むしろエスカレーター?なミュンヘンの古いエレベーター「パタノスタ」は、少し怖いがかっこいい

デイリーポータルZ

ミュンヘン在住の友達が「おもしろいものがあるから見に行こう!」と言って連れて行ってくれたのが、とある役所に設置されたパタノスタ。読者の大半は、そのときの私と同様「え、パタノスタって何?」という感じだろうから説明すると、要するに今ではほぼ使われなくなった古いスタイルのエレベーターだ。

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パタノスタが設置されているのは、ミュンヘン中心街のこの赤レンガの建物。都市計画をつかさどる役所だそう。

重たい扉を開けて中に入ると、さっそく目当てのエレベータ―があった。

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これがパタノスタだ!

このパタノスタ、普通のエレベーターのようにボタンを押して箱を呼ぶスタイルではない。イメージとしては人間を乗せて垂直方向に動くベルトコンベアーだ。書いていて思ったがエスカレーターに近いかもしれない。

言葉で説明してもわかりにくいので、さっそく乗るところを見ていただこう。

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常時動いている(!)箱に、タイミングを合わせて乗り込む。

箱の動きはそれほど速くないから別にどうということはないんだけど、どんくさい身としてはちょっと緊張した。だんだん狭まっていく穴に乗り込むというのは、どうしても「はさまれる自分」を想像してしまうのだ。慣れてきたころに失敗しそうな怖さがある。

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階と階の間に、「次は〇階だよ」と教えてくれる看板が貼ってある。
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上を見上げると、次の階の床が迫ってくるのが見えた。映画の『千と千尋の神隠し』でエレベーターから顔を突き出して周りを見ていた千尋が「鼻がなくなるよ」と注意されるシーンがあるのだが、あれと同じだ。
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そして次の階につく。
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移動中の景色。
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パタノスタの原理はほぼベルトコンベアーそのものなので、上りのエレベーターは最上階のさらに上の機械室で折り返して、そのまま下りに接続している。人を乗せたまま折り返し部分に突入するのはいろいろ危ないからか、最上階手前の看板に「次の階で必ず下りろ」と書かれてある。
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移動中は常に「ゴウンゴウンガタガタガタガタ」という音が周囲にこだましている。薄暗さもあって「機械の腹の中にいる」感じがして面白い。

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銘板を見る。シュミット&ゾーンという会社が1959年に作ったものらしい。そして改装したのが、ここがちょっと興奮したポイントなのだが、かの有名な鉄鋼メーカーのティッセンクルップ!かっこいい!
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「注意!1台につき一人まで」いろいろなところに同じ文言がしつこいくらいに書いてあった。

やっぱりそこそこ危険な乗り物なのだとは思う。

なにより古い。友人曰くちょっと前まで修理中だったそうで、今回ミュンヘンにいるタイミングでたまたま乗れる状態だったのは運が良いことだった。

古くて危ない乗り物を修理してまで使い続けてくれている役所には頭が下がるばかりだ。

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ちなみに、隣には普通のエレベーターもあった。
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もちろん階段も。曲線的で優美。パタノスタの動きは非常にゆっくりなので、急いでいるときはこっちを使うべきだろう。

 

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