「男性はセックス序盤で興奮しすぎるとオーガズムに達しにくい」ことを数学者が証明、男性がベストなパフォーマンスを発揮する興奮レベルとは?

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イギリスにあるサセックス大学の数学者が、「セックス中の男性が過度に心理的な興奮を覚えるとオーガズムを得にくくなることが分かった」と発表しました。男女数百人の性交を観察した研究データや、セックス中の人の脳をスキャンしたデータを数理モデルで分析したこの研究により、男性が絶頂に至れない問題を解決する糸口も見つかっています。

Sex, ducks, and rock “n” roll: Mathematical model of sexual response | Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Science | AIP Publishing
https://doi.org/10.1063/5.0143190

Want satisfaction? Do the maths : Broadcast: News items : University of Sussex
https://www.sussex.ac.uk/broadcast/read/60611

Getting too excited can stop men from orgasming – but there’s a solution
https://theconversation.com/getting-too-excited-can-stop-men-from-orgasming-but-theres-a-solution-203443

「映画や音楽などのポップカルチャーによって描写されるセックスは、男性に『少なくとも物理的には単純な現象だ』という印象を与えてしまうかもしれません。しかし、実際には脳と体の高度な連携が必要なものなのです」と注意喚起するのは、サセックス大学の応用数学者であるKonstantin Blyuss氏(右)と、Yuliya Kyrychko氏(左)です。

by University of Sussex

Blyuss氏らによると、イギリス人男性の約5人に1人が勃起不全に悩まされており、40~70代ではその割合が50%にも達するとのこと。この報告を受けて、2人は男性の性的反応を数学的にモデル化し、問題を改善させる方法を探ることにしました。

セックスを数式でひもとくにあたり、Blyuss氏らは大きく分けて2つの研究データに着目しました。そのうちの1つは、1万回もの性行為から収集したデータをまとめた1966年の論文です。

この論文を記したアメリカの研究者のウィリアム・マスターズとヴァージナ・ジョンソンは、380人以上の女性と300人以上の男性を研究室に招き、参加者らが性行為をする様子をつぶさに観察しました。その結果からマスターズらは、人間の性的反応が「興奮」「プラトー(停滞)」「オーガズム」「解消」というサイクルをたどることを発見したほか、各段階における生殖器の生理的変化や呼吸の増加、脈拍や血圧の上昇、オーガズム直後の無意識の発汗といった反応も詳細にまとめました。


この研究は当時としては画期的なものでしたが、女性は男性と異なり「興奮」「プラトー」「オーガズム」「解消」という直線的な経過をたどらないことが後に判明しています。また、肉体の反応しか捉えられておらず心理的要素が考慮されていないとの批判もなされました。

そこでBlyuss氏らは、マスターズらの研究データと、セックス中の人の脳を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)でスキャンした5つの研究データを組み合わせて、性的な行為中の男性の生理学的データと、心理的興奮の両方の変化をモデル化しました。

以下は、両氏が論文に記載した数理モデルの一部です。


この研究の結果、セックス前またはセックス中における心理的興奮の初期レベルが高すぎると、男性がオーガズムに達する可能性が損なわれることが分かりました。その理由の1つは、過度に興奮すると自分の性的パフォーマンスやオーガズムの達成に集中しすぎてしまうことです。

興奮しすぎてオーガズムに達することにばかり気を取られてしまうと、不安が引き起こされてしまい、これがさらに「心理的な過剰刺激状態」の原因となります。その結果、絶頂しそうなのに絶頂できないというもどかしい状況に陥ってしまうとのこと。

これを回避するには、精神的なスイッチを切ってリラックスすることで、心理的興奮を低下させる必要があります。これについてBlyuss氏は「要するに、私たちの発見は『考え過ぎるな』ということです」とコメントしました。


他にも、今回構築された数理モデルでは「心理的な刺激によって身体的な興奮度が低下する」ことも突き止められました。これは、直感に反するようにも思えますが、オーガズムの直前には脳の多くの領域が不活性化するというfMRIの研究データとも一致しているとのこと。

このことからBlyuss氏らは「つまり、オーガズムは解放と関連したものと言えます。それは肉体的な解放であるのと同時に、精神的な解放でもあるのです」と述べました。

セックスに限らず、ある種のタスクでは「中間レベルの心理的興奮」が最適な身体的パフォーマンスにつながります。「ヤーキーズ・ドットソンの法則」として確立されているこの法則では、例えば難しいタスクや知的好奇心を刺激するタスクでは集中力を高めるために低レベルの興奮が必要となり、スタミナや持続力を必要とするタスクではモチベーションを高めるために高レベルの興奮が必要となります。


今回の研究は男性を対象としたもので、1回または複数回のオーガズムを迎えることを含め、より多様な性的反応を持つ女性には当てはまりません。また、男性の約95%がオーガズムを経験するのに対し女性では65%に過ぎないなど、男女のオーガズムには性差があります。

男性のオーガズムを数式で解明したBlyuss氏とKyrychko氏の次なるステップは、女性の性的反応をモデル化した最新の「バッスンの循環モデル(Basson’s circular model)」を用いて女性のオーガニズムを解明する数学的モデルを開発し、男女間のオーガズムのギャップを解消することだとのことです。

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