実店舗の「試着室」、いかにハイテク化すべきか?:ブランドやリテーラーたちの最新事例

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アパレルの各ブランドや小売業者は、実店舗のハイテクな試着室に投資をはじめている。

2021年はバーチャル試着室の年だった。パンデミックのため顧客が自宅に留まっているなか、ウォルマート(Walmart)、ショッピファイ(Shopify)、Amazon、スナップ(Snap)のすべてが、顧客が服を着たときどのように見えるかを視覚化できる拡張現実や仮想現実テクノロジーに投資した。今年、2022年には、サベージXフェンティ(Savage X Fenty)からAmazonまでの各社が、対面販売の回復に賭け、実店舗における試着室のアップグレードを行っている。

バストサイズを3Dスキャン

1月後半に、リアーナ氏が支援するサベージXフェンティは、ラスベガスの実店舗と、同社のほかの店舗のため、2022年いっぱいにわたってフィット:マッチ(Fit:Match)と提携することを発表した。フィット:マッチはライダーテクノロジー、すなわち光が物体から反射して戻ってくるまでの時間に基づいて物体や人物の3Dスキャンを作成するテクノロジーを使用している。フィット:マッチはこのテクノロジーを使用して、顧客の身体をスキャンし、バストやバンドのサイズを測定して、どのサイズのブラを試せばいいかを推奨してくれる。

フィット:マッチの創設者でCEOを務めるハニッフ・ブラウン氏は、「当社はこのデータを使用して、顧客のサイズとスタイルをブランドに通知する」と述べている。同社のアプリにより顧客はサベージXフェンティの店舗を訪れたあとで自分の採寸データを保存し、後日オンラインで再購入を行える。

ブラは対面販売でさえも、ぴったりしたものを見つけることが困難だ。昔からある「女性の80%は正しいサイズのブラを着けていない」という格言は否定されたものの、顧客が選べるバンドとカップのサイズには多くの異なる組み合わせがある。

ブラウン氏は次のように述べている。「これは顧客にとって非常に大変なことだ。サベージXフェンティの、リテールは包括性を持ち、テクノロジー主導の体験であるべきだという構想は、当社の能力と非常によく適合する」。

フィット:マッチのテクノロジーは、レギングブランドのファブレティクス(Fabletics)でも使用されている。ブラウン氏は、デニムやランジェリーのような、ぴったりの衣服を見つけるのが面倒なカテゴリーは特に、ライダーのような新しいテクノロジーが有用となる分野だと説明する。

Amazon独自のハイテク試着室

大手企業も、試着室のアップグレードを模索している。Amazonは1月下旬に、最初のアパレル店舗を今年後半に開設し、ハイテク試着室を備えることを発表した

この店舗は、Amazonがアパレル分野への参入をさらに推し進めることを示すものだ。同社は過去数年にわたって、スタイルスナップ(StyleSnap)などのオンラインディスカバリーツールのスイートに投資してきた。このツールは、顧客がリアルでファッションアイテムの写真を撮影し、Amazonで同様なスタイルの商品を購入できるものだ。また同社は、オンサイトにゲーテッドセクションを開設し、オスカー・デ・ラ・レンタ(Oscar De La Renta)やミッソーニ(Missoni)などのデザイナーの服を販売して、ラグジュアリーファッションにも投資してきた。しかし、これらの販売は依然としてオンライン中心だったのに対して、Amazon Styleはテクノロジーをオフラインで統合するものだ。

顧客は店舗の試着室でタッチスクリーンを使用して好きな商品を評価し、それらの評価に基づいてほかの商品のおすすめを受け、それらのスタイルを注文して試着室で受け取るまでの作業を数分で完了できる。「顧客は試着室から出ることなく、買い物を続けられる」と、同社は新たな店舗形式についてのプレスリリースで語っている

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Amazonの新しい店舗は、ほかのブランドにも独自のハイテク試着室を開設することへの興味を抱かせるだろうが、一部のブランドは依然として実験モードだ。

「ブラのイノベーション研究所」

ブラのブランドであるソーマ・インティメイツ(Soma Intimates)は先週、ニューヨークのソーホー地区の付近に最初のポップアップを「ザ・ソーマ・イノベーション・ラボ(The Soma Innovation Lab)」という謳い文句で開設した。ソーマには親会社のチコズ(Chico’s)に常設店舗と店舗内ストアの両方があるが、ソーマの店舗の多くは小都市や郊外のショッピングモールにある。このポップアップにより同ブランドは、新しい場所で別の、より現代的な店舗コンセプトをテストできるとともに、新しい特許取得のパッドテクノロジーであるボディファイ(Bodify)を使った新しいブラのスタイルをプロモートできる。

このポップアップが運営されていたのは、ある週末のみだったが、デジタルスクリーンを使用して、さまざまな身体の形状とサイズの人にブラがどのようにフィットするかを掲示していたほか、「試験管」の壁があって、顧客は将来のスタイルに組み入れるため、着用に関してよくある問題点のデータをソーマに提出できた。店舗内では作業者が、乳房組織の密度を(従来のバンドとカップのサイズに加えて)組み入れたソーマ独自のシステムにより顧客の身体を測定していた。

チコズのマーケティング担当FASシニアバイスプレジデントを務めるキンバリー・グラベル氏は次のように述べている。「当社のブラにはすべて、女性がブラについて抱えてきたいくつかの問題に回答し、解決するイノベーションやテクノロジーが組み込まれている。我々は、当社がブラのイノベーション研究所だというアイデアを気に入っている。それでは、我々はそのアイデアをどのように現実に持ち出せばいいだろうか?」。

オン・オフ全体での投資が重要

これらのハイテク投資の多くは店舗内での売上を促進するよう設計されているが、各ブランドのeコマース活動にもフィードバックされる。

たとえばフィット:マッチは、これまで主に労力を店舗内に費やしてきたが、同社は今年後半には自社アプリに新しい顧客向けの統合を搭載し、顧客が自分のiPhoneを使用して自宅でスキャンを完了できるようにする計画だ。

ブラウン氏は次のように述べている。「最良の小売業者は、イノベーションはeコマースでも、実店舗だけでもなく、それらのチャネル全体にわたって行われる必要があると理解している。重要なのは、ショッピングの過程から摩擦を排除することだ」。

一方でAmazonは、顧客が店舗内で商品を選ぶとその顧客のアカウントに保存し、あとでオンラインからショッピングを行えるようにしており、顧客はオンラインで服を注文して店舗で試着し、合わなければ返品できる。

顧客に受け入れられるかは別問題

ガートナー(Gartner)でディレクター業界アナリストを務めるチェルシー・グロス氏は、各社における最新の実店舗のアップデートは、オンラインとオフラインのショッピングを統合することが焦点になっていると、以前に米モダンリテールに語った。しかし、小売業者とブランドは新しいテクノロジーの実装に熱心であっても、顧客に取り入れられるのは遅くなるかもしれないと、同氏は警告する。

「これらのテクノロジーが顧客に受け入れられ、なじみがあるものかを確認する必要がある。十分にテストが行われていない、または期待される受け入れや注目が得られないような新しいデジタル環境に資金をつぎ込まないように気を付ける必要がある」と同氏は述べている。

[原文:Brands and retailers are giving their fitting rooms a high-tech upgrade]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、 編集:黒田千聖)
Image Via Savage X Fenty

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