チップは大切だけど…。
日本にとっては馴染みのないチップ文化。国によってチップの捉え方はそれぞれですが、チップ力が強いのがアメリカ。タクシー、ホテルのポーターやルームクリーニング、レストランなど、チップを払うシーンも多いです。
レストランでは飲食代の20%程度が一般的で、これはホールスタッフ(オーダを取って配膳する人、そのサポートをする人など)に対して支払われるもの。ホールスタッフはチップありきなので、時給が最低賃金よりも低く設定されていることもあります。
一方、今アメリカ人すらも困惑しているのがセルフレジでのチップ攻勢。え、誰にチップ払うの?と困惑しつつも、払わない罪悪感を煽ることから「ギルトチッピング(Guil Tipping)」と呼ばれているそう。
買い物客の罪悪感を煽るチップ
一般的には、スターバックスやサブウェイのようなお客さんが自分でレジにてオーダーし、自分で受け取りに行くカウンター式のお店ではチップは払わなくてもマナー違反とはなりません。
ただ、レジ横にチップ用の瓶が置いてあるお店も多く、スタッフに対して気持ちばかり(たとえばお釣りの小銭とか、常連のお店でたまにちょっと多めに入れちゃうとか)のチップを入れる人も少なくありません。
これはマナーというよりも善意。
キャッシュレスが進む最近は、この気持ちばかりのチップを端末決済で金額を選んで上乗せ支払いすることもできます。この画面でチップ追加に(嫌な言い方ですが)目をつけたのが、人を介さないセルフレジの画面。
The Wall Street Journalによれば、カウンター式の店ですらない、人との関わりがないセルフレジで、善意のチップを要求されることが増えているといいます。
たとえば、空港、スタジアム、クッキーショップやカフェなどで、セルフレジ自らがチップくれない?と言ってくるパターン。つまり、カウンター店舗のように、支払い画面にて「チップしませんか?」という問いかけが、セルフレジ端末でも挿入されることが増えているといいます。
中には、最初から「20%チップする?」と、割合まで提案してくるケースも。これには、チップ文化に慣れ親しんだアメリカ人ですら、困惑し、不満を感じているのだとか。
コロナ禍で流行した苦肉の策
セルフなのにチップという流れは、コロナ禍にてお店や企業がなんとか収入を確保しようとした苦肉の策。
一方で、お客さんからしたら「全部自分でやってるのに、これ誰になんのチップなの?」という思いがあり、行き過ぎた流れと言われることも。
WSJの取材では、ニューアーク・リバティー国際空港のセルフレジにて、お水を購入しようとすると、支払い画面でチップを上乗せされた額が表示されていたという体験談を紹介(選択肢からチップ分を引くことは可能だが、デフォで上乗せってどうなの?)。空港のストレスを減らしたくて対人を避けたのに…、空港のペットボトルウォーターってそもそも高いのに…と不満を語っています。
また別の人は、野球場ペトコ・パークにて、セルフレジでビールを購入した際、レジが20%のチップを要求。この人は、誰に?と困惑しつつも、罪悪感から支払ったといいます。
一方、WSJは空港&球場関係者のコメントも紹介しており、チップはあくまで推奨であり義務ではないこと、集まったチップはスタッフ全員で分けていることが説明されています。
今年のゴールデンウィークに久しぶりの海外旅行を楽しんだ人は、物価高だけでなく、チップシーンの変化にも戸惑ったかもしれません。
夏休みに海外旅行を計画している人は、チップを払うべきシーンのほかに、ギルトチップという存在もあることを頭に入れておいた方がいいですね。
Source: WSJ