3月の日本の設定追加型株式投信の資金流入額は海外投信が4230億円、対して国内株投信は310億円にとどまっています。13倍以上の開きです。日本人投資家の海外志向が見て取れます。一方、東証では4月に入り、バフェット効果もあったことから海外投資家は1兆7千億円の買い越しです。
東証が市場区分を変更してから1年経ったのですが、結局昔と何が違う、と言われてウーン、名称が変わったかな、という程度ではないでしょうか?いわゆる暫定処置でプライムに残留し、裁定を待つ企業も数多くあります。
そんな中、東証はPBR1倍(株価純資産倍率)が1倍以下の企業にその評価の向上策を求めました。(つまり株価を上げろということでしょう。)PBR1倍割れとは今、会社を解散した方が上場を続けて経営するより良いという話です。そんな会社がプライム市場とスタンダード市場の過半数である1800社もあるのです。おかしな話です。
日本企業への投資は魅力がないのでしょうか?少し考えてみます。
まず、PBRが1倍以下ならば経営者によるMBOをしてしまったほうが良いと思います。ないしは合併を超強力に推し進め、上場企業数を今から5年で3割減を目指すぐらいの大ナタを振るうべきでしょう。しかし、東証は民間の上場会社です。自社の利益に背くような上場社数の減少を推し進めるわけがありません。ならば企業の自我に期待しながら政府が本腰を入れるべきでしょう。
日本の投資家が日本株を買わず、海外株を買う理由は何か、と言えばたった一言、日本株に魅力がないからなのです。投資家は必ずしも安定した企業業績で買うわけではないのです。むしろ「安定企業の低位安定株価」なのです。ところが経営者はこれに満足しているのです。何故かと言えば株主総会で怖い思いをしなくてよいからです。つまり、全部守りの経営なのです。
私は日経新聞を大学生の時からずっと読み続けています。三度の飯より日経新聞なのです。理由は当時「あっと驚く企業ニュース」が散りばめられており、日本経済の躍動感を感じたからです。株主でも何でもないのですが、「おっ、この会社、やるじゃん」という嬉しさがありました。スポーツでメダルをとったり優勝したりするのと同じで企業も切磋琢磨して「世界でメダルを取ったぜ」という感覚でしょう。紙面に賑わいがあったのです。しかし、この10年以上、その躍動感は完全に消えました。どちらかと言えば企業の敗戦処理的な記事やネガティブな内容が並びます。
バブル崩壊後、株価は下がり続けます。2013年初頭、安倍政権が本格始動した頃、どこかから忘れましたが「株価って上がることもあるんだね」というなんともコメントのしようがない声が聞こえてきたのを覚えています。
問題は日本株に資金が入らない点です。海外投資家動向が日本株の行方を決定づける最大のキーです。首相が外遊した際に海外の投資家を集めて「日本に投資してください!」と言うのはそれぐらい彼らの影響力があるということです。今回、バフェット効果があったようですが、北米で投資をしている私から見ると一般論として「わざわざ日本に投資したいかな?」と思うのです。その理由の一つにどの会社も似たような顔で差が見分けにくいのです。
バフェット氏は日本の商社がお好きなようですが、私は投資対象と考えたことはありません。理由は商社は資源、食糧、繊維など多方面での知識と投資によるビジネスを構築しているのですが、投資先の海外事業でキャスティングボートを握っているわけではないのです。一定数の株式を所有し、知識や情報はあるけど運営はできないのです。よって影響力はあるけれどサイレントに近い株主として大事にしてもらっている感じでビジネスとしての尖った部分はありません。
日本の株式市場と北米市場では様々な差があります。まず、北米は1株から取引できます。日本の単位は100株程度です。なぜ、1株から取引できるか、といえば株式分割、株式併合、ストックディールによる買収が多いからです。私は手持ちが35銘柄ぐらいありますが、一年に1-2銘柄はこれに引っかかります。例えば4月3日付で手持ちの鉱山株が買収により上場廃止になりました。この会社の場合、一部の資産を別の鉱山会社に売却し、残りを別の鉱山会社が買収したので私の手元には一株当たり〇㌦の現金、及びそれぞれの会社の株式が割り当てられました。比率は小数点4桁ぐらいある数字なので当然ながら割り当て株数は細かい数字になるのです。このような取引が年中あるので1株単位で売買できないといちいち単位未満株(端株)扱いになってしまうのです。
次いで配当金です。なぜ、日本の配当金は銀行や郵便局でもらうのでしょうか?当地は証券会社の自分の口座に振り込まれます。銀行に入ってしまうとそれを再投資するのに面倒です。日本でも信用取引の場合は証券会社の口座に配当金が入ります。なぜ、それを全部に適用しないのかな、と思うのです。また配当金もアメリカは年4回程度のところが多いし、カナダでは毎月配当の会社も結構多く、人気があります。
日本人投資家は海外株がお好き、と言うのは2つの理由があると思います。1つは企業活動のダイナミックさ、もう1つは東証のルールや方式が前世代的であることです。更には証券会社の手数料はもっと安くできると思います。そして証券会社も多すぎます。企業間で大した差がないのですから今の1/3-1/5程度でいいでしょう。そして効率化を図る、これをやらないとマネーはどんどん流出すると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年4月21日の記事より転載させていただきました。