あなたの住民税がいくらか計算するには? ふるさと納税の限度額は?「住民税額シミュレーションツール」が便利 全国180の自治体の「住民税を試算できるサイト」まとめ+使い方を解説

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東京都千代田区の住民税額シミュレーションサイト「あなたの個人住民税がいくらになるか試算できます」

 6月は住民税のシーズン。サラリーマンの人は6月の給与明細に「住民税の決定通知書」が同封されていると思う。サラリーマン時代の筆者はチラ見して封筒に戻すだけだったが、SNSを見ると「ふるさと納税の確認がしたいから早く見たい」「保育料の計算に住民税の通知書が必要」といった人もいるようだ。今回は自治体が提供する住民税額シミュレーションツール/税額試算サイトを利用して、住民税の決定通知書を受け取る前に納税額などを知る方法を紹介したい。

「住民税額シミュレーション」を試してみた

 住民税額シミュレーションがどんなものか試してみた。税額試算する事例は1月に掲載した源泉徴収票の見方の記事で掲載したものを使用したい。

令和4年分源泉徴収票の例

年収650万円、妻、親、子ども2人と同居する河野一太郎さんの令和4年分の源泉徴収票

 事例の河野一太郎さんの住所が東京都千代田区なので、源泉徴収票を見ながら千代田区の住民税額シミュレーションサイトで入力をすると住民税が算出される。あっという間だ。

東京都千代田区の住民税額シミュレーションサイト

東京都千代田区の住民税額シミュレーションサイトにアクセス

住民税額シミュレーションサイトの源泉徴収票を模した入力画面

源泉徴収票を見ながら入力

住民税額シミュレーションサイトの試算結果画面

住民税が試算・表示される

 源泉徴収票は12月か1月の給与明細に同封されるので、住民税額シミュレーションを利用すれば6月を待たず数カ月早く住民税の納税額を知ることが可能だ。

導入率は全国で1741分の180(10.3%)、都市部で815分の172(21.1%)

 全国の自治体は総務省のサイトによると1718。特別区(=東京23区)を加えると1741となる。今回、サイト内検索なども利用しつつ数百の自治体のサイトを力技で調べ、筆者が確認できた住民税額シミュレーションを導入済みの自治体は180。導入率は1741分の180=10.3%となった。

区分 自治体数 導入自治体数 導入率
特別区 23 13 56.5%
792 159 20.1%
743 7 0.9%
183 1 0.5%
1741 180 10.3%
都市部 815 172 21.1%
町村部 926 8 0.9%

 特別区と市を合わせた都市部の導入率は21.1%。町村部は0.9%にとどまっている。住民税額シミュレーションの運営は民間企業が行っていて、その企業に対し各自治体は費用を支払う=税金を使って住民に対するサービスを提供している。利用者が多い自治体はコスト効率がよくなるので、予算の面も含め都市部の自治体の導入率が高くなるのは当然だろう。ちなみに“村”で唯一導入しているのは沖縄県読谷村だ。また、導入した住民税額シミュレーションを休止した自治体もあり、「予算が取れなかった」「利用者が少なかった」などと想像される。

 全国の自治体の導入率は10.3%、都市部は21.1%。主に人口の多い都市部の自治体が導入しているので人口カバー率は高く(30~40%くらい?)なると思われる。

 都道府県別に見ると、導入している自治体数が多いのは東京都(17)、愛知県(17)、大阪府(15)。導入ゼロは青森県、山梨県、高知県、鹿児島県など8県だ。

「住民税額シミュレーション」を実際に使ってみよう

 2社で9割を超える自治体に導入され、多くの人が使用すると思われるインテック「住民税額シミュレーションシステム」とサンネット「J’s-Cloud(住民税試算サービス」を使用して、実際に源泉徴収票から住民税の税額試算を行ってみよう。事例はこれまでと同じく河野一太郎さんの令和4年分の源泉徴収票。これをもとに、特別区の千代田区と品川区で試算してみた。

サンネット J’s-Cloud(住民税試算サービス)

 同じ源泉徴収票を用いて品川区の住民税試算サービスを使用してみよう。サイトにアクセスし注意書きを確認し[同意]をクリック。税額試算選択の画面で[税額試算/申告書作成]を選択しよう。税額試算/申告書作成メニューの画面が開いたら生年月日を入力、[源泉徴収票入力(給与)]をクリックしよう。

東京都品川区の住民税試算サービスのトップページにある注意書き

東京都品川区の住民税試算サービスにアクセスし注意書きを確認し[同意]

試算する税額の選択画面

[税額試算/申告書作成]を選択

税額試算/申告書作成メニューの入力画面

税額試算/申告書作成メニューの画面が開いたら生年月日を入力、[源泉徴収票入力(給与)]をクリック

 源泉徴収票のイメージ画面が表示されるので、入力可能な欄を源泉徴収票を見ながら転記する。先ほどのインテック「住民税額シミュレーションシステム」より入力可能な欄が多いのは、税額試算の結果から申告書が作成できるためだと思われる。源泉徴収票を受け取ったサラリーマンが別途、住民税を申告するケースは多くないと思われ、税額試算だけなら住所・氏名などは入力不要の自治体もある。

 支払金額(650万円)、源泉徴収税額(8万1600円)、配偶者「有」、扶養親族の人数、社会保険料(96万円)、地震保険料(1万円)、生命保険は3種の支払い額、最後に配偶者の所得(45万円)を入力しよう。

源泉徴収票の情報を転記する入力画面

入力可能な欄を源泉徴収票を見ながら転記

 入力が完了したら下段にある[税額試算]をクリックしよう。っと、ここで入力エラーが表示された。内容は

「控除対象配偶者」が「有」になっています。
「配偶者生年月日」を入力してください。

とのこと。控除対象の配偶者がいない人は「有」を「無」に変更。控除対象の配偶者がいる人は配偶者の生年月日を入力しよう。

 簡単に説明すると、納税者本人の所得が900万円以下の場合(=大多数の人)、配偶者が70歳以上の人の控除額は43万円、70歳未満だと33万円と差があるため生年月日の入力が求められた。前述のインテック「住民税額シミュレーションシステム」は配偶者控除の「老人」の欄が入力可能となっていて配偶者の生年月日の入力は不要だった。

 付け加えると、この品川区は住所などは不要で試算ができたが、他の自治体では住所・氏名を空欄にすると入力エラーが発生した。まずはミニマムで入力し、エラーが出たらその部分を追記しよう。

 配偶者の生年月日を入力して[税額試算]をクリックしよう。税額試算結果が表示される。住民税の年税額が19万4200円と表示された。

入力完了後にクリックする税額試算ボタン

入力が完了したら下段にある[税額試算]をクリック

入力エラー表示画面

入力エラーと表示された

配偶者の生年月日の入力フィールド

配偶者の生年月日を入力し[税額試算]をクリック

税額の試算結果が表示された画面

住民税の年税額は19万4200円

 ふるさと納税限度額を見ると4万6585円。前述のインテック「住民税額シミュレーションシステム」は4万6000円と微妙に差異がある。ふるさと納税の限度額の計算はそこそこ複雑で端数が出る。どちらも“目安”と書かれているし、585円の返礼品はないと思われ、実際には同じとみてよいだろう。

「住民税額シミュレーション」でできること

 住民税額シミュレーションの主な用途は源泉徴収票から住民税の税額を試算することだと思われるが、年金収入、退職金に対する税額試算などにも対応している。

試算する項目の選択画面(東京都千代田区のシミュレーションサイト)
試算する項目の選択画面(東京都品川区のシミュレーションサイト)

年金収入、退職金にも対応している

 サラリーマンの人は年末調整を行って、それを反映した所得税の源泉徴収票を受け取る。同じ情報が住民票を置く自治体に送られ住民税の算出される流れだ。医療費などを確定申告(還付申告)をした場合は住民税に反映される。この場合、確定申告前に受け取った源泉徴収票と確定申告に差異が発生するため、源泉徴収票を入力しただけでは、正しい住民税の税額試算はできない。源泉徴収票だけでは不十分は場合は、追加で確定申告の情報を住民税額シミュレーションに入力しよう。

医療費控除などの追加入力のための選択画面

医療費控除などを追加して税額試算が可能

180自治体の「住民税額シミュレーション」サイト一覧

 筆者が確認できた住民税額シミュレーションを導入している自治体は180(2023年6月10日現在)。取材で得た情報では7月から開始予定の自治体もあり、今後も増えていくと思われる。把握できた180自治体を都道府県ごとにまとめたので参考にしていただきたい。特別区を含め市区町村名をクリックすると各自治体のシミュレーションサイトを開くことができる。

 この一覧に都道府県名のない青森県、秋田県、山梨県、徳島県、愛媛県、高知県、宮崎県、鹿児島県は導入自治体を見つけることができなかった。

自分の住む自治体に「住民税額シミュレーション」がないときは

 前述のとおり住民税額シミュレーションの導入率は都市部の自治体で21.1%、町村部で0.9%となっている。町村部の人は99.1%が非導入、ぶっちゃけ自分の住む自治体に「住民税額シミュレーション」がない人の方が多い。どうする。

 住民税の地域差はそれほど多くはない。詳しくは住民税ランキングの記事を参照していただきたいが、一部を除き都道府県内はどの市町村でも住民税は同じだ。

 例えば北海道で住民税額シミュレーションを導入しているのは札幌市のみだが、道内で毎年普通に住民税を納めている人は旭川市でも夕張市でも美瑛町でも足寄町でも住民税に差はない。札幌市以外の道内178自治体に住む人は札幌市のシミュレーションサイトを利用させていただこう。

JR旭川駅前の風景

筆者が5月に訪れた旭川市は、札幌市と住民税は同じ(写真はJR旭川駅。記事とは関係ありません)

 さらに言うと全国47都道府県のうち、北海道、青森県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、福井県、徳島県、香川県、沖縄県は独自の増税を行っていないので、この10道府県にお住まいの人は札幌市でも千葉市でも東京都千代田区でも那覇市でも税額試算の結果は同じとなる。事例で使用した河野一太郎さんの源泉徴収票を札幌市、千葉市、那覇市のシミュレーションサイトで税額試算をすると(当たり前だが)住民税は同額となった。

札幌市の税額シミュレーションサイトでの試算結果画面

札幌市のシミュレーションサイトで税額試算

千葉市の税額シミュレーションサイトでの試算結果画面

千葉市のシミュレーションサイトで税額試算

那覇市の税額シミュレーションサイトでの試算結果画面

那覇市のシミュレーションサイトで税額試算

 県内に導入自治体のない青森県、秋田県、山梨県、徳島県、愛媛県、高知県、宮崎県、鹿児島県の8県のうち、青森県と徳島県の人は先ほどの増税のない10県に含まれるので、その中の導入自治体のサイトを利用させていただこう。

JR青森駅から190円区間のきっぷ

4月に訪れたときはSuicaが使えなかった青森、5月からSuica使用可に。税額試算も近いうちに……(写真は記事とは関係ありません)

 残り6県。秋田県は「秋田県水と緑の森づくり税」として800円を県独自に増税している。秋田県と同額の県民税に800円の増税をしているのは他に滋賀県と兵庫県。秋田県の人は滋賀県の大津市彦根市、兵庫県の姫路市明石市などのサイトでも住民税の試算は可能だ。ただし、兵庫県の神戸市と豊岡市は市独自でさらに増税しているので、試算結果は両市の市民以外の人には当てはまらない。

 残り5県。愛媛県は森林環境税として700円を県独自に増税している。愛媛県と同額の県民税に700円の増税しているのは他に栃木県と群馬県。愛媛県の人は栃木県の宇都宮市小山市、群馬県の前橋市高崎市などのシミュレーションサイトの試算結果が参考になるはずだ。

松山駅の駅舎

4月に訪れた愛媛県松山市。JR松山駅のじゃこ天(オバサン)は名古屋地域で有名(写真は記事とは関係ありません)

 残りの山梨県、高知県、宮崎県、鹿児島県の4県は500円を県独自に増税している。同額の県民税に500円の増税しているのは他に16県と多い。富山県、石川県、長野県、愛知県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県の16県のうち、愛知県の名古屋市は市独自の減税を行っているので利用不可。それ以外の自治体のシミュレーションサイトが利用できるので、愛知県豊田市広島県広島市福岡県福岡市など選択肢は豊富だ。

 なお、同じ都道府県内であっても、市独自の増税・減税をしている自治体のシミュレーションサイトの試算結果は参考にならない。具体的には横浜市、名古屋市、兵庫県の神戸市と豊岡市だ。

 横浜市は「横浜みどり税」として900円を市独自に増税している。自分が住む自治体に住民税額シミュレーションがない神奈川県民は川崎市相模原市などのシミュレーションサイトを利用させていただこう。念のために付け加えると、神奈川県は全国で唯一、住民税の税率が他の46都道府県より0.025%高い。神奈川県民は、神奈川県内の自治体のシミュレーションサイトで税額試算をされたい。

 名古屋市は市民税均等割を200円減税、市民税の税率を0.3%減税している。自分が住む自治体に住民税額シミュレーションがない愛知県民は、名古屋市以外の豊田市岡崎市などのシミュレーションサイトを利用させていただこう。

 兵庫県の神戸市は400円を市独自に増税している。豊岡市は市民税の税率を0.1%増税している。自分が住む自治体に住民税額シミュレーションがない兵庫県民は、姫路市明石市などのシミュレーションサイトを利用させていただこう。

 筆者の調べた180自治体の住民税額シミュレーションが利用できないのは、日本一住民税の安い大阪府田尻町の住民。田尻町は町民税均等割を300円減税、町民税の税率を0.6%減税している(令和5年まで)。田尻町は住民税額シミュレーションを導入していないため、田尻町の人は手計算するか、通知書が来るのを待とう。

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