Appleは、2023年6月に開催予定の年時開発者会議「WWDC23」において複合現実(MR)ヘッドセットを発表すると目されています。このMRヘッドセットの開発過程や課題について、Apple関連情報に詳しいBloombergのマーク・ガーマン氏が報告しています。
Apple’s Mixed-Reality Headset May Define Tim Cook’s Legacy – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/features/2023-05-18/apple-s-mixed-reality-headset-may-define-tim-cook-s-legacy
Apple AR Glasses Reportedly Still at Least Four Years Away From Launch – MacRumors
https://www.macrumors.com/2023/05/18/apple-ar-glasses-still-at-least-four-years-away/
Report: Apple Executives Cautious of Mixed-Reality Headset Amid Compromises – MacRumors
https://www.macrumors.com/2023/05/18/report-apple-executives-cautious-of-headset/
Apple slashes sales estimates of its headset, Bloomberg reports | Reuters
https://www.reuters.com/technology/apple-slashes-sales-estimates-its-headset-bloomberg-news-2023-05-18/
Manufacturing cost of Apple’s headset exceeds $1500 per unit
https://9to5mac.com/2023/05/18/manufacturing-cost-apple-headset/
ガーマン氏によると、AppleはSamsung Gear VRとHTC Viveを用いて、2015年からヘッドセットの開発を開始したとされています。開発初期のヘッドセットのコンセプトは「一日中着用できて目立たない軽量な拡張現実(AR)を用いたメガネ」として開発が進められていました。
このARグラスはウェブブラウジングやゲーム、ビデオ通話などにAR技術を活用する製品として開発が行われていましたが、発熱を防止するためにiPhoneのわずか10分の1の消費電力で動作することが求められ、徐々に技術的に困難であることが明らかになりました。また、1日中着用しても疲れないレベルの軽量化と1日中使い続けられるほどのバッテリー容量を開発時点では両立することができず、ARグラスの開発は延期され、MRヘッドセットの開発に切り替えられたとされています。なお、ARグラスの発表や発売に関してガーマン氏は「少なくとも4年以上かかるでしょう」と述べています。
Appleが軽量ARグラスの開発を技術的な問題で延期したと報じられる、代わりに安価なMRヘッドセットをリリース予定 – GIGAZINE
AppleのAR/MR製品の開発に際しては、Apple内で意見の不一致が起こったとされており、ティム・クックCEOは「ARグラスの開発に焦点を当てるべきです」と主張するものの、開発や設計には深く関与しておらず、開発に携わるスタッフからは不満の声も上がっていました。さらに、2023年6月に発表予定のMRヘッドセットに対して、クック氏は「まだ準備不足だ」というデザイナーチームからの警告を押し切って発表すると報じられています。
AppleのMRヘッドセットはティム・クックCEOがデザイナーの「準備不足」という警告を押し切って発売されるとの報道 – GIGAZINE
その他、ソフトウェアチーフのクレイグ・フェデリギ氏やハードウェア技術担当兼上級副社長のジョニー・スルージ氏は今回のMRヘッドセットに対して懐疑的な立場であるとされています。
AR/MR製品の開発に取り組んでいる匿名のApple従業員はBloombergに対して「私たちが『絶望的な』デバイスの開発を行っているのは、ティム・クック氏を幸せにするためだけだというジョークがチーム内にはあります」と述べています。
また、Appleが発表予定のMRヘッドセットの製品名は「Reality Pro」で、販売価格は約3000ドル(約40万円)とみられています。しかし、「Reality Pro」の製造には1台当たり1500ドル(約20万円)かかると考えられており、競合他社製品と比較して製造コストが非常に高額な点が指摘されています。
さらにガーマン氏は、「Appleは当初Reality Proに関して、年間約300万台の売上を予測していましたが、現在ではその見積もりを約100万台に縮小し、さらに90万台に修正しました」と報告しています。ガーマン氏によると、Appleは当初、損失を出しつつもReality Proの販売を行う計画を立てていましたが、製造コストに見合った出荷数でReality Proの販売を行う方針に変更したとのこと。
一方でガーマン氏は「Reality Proは今後新機能の追加や低価格化を実現すれば、最終的にApple WatchやiPadと同規模の市場に発展する可能性があります」と予測しています。
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