘れているか、気がついていないのです。

銅の金額はこれからも上下しながらも上昇基調になるのでしょう。カナダ政府がテックリソーシス社を守るとしたのもそれが理由です。今や国家の権益に繋がっているのです。ちなみに同社には住友金属鉱山が一部権益を持っており、役員も一人派遣しています。

ところで鉱山会社が主力とする金の採掘ですが、こちらも堀りつくし感が出てきています。「米地質調査所(USGS)の報告書によると金の世界埋蔵量は約5万2000トン。現在のペースで採掘し続けると、あと16~17年ほどで底をつく計算だ」(日経)とあります。よっていわゆるジュニア鉱山会社と称する企業の買収合戦がとめどもなく続く大戦国時代になっています。そしてそのジュニアの多くはここバンクーバーに本社がある企業が多いのです。前述のテック社もファーストクォンティアム社もバンクーバーが本社です。

あまり金儲けの話をするつもりはないのですが、これから先、枯渇するかもしれない資源には高い価値がつくことは容易に想像できます。一方、鉱山会社はより困難な採掘に挑む必要があるため、小さな会社ではコスト高で経営効率が悪い、だから買収に次ぐ買収が起きているというのがこの業界なのです。当然、相場も上がるでしょう。金の相場は現在2000㌦弱ですが、これが10年後に3千㌦や5千㌦になっても驚きはしない話かもしれません。もちろん、かつてなくなるとされた原油が未だに出てきているので「堀りつくし」が本当になるかは誰も断言はできませんが。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年6月15日の記事より転載させていただきました。