増える年長 インフルエンサー 起用、背景にストーリテリングの多様化

DIGIDAY

若い世代、なかでもとりわけミレニアルに代わる今の主役、Z世代の目に前に何としても出たいとの執心に駆られ、マーケターはZ世代インフルエンサーに最もフォーカスしている。ただそのなかで、年かさのインフルエンサーと手を組み、年長層にリーチすることの潜在力を見て取るマーケターも、ぽつぽつとだが現れていると、エージェンシー幹部らは話す。

同幹部らによれば、このようなマーケターはすでに、莫大なオンラインフォロワーを集める、昨今数を増やしつつある年長インフルエンサーを試しており、他よりも目立つための手段として、それをしているという。

年長インフルエンサーのニーズが増加

一例を挙げると、2023年4月前半、マウンテンデュー(Mountain Dew)は新発売のアルコール飲料ハード・マウンテンデューの販促パーティをフロリダで催したのだが、ミレニアルおよびZ両世代のインフルエンサーを使わず、あえて引退生活者に向けたパーティを開いた

ほかにもたとえば、クリーンビューティブランドのイリア(Ilia)アラスカ航空(Alaska Airlines)も同じく、一定の年齢以上のインフルエンサーとの提携を通じて話題作りに努めている。インフルエンサーマーケティングの専門家およびエージェンシー幹部らは、今後、年長インフルエンサーとの提携が秘める成長に気づくブランドはさらに増えると見ている。

一部のインフルエンサーマーケティングエージェンシーはすでに、年長インフルエンサーを求めるブランドの増化を実感している。たとえばヴィレッジマーケティング(Village Marketing)の創業者ヴィキー・シガー氏は、年長インフルエンサーに対する最近のマーケターの関心についての質問に、「そうした声は以前からあったが、年を経たインフルエンサーを活用したがるブランドの数は一気に増えた」と、回答した。また、クライアントから上がってくるブランドの要望は増えていないが、年長インフルエンサーを求める声自体は毎年一定数あり、マーケターが同年齢層の潜在力に気づくなかで、これから増えていくのではないかと、見る向きもある。

たとえば、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)のPRショップ、MSLのデジタル部門SVPサリー・オーカイン氏は、年長インフルエンサーの利用に関する質問に、「いま我々が目にしているのは、オーセンティシティを求める傾向だ」と回答する。「場合によって、特定のカテゴリーおよびプロダクトについては、年長オーディエンスは若年オーディエンスと同等の影響力を持ちうることに、ますます多くのブランドが気づいている」。

「クリエイターエコノミーは年齢で区別をしない」

一定の年齢以上のインフルエンサーと組めば、ブランドにとっては、自身のメッセージングと戦略が年長層に響くのかどうかを、ほかにクリエイティブキャンペーンを実施せずとも見定められると、ノー・フィックスド・アドレス(No Fixed Address)のクリエイティブショップ、ミスチーフ(Mischief)のグループコミュニケーションズプランニングディレククター、レイチェル・アヴィラ氏は説明する。「特定のメッセージが、特定のプラットフォームがオーディエンスに響くのかどうかを知るのに、インフルエンサーは非常に利用しやすい一手だ」と、アヴィラ氏は続ける。「これは上手く行くのか? それとも違うかたちで彼らに話しかける必要があるのか? を教えてくれる」。

さらに言えば、年かさのインフルエンサーとのパートナシップによって訴求できるのは年長層だけではないと、インフルエンサーマーケティング幹部らは指摘する。TikTokでは実際、たとえばリン・デイヴィス氏(@cookingwithlynja、フォロワー数1500万人)、リリアン・ドロニアック氏(@grandma_droniak、フォロワー数890万人)、バーバラ・コステロ氏(@brunchwithbabs、フォロワー数310万人)など、人気の高い年長インフルエンサーらが、自身が属する年齢層だけでなく、ブランド勢がリーチを望む層である若年消費者からも大勢のフォロワーを獲得し、コミュニティを築いている。

「クリエイターエコノミーは区別をしない」と、デジタス(Digitas)のソーシャル&クリエイティブストラテジー部門VPクリスティーナ・ゴスウィラー氏は話す。「いまや全年齢層のクリエイターが活躍しており、その点をブランドはしっかりと押さえておくべきだ。つまるところ、特定のクリエイター(たち)と組むかどうかの判断は、自身のオーディエンスがどういう人に共感し、信用できる、本物だと感じるのかを知っているかどうかに尽きる」。

ゴスウィラー氏はこう続ける。「また、エイジインクルーシブ(年齢の壁を設けない)クリエイターの選択には、多様な価値の反映という点でも、得るものがある。確かに、年長層はそのブランドのターゲットオーディエンスではないかもしれないが、50~60代のインフルエンサーでも、その個人に当該ブランドやプロダクトとの強力な結びつきがあるのなら、Z世代はむしろ、そういう人々との接点を好意的に見るだろう」。

ブランドのストーリテリングは多様に

ただし、年かさのインフルエンサーが近年人気を高め、一部の大衆ブランドが彼らとの提携の可能性を探りはじめているのは確かだが、そうしたインフルエンサーを求めるブランドの大半は往々にして、高年齢層に特化したプロダクトを販売する企業であるのも事実だと、マーケターおよびエージェンシー幹部らは指摘する。

たとえば、ヘルスケアプロダクトを、なかでも更年期関連のそれを販売するブランドや、リバースモーゲージ(逆住宅ローン)を販売するブランドは、年かさのインフルエンサーを求める企業の典型だと、インフルエンサーマーケティングショップ、スウェイグループ(Sway Group)の創業者ダニエル・ワイリー氏は話すとともに、年かさのインフルエンサーはそうしたプロダクトを買うだけでなく、その分野以外のブランドはそうした年長層にさほど売り込みをかけないと、言い添える。

「人のライフステージと年齢からその人の関心事がかなりの程度わかる事実を踏まえれば、彼らがデジタルで消費するコンテンツにも同じことが言えるのは、驚くことではない」とオーカイン氏。「これからの数年間、クリエイターエコノミーが成長かつ進化していくなか、年齢をはじめ、属性の多様なクリエイターがさらに増え、それぞれ独自の方法でブランドのストーリーテリングに積極的に貢献していく図を、今後も目にすることになるだろう」。

[原文:More brands choose Boomer, Gen X influencers, as ‘older audiences can be just as impactful’ as young ones

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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