ニヤニヤとニコニコの違いをいま一度しっかり考えてみる

デイリーポータルZ

「ニヤニヤするな、ニコニコしろ!」。
初めてのアルバイト先の店長に、そう注意されたことがある。

多感だった当時は、その違いがわからず少し落ち込んだ。

いったいなにが違うのか、もう一度考えて整理してみたい。

忘れられない店長の一言

40歳をとうに超えても年1くらいで思い出す店長の言葉「ニヤニヤするな、ニコニコしろ!」。
これは、アルバイトをはじめて間もない頃、入店するお客さんへの挨拶の練習をしていた時に言われた言葉だ。

その初めてのアルバイト先は近所にあった焼肉屋で、私はたしか高校2年生。
それまでボーっと生きてきた私にとって、接客がからむアルバイトはまさに社会勉強だった。小心者だった私はすべての事に緊張していて、汗だくの日々であった。

それを心配したのか、当時60歳近かったと思われる男性の店長は、まだお客が入る前の空いた時間に挨拶の練習をしてくれた。

店長がお客の役になって入店してくる。
そこで私は「いらっしゃいませ!」とニコやかに迎え、席に案内するのだ。

そのとき店長に返された言葉が「ニヤニヤするな、ニコニコしろ!」である。

店長はいかにも下町にいそうなおっちゃんで、口は悪いし厳しいが飄々としていて憎めないタイプの人である。だけど若くて純粋だった私は少し傷ついたのだろう、未だにその言葉を思い出すのだ。

25年以上の時を経て、改めて検証していきたい。
「ニヤニヤ」と「ニコニコ」の違いを。

みんなのニヤニヤとニコニコ写真で違いを検証

検証にあたって、デイリーポータルZの編集部や、表情を作るのがうまそうなライター陣にニヤニヤとニコニコの写真を撮ってもらい、コメントと共に送っていただいた。

じっくり表情を見ながら違いをまとめていこう。

編集部の古賀さんと安藤さんのニコニコ。2人ともとても爽やか!同僚にしたい笑顔だ

安藤さんはカッと目を見開いていて若干圧が強いものの、2人ともとても爽やかだ。
なんか、味方になって協力してくれそうな雰囲気が出ている。
面接であれば即採用するだろう。

こちらはニヤニヤ。2人とも口を閉じた! なにか含みを感じる表情だ。面接でこの顔されたら採用していいか不安になる。

顔が開くとニコニコ、閉じるとニヤニヤ

別々に写真を撮ってくれているのだが、2人とも共通しているのがニヤニヤは口を閉じているということ。ニコニコしているときは「顔全体が開いて」いたが、ニヤニヤは「顔が閉じて」いる。

そしてニヤニヤは何か言いたいけど我慢しているような、もしくは何かいやらしいことを想像している顔に見える。

古賀さん

ニコニコは普通にいつもみたいにやったんですが、そういえば「ニヤニヤ」ってどういうときにしているのか? 再現しようとすると「しめしめ」みたいな、あと笑いをこらえているような顔になってしまいむつかしかったです。

全然関係ないんですが、笑顔ってめちゃくちゃ大事だなと最近あらためて思っており、
というのも、娘がニコニコした店員さんの接客のあとかならず「優しい人だったね」とか「明るい店員さんだったね」とかいうんですよね。

できるだけ人に対してはニコニコしたいと思っていたところでした。
店員さんがニコニコしている店ってまた行きたくなりますよね。

安藤さん

「ニヤニヤ」は抑えてる感じですかね。状況的には笑っちゃいけない場面なのについニヤけちゃう、そんな感じを想像しました。
ニコニコは子どもに対する笑顔というか、動物に対する笑顔というか、笑うことで垣根をとりはらって距離を縮めるような、そんなイメージ

僕はひとりで道を歩いているときにニヤニヤしているらしく、よく人から「ニヤニヤしながら歩いてるところ見ました」って連絡もらいます

でも道歩きながらニコニコしないですよね。一人のときはニヤニヤかも。

 2人のコメントにより重要なことに早くも気づいた。
アルバイトを始めたばかりの若き17歳の私は、練習で演じている状況に対して「笑いをこらえていた」り、「笑ってはいけない状況」で顔が閉じて結果ニヤニヤしてしまったのではないだろうか。

私も撮ってみた。そういえば当時は照れて右側のような顔だったかもしれない。この表情がダメだったのか…!!

お次は、いつも自然体かつフォトジェニックな写真に定評のあった元ライターの小野法師丸さんと櫻田智也さんにもお願いした。

優しいニコニコの小野さんと櫻田さん。櫻田さんは花を携えさらに好感度を増した。ずるい!
小野さんはニヤニヤのパターンを2つ送ってくれた。左が「ノーマルニヤニヤ」で、右が「悪のニヤニヤ」。

小野さん

「ニコニコ」を言葉にすると「目尻が下がって、口角が上がって歯が見えている」という感じでしょうか。

続いてニヤニヤなのですが、ニヤニヤには種類がある感じがしました。
「ノーマルニヤニヤ」は「歯が見えておらず、笑いを出し切ってない感じ」という雰囲気でしょうか。

「悪のニヤニヤ」は「左右非対称で、片側だけ笑ってる」という感じです。「ニヤニヤ」よりも「ニヤリ」かもしれません。

なるほど、私は純粋であった当時、接客練習中に悪いことは考えていなかっただろうから小野さんがいう所の「ノーマルニヤニヤ」だったんだなということが分かった。見直すと、古賀さんと安藤さんもこのノーマルニヤニヤだ。

ノーマルニヤニヤは、なんかちょっとつられて笑ってしまいそうになるなあ。

櫻田さんのニヤニヤ。口を開けててもニヤニヤはある!

ここまで、ニヤニヤは全員口を閉じていたが櫻田さんは歯を見せている。だがこの表情は間違いなくニヤニヤである。

櫻田さん

ニコニコは現状の満足。ニヤニヤは満足の想像。つまり下心の存在。
と思いました。

このニヤニヤの写真は、目じりと横目がポイントでしょうか。
なにをみてニヤニヤしているかは人道的見地から申し上げられませんが。

櫻田さん…!! 

短い言葉ながら真理を言い当てた感がすごい。
さすが小説家である(櫻田さんは推理作家なのだ)。

そうか、ニコニコはいま満足なのが現れてて、ニヤニヤは想像なのか

じゃあ仕方ないじゃん!
当時の私が予行練習のときにニヤニヤになっていても仕方ないじゃん!

ニヤニヤ(左)とニコニコ(右)が同時に撮れた写真も送ってくれた。

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