抗生物質ではない「抗菌ペプチド」でも薬物耐性菌を発生させてしまうとの指摘

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抗生物質の多用は「抗生物質に耐性のある菌」の進化を促進させることが知られています。抗生物質とは異なる仕組みで殺菌作用を発揮する抗菌ペプチドは耐性菌の発生を抑えられる殺菌手法として注目されているのですが、新たにオックスフォード大学の研究チームによって畜産業における抗菌ペプチドの使用により耐性菌の進化が促進される可能性が示されました。

The evolution of colistin resistance increases bacterial resistance to host antimicrobial peptides and virulence | eLife
https://doi.org/10.7554/eLife.84395


Antimicrobial use in agriculture can breed bacteria resistant to first-line human defences | University of Oxford
https://www.ox.ac.uk/news/2023-04-25-antimicrobial-use-agriculture-can-breed-bacteria-resistant-first-line-human-defences


抗生物質は細菌のDNA合成やタンパク質生成を阻害することで細菌の増殖を抑えていますが、抗生物質を多用することで耐性を持った細菌の進化が促進されるリスクも存在しています。一方で、抗菌ペプチドは細菌の細胞膜を直接攻撃するため、抗生物質とは異なり耐性菌の発生を抑えられると考えられていました。

しかし、2015年には抗菌ペプチドの一種である「コリスチン」への耐性を生じさせる遺伝子「mcr-1」の存在が確認され、抗菌ペプチドの使用によっても薬物耐性菌の進化が促進される可能性が示されました。


オックスフォード大学の研究チームは、コリスチン耐性遺伝子「mcr-1」と薬物耐性の関連性を調査するべく、「mcr-1を持つ大腸菌」をニワトリ・ブタ・ウシといった家畜およびヒトの免疫システムで重要な役割を果たすことが知られる抗菌ペプチドに曝露(ばくろ)しました。その結果、「mcr-1を持つ大腸菌」は「mcr-1を持たない大腸菌」と比べて抗菌ペプチドに対する耐性が62%上昇することが明らかになりました。

さらに、「mcr-1を持つ大腸菌」は「mcr-1を持たない大腸菌」と比べてヒト血清に対する耐性が2倍に上昇することや、ガの幼虫に投与した際の致死率が倍増することも判明しました。

研究チームの一員であるクレイグ・マクリーン教授は「抗菌ペプチドを使用すると、病原体の抗菌ペプチド耐性が大きくなります。今回の研究は抗菌ペプチドを患者に投与する前に『耐性菌の発生に与える影響』を適切に評価する必要があるという強力な証拠を提供します」と述べ、抗菌ペプチドを使用することのリスクを訴えています。

なお、2016年には「mcr-1」が日本にも存在することが確認されています。

WHOが極めて重要な抗菌薬と位置付ける「コリスチン」に耐性となる遺伝子mcr-1が日本にも存在することを確認 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
https://www.amed.go.jp/news/release_20160108.html


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