「プチプチ」を作った会社に「そもそもこれはなにか」を聞きにいったら最終的に宇宙にたどりついた

デイリーポータルZ

プチプチの秘密をのぞいています。

誰もが一度はつぶしたことがあるだろう、梱包材のプチプチ。

アレの商品名が、そのまんま「プチプチ」なのをご存じだろうか。

あれってどうやって作っているか、そもそも誰が作り始めたのか、プチプチはどこから来てどこへ行くのか……。

作っている会社に全部聞いてきました。

プチプチは1000種類以上ある

あの「プチプチ」を作っているのは、川上産業株式会社さん。創業は1968年(昭和43年)、今年で55周年である。

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ご対応いただいた川上産業の杉山さん(右:常務取締役)と、綿貫さん(左:マーケティング課主任)。お二人ともお名前が同じ「彩香さん」というミラクル。
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「ちなみにこれもプチプチでできているんですよ」 わっ、ホントだ!

まずビックリしたのはプチプチの種類の多さである。

僕にとってプチプチは、通販でなにか買ったときに箱に一緒に入っているもので、「なんかたまに粒が大きいやつあるなぁ」とか、「ピンクのやつがあるなぁ」とか、そういうぼんやりした認識しかなかった。

ところが杉山さんは「標準タイプだけでも20種類以上、細かく数えると1000種類くらいあります」という。そんなに!?

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まず「プチプチの見本帳」があるんですよ。これだけで興奮するじゃないですか……!
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d36とかd38とか数字が違うのだけど、パッと見た目では違いがわからない。

杉山さん 一般的に使われているのは、直径10ミリのd36やd37ですね。数字が大きいほどポリエチレンの密度が高く、d40やd42などは機械部品や自動車部品など、重量があるものの梱包によく利用されます。

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「L」がついたタイプは3層構造。粒を両面からシートで抑えており、袋状にする時によく選ばれ、丈夫なので繰り返しの利用に適している。
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川上産業さんの総合カタログにある粒サイズの一覧。直径7ミリから32ミリという大きなものまで。プチプチの高さって「粒高」って言うんですね。

どのプチプチを使うかは、何をどんな風に運びたいかによって異なる。「そんなのわからないよ……」と弱音を吐いてしまいそうになるが、川上産業の営業さんがその辺ちゃんと相談に乗ってくれるそう。よかった。

で、包むだけでなく、さまざまな機能を付け足したものもあるのだ。その一部がこちら。

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導電プチ。カーボンを練り込んであり、導電性や遮光性が◎。精密機器の梱包に使用。
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防錆プチ。その名の通り防錆効果があって、鉄を包んだとき錆びにくい。
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アルミプチ。アルミがラミネート加工されていて、保温・保冷効果あり。

杉山さん アルミプチには建材に使う「建材アルミプチ」というのもありますよ。両面アルミのタイプは、5層構造で、断熱材の一部として使われるんです。

断熱材までプチプチに。これは知らず知らずのうちに、プチプチに囲まれて暮らしているのかもしれないぞ。

そしてプチプチのパレードはまだ終わらない。プチプチの全出荷量のうち半分は、お客様の用途に合わせて加工したもの。袋状になったプチプチとかあるじゃないですか。アレもあるんですよ。

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再び総合カタログから。袋状のプチプチだけでこんなに……!
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「カット&打ち抜き」。丸や八角形はクッキー缶とかでよく見るやつ。

袋がつながった「連袋」、取っ手がついた「手提げ袋」、筒状になった「チューブ」など加工品の種類はたくさんあり、さらに「グラビア印刷」「ミシン目」「シール」といった加工もできる。

そりゃもう1000種類なんて余裕で越えてしまうのだ。

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ハート型のプチプチだってある。バレンタイン商戦などで大活躍。

そういえば昔Twitterで「普通のプチプチに、1万個に1個の割合でハート型のプチが入っている」のがバズっているのを見たことがある。

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1個だけハートになっている「ラッキープチ」(画像提供:川上産業

これっていつからやっていたんですか?やっぱりSNSウケを狙って?

杉山さん ラッキープチは2001年に始めました。まだSNSが流行る前ですね。でも、当時からそんなものがあるとは特に言ってなくて。

そんなファニーな仕掛け、なんで誰にも言わないんですか!? とびっくりして聞くと「別にいいかなと……(笑)」と杉山さん。

SNSで「見つけた」という人が出てきて、それならと川上産業でも発信を始めたらしい。

杉山さん プチプチの工場は国内に7つあるんですが、実は2ヵ月に1回、すべての工場でハートの位置を変えています。まぁ、それも誰にも気づかれていないんですけどね(笑)。

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杉山さん「『毎回ここにあるね』とも言われていないし、『変わりましたね』とも言われてないですけど……一応やってます(笑)」
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自社の製品をどうやって見分けるか?

川上産業さんの「プチプチ」は、気泡緩衝材の市場でシェア6割なのだという(川上産業調べ)。つまり残り4割は他社の製品だ。

でも、プチプチはどうやっても見た目がプチプチである。パッと見ただけで自社製品かどうかって分かりますか……?

杉山さん 分かりますよ。粒ひとつひとつにうっすら、丸や十字の印がついているので、それで見分けがつくんです。

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「かなり微かな印なんですけど、こうして見ていただくと……」
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「え~っ、そんなのあります~?」
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ホントにあった! 左のプチプチに丸、右のプチプチに十字の印が入っているの、なんとなく分かりますか……?

はじまったばかりの老眼でなんとか確認できるレベルの印だ。

これってなんなんですか?と聞いてみると、「プチプチを作るときの型に空いた『穴』のあと」なのだそう。

杉山さん プチプチは平たいシート(バック)と、ポコポコしたシート(キャップ)の2枚を貼り合わせて作ります。このキャップ側のポコポコを作るために、穴が必要なんです。

キャップの型には、たこ焼き器みたいな半球状の凹みがたくさんあり、それぞれに穴が開いている。

この表面にシートの素材を這わせ、穴から空気を抜く。するとシートが半球に吸い付き、あのポコポコした形状ができる。

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赤い部分がシート、グレーの部分が型。穴から空気を吸うことで、シートに半球状のポコポコを作る。「連続真空成形」という技術で、実際には高速で成形が行われるそう。

このとき、穴の形もポコポコにちょっと付いちゃうのだ。

この穴の形状が、会社や工場によって丸だったり十字だったりするらしい。「かなりマニアックですけど(笑)」とお二人は笑う。

杉山さん 製造工程では、バックとキャップの2枚を熱で貼り合わせます。このとき、勝手に空気が入るんですね。粒を空気でパンパンにしたいのはやまやまなんですが、空気の量はコントロールできないんです。

確かに、プチプチの粒ひとつひとつに空気を注入するわけにもいかない。その場にある空気をワッと閉じ込めるしかないのだ。

だから、プチプチの原材料は「空気とポリエチレン」なのだそう。

杉山さん 空気あっての私たちなので、毎年6月1日の世界環境デーには山形県朝日町の「空気神社」にプチプチを奉納しています。ここは世界で唯一、空気を祀っている神社なんですよ。

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山形県朝日町にある空気神社。5メートル四方のステンレス板で「空気」を表現し、本殿はその地下にある。空調機器メーカーなども参拝しているそう(写真はこちらの記事より)

⏩ つぶす専用のプチプチは高音質

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