AI活用で ブランドセーフティ な環境構築は迅速かつ正確になるか

DIGIDAY

メディア業界におけるジェネレーティブAIの活用は、週を追うごとにますますあらゆる場所で増えているように見える。

この幅広い活躍の場に新たに加わったのが、デジタル動画広告を扱うピクサビリティ(Pixability)の活用例だ。YouTubeなどのデジタル動画プラットフォームのコンテンツでの広告掲載を検討する広告主に向け、ブランド適合性基準の改良で安心感を高めながらブランドセーフティ確保のプロセスの劇的なスピードアップを図るため、ChatGPTを使用するという。

設立15年のピクサビリティはYouTubeとの関係が深いが、さまざまなストリーマーやAmazon Fire、Roku(ロク)などのデジタル動画プレイヤーとも連携して活動範囲を広げている。今回はChatGPTを投入することで、従来は主に人手で行っていたために手間と時間がかかっていたブランドセーフティとブランド適合性に関する作業を進化させていく。

AIの活用で正確性と規模、そしてスピードの向上を狙う

ピクサビリティのCEOであるデビッド・ジョージ氏は、「ブランドにとって安全かつ適切なコンテンツ環境であるかをYouTubeなどで予想・特定する際に、AIを使用することで正確性と規模を大幅に向上させることができる」と説明する。さらにそのプロセスも大幅にスピードアップできるようだ。なお、このテクノロジーに投資した金額は明かしていない。

「投資の重点は、当社がYouTubeから日々得ている膨大な量のデータと動画をどうするか、というところに常にある。しかも、そのデータはますます増える一方だ」と同氏は語る。「単純に、これまでと同じ規模でいかに今後も続けていけるか、それをいかにタイムリーにやっていけるかという部分が多い。いまやクライアントは世界中にいるのだから」。

ピクサビリティの最高プロダクト責任者を務めるジャッキー・パウリノ氏は、同社がChatGPTを約6カ月使用してきたことを付け加える。ChatGPTは「機械学習モデルのトレーニングデータの改良に使用しているようで、同氏は「とくにYouTubeでは市場投入までのスピードが重要だ。新しいトレンドも次々と登場する。そうした動画を素早く特定してモデルのトレーニングを実行し展開して、同様の動画を大量に見つけ出していくことがとても重要になってくる」と述べる。

一例として、パウリノ氏は武器・弾薬を巡るブランドセーフティ基準の設定を挙げた。武器・弾薬はあらゆるソーシャルプラットフォームと動画プラットフォームで注目を集める話題ではあるが、同時に広告主の多くが避けたいとするトピックでもある。

「ChatGPTはこれまでに発明、使用されたすべての銃を把握しているため、この種のコンテンツの分類に関しては人間よりはるかに優れている」と同氏は言い、「過去には人が誤ったラベル付けをしていたかもしれない非常にニッチなものに対しても、人間より正確に識別できることが、いまでは実際にわかっている」と続ける。

実際は、最初と最後に人間が関与することが必要

ブランドセーフティの独立系スペシャリストであり、長年グループエム(GroupM)と仕事をしてきたジョン・モンゴメリー氏は、「本当に役立つのはそのスピードだ」と話す。格段に多いコンテンツを、ずっと少ない時間で評価できるからだ。ジェネレーティブAIは「膨大な量を極めて短い時間で処理できる。しかもより徹底的に、ずっと正確にそれができる」と、同氏は断言する。

だが、ジェネレーティブAIを使用するどのような場合でも、「最初と最後に人間が関与することが今後も必要だ」とも同氏は指摘する。「どのような水準のものが返ってくるのかは、こちらが与える情報にかかっている。指示が詳しければ詳しいほどいい」と述べ、「だからといって、ブランドセーフティの専門家たちやブランドセーフティを確認する人たちが不要になるということではないと考えている」と言い添えた。

オペレーションへの落とし込みは進んでいる?

これはエージェンシーの世界にもすでに及んでいるのだろうか。

「まだそれほどでもない」というのは独立系メディアエージェンシーのPMGで検索・ソーシャル・ショッピング責任者を務めるジェイソン・ハートレー氏だ。「ブランドがジェネレーティブAIのとてつもないポテンシャルに慎重ながらも大いに期待しているのは疑うべくもないが、新しいテクノロジーがどれもそうであるように、コンセプトをオペレーションにまで落とし込むのには時間と労力がかかる」と同氏は語る。

また、「ブランドやエージェンシーは、先に歩を進めていくなかで将来可能なことに対する準備を整えながら、いま実際にできることにも取り組んでいくことが重要だ」と付け加えた。

[原文:Generative AI’s application to brand safety is said to speed up the process and be more accurate

Michael Bürgi(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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