ウェルネス にフォーカスした居住空間の新時代:健康な暮らしのための機能充実【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

今日のウェルネスを重視する傾向やリュクスな居住空間においては、建物内にジムを設置するだけではもはや満足されない。

ザ・ウェルの住居・オフィスビル計画

新しい不動産物件は、アドオンとしてのジムやコンシェルジュサービスのような従来のアメニティではなく、アパートや家にウェルネスを統合するという新しいフォーカスを注力して変化しつつある。ウェルネス指向の生活に対するこの新しい取り組みの好例には、ザ・ウェル(The Well)とマイアミの不動産開発業者であるテラ・グループ(Terra Group)とのあいだの不動産パートナーシップがある。ザ・ウェルは、レメディプレイス(Remedy Place)、セイジ+サウンド(Sage + Sound)、ガイア・ノマヤ(Gaia NoMaya)と同様に、(1月に禁酒する)ドライジャニュアリーやバイオハッキングなどの進化しつつある社会的な動きに対応して出現している新しいクラスのウェルネスソーシャルクラブの一環である。

このプロジェクトはザ・ウェル・ベイハーバーアイランズ・レジデンス(The Well Bay Harbour Islands Residences)と呼ばれ、今月着工し、2024年12月に25万平方フィート(2.3万平方メートル)の住居とオフィスのビルをオープンする予定である。このビルには、ウェルネスセンター、社交スペース、屋外ジュースカフェ、7000平方フィート(650平方メートル)の中庭、プールと温泉を備えた2つの屋上などがある。ウェルネスセンターのサービスには、マイアミ初のカルダリウム(高温浴場)、ハロセラピー・スチームルーム、コールドプランジ、ビタミン点滴療法、サウンドヒーリング用の赤外線サウンドドームなどが備えられる。54戸のコンドミニアムが120万ドル(約1.6億円)から売り出されており、10万平方フィート(9290平方メートル)の豪華なオフィススペースは賃貸である。居住者は、フルタイムのウェルネスコンシェルジュ、自宅での植物のデザイン・メンテナンス、地元コミュニティ支援農業の有機野菜の宅配サービスが利用できる。入居時にエネルギークリアリングの儀式に参加することもでき、また、赤外線ブランケットやリンパブーツ、(TheraBeam)提供のMRIなど最新ウェルネスの最新テックの利用も可能だ。

ザ・ウェルの共同創業者兼CCOのケイン・サーハン氏は、同社がニューヨークやコスタリカなどに持つ独立した5ロケーション以外にも、ザ・ウェルはホテルなどさまざまなタイプの不動産に組み込めると予想していたと述べている。現在、ザ・ウェルはマイアミビーチの1ホテル(1 Hotel)やオーベルジュリゾート(Auberge Resorts)などのホスピタリティグループと提携している。だが、テラ・グループとのマイアミの建物はこのタイプのものとしては初めてになる。サーハン氏によると、ウェルネス統合の施設や開発について週に約3件の問い合わせがあるという。

「(ザ・ウェルの背後にあるのは)ウェルネスを自分の生活に簡単に取り入れ、社会構造に取り込めるクラブや場所を立ち上げて、日々に自分のケアを組み込むというアイデアだった」とサーハン氏は語っている。

コロナによる在宅勤務のバーンアウト

コロナ禍により病に襲われた世界でほとんどの場合屋内で作業をするという状況で、健康な暮らしへの意識が急速に高まったことは理解できる。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)の2020年10月の記事によると、長期にわたる在宅勤務のせいで仕事が個人の時間や自由な時間に侵入していることも知られている。このような新しい傾向は時間不足による現代の子育てのプレッシャーなどほかの懸念や不満とも絡まっている。ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)は、2022年5月、働く親の66%が親の燃え尽き症候群の基準を満たしているというレポートを取り上げていた。同紙は「この非臨床の用語は、子どもの世話をするプレッシャーに疲れ果て、与えられるものはもはや何もないと感じていることを意味する」と記している。

ザ・ウェルの新しい住居が約束しているのは、自宅近くでウェルネスサービスを利用できるようにすることだけではなく、最終的には自分や家族のための時間を取り戻すということである。直接そのように宣伝されているわけではない。しかし、植物の世話係や(コミュニティ支援農業の)食料品の宅配、24時間対応のコンシェルジュや設備完備のジムへのアクセス、リラックスのための各種スパサービスが、累積的に時間の節約やメンタルエネルギーの回復に役立つことは想像に難くない。頻繁な社会活動とともに、友人や家族との強い絆は寿命を延ばして生活の質の向上に貢献することが示されている。かつては中産階級の生活に当たり前だった家事使用人が数十年にわたって減少していることは、いうまでもなく人々が責任に圧倒されていると感じる主な理由の1つである。

テラ・グループのCEOであるデイヴィッド・マーティン氏は次のように述べている。「当社は消費者や(消費者の企業の)従業員のニーズを意識しており、自宅で必要なものを入手でき、気分を向上して、健康と幸福を得るのに役立つものを提供したいと考えている。また、消費者は生産性を高めて多くを達成するために心の落ち着きも求めている。そのようなサービスを受けられるのはホテルに滞在しているときだけだ。しかし、ホテルには一時滞在という性質がある」。

健康的なビルのウェル認証

特に概日リズムに優しい照明、空気と水のろ過、騒音の低減など家庭環境における統合ウェルネス機能への関心が高まっている証拠がある。米国のほぼ4世帯に1世帯が自分の家が健康に悪影響を及ぼしているという懸念を抱いており、最大の懸念として空気と水の質が挙げられている。また、住宅所有者の3分の2は適切な住宅環境があれば年間の自己負担医療費を最大40%減らせると考えている。米国環境保護庁(The U.S. Environmental Protection Agency)によると米国人は平均して1日の90%を屋内で過ごしており、自宅やオフィス空間の環境が向上すれば個人の幸福に与える影響は増幅されるだろう。

2012年創業のウェルネス・テクノロジー企業、デロス(Delos)の社長兼COOのピーター・シアラ氏は、「健康とウェルネスは皆から注目されている。多くの(健康に関する)主張がなされているが、検証されていないものもある。状況を変えるには、情報が実質的でありかつ事実に基づいていなければならない」と述べている。デロスは不動産物件の空気、水質、照明を監視・制御するシステムを設置して、住宅をより健康的にすることを目指している。

デロスは、健康的な建物に対する世界最大の認証プラットフォームであるウェル・ビルディング・スタンダード(Well Building Standard)を設立している。ウェル認証(Well Certification)は、デロスが完全所有している独立子会社のインターナショナル・ウェル・ビルディング・インスティチュート(International Well Building Institute、以下IWBI)によって管理されている。デロスやIWBI、デロスのさまざまなプログラムと認証はザ・ウェルやテラ・グループ・レジデンシー・プロジェクトとは関係がない。

ウェル認証は、オフィス、集合住宅、ショッピングセンター、政府の建物、ホスピタリティグループなどのB2Bの建物のみにフォーカスしている。従業員や顧客のウェルネスへの要望に応えるだけではなく、空気の質の向上や水のろ過などのウェルネス機能を実装することで、環境、社会、ガバナンスの目標を達成することも企業の動機となっている。しかし、引き続き牽引力となっているのはコロナ禍のようだ。2019年には、6億平方フィート(56平方キロメートル)の建物スペースがIWBIの提供物件またはプログラムに登録された。今年の時点では、120カ国以上と4万を超えるロケーションで40億平方フィート(372平方キロメートル)を超える規模に拡大している。

自宅におけるウェルネス機能への高まる要望

年末までにウェル認証は一戸建て住宅向けの新しい認証と基準を提供する予定がある。マイヤーズ・リサーチ(Meyers Research)の調査によると、家を購入するミレニアル世代の約40%とX世代の35%が自宅での健康・ウェルネス機能を希望しているという。

「これまでは、アップセルや、大理石のカウンタートップやキッチンキャビネットなどの設備によるプレミアム価格に注力されていた。現実的で実用的で効果のある健康・ウェルネス設備が好まれてきて、アップセルなどの優先順位が低くなっているのを目にしている」とシアラ氏は述べている。

ウェルネス統合の暮らしを提供する一戸建て住宅への拡大は、長年のB2Bビルへのフォーカスに続く次章となる態勢が整っている。全米経済研究所(National Bureau for Economic Research)によると、きれいな空気やスマートホームのアップグレードなどの特定の機能は資産価値を高める可能性があり、住宅購入者には健康とウェルネスを改善できる空間に対してもっと金を払う意欲があることが示されている。また、IWBIは認証提供でも収益を得ている。ウェル認証料金は2500ドル(約33万円)で、さらに1平方フィート(0.09平方メートル)あたり0.16ドル(約21円)、上限は9.8万ドル(約1295万円)である。

ウェル認証を全住宅タイプに拡大する予定

IWBIのグローバル市場開発不動産のシニアディレクター、ジャネラ・ソレル氏は、不動産ポートフォリオの背後にある建物の所有者や機関投資家も、ESG要件に対処する必要性に加えて、まさにこの前述の理由からウェルネス統合に関心を寄せていると述べている。ソレル氏によると、認証と基準を求めている集合住宅の最大の市場は中国やブラジル、米国だという。

IWBIのウェル・レジデンシャル(Well Residential)責任者、ケルシー・ミューレン氏は、今後のIWBIの一戸建て住宅向けの認証と基準は高級住宅だけではなくあらゆる住宅タイプに適用される予定だと述べている。IWBIによる既存の健康安全性評価は、アヴァナス・キャピタル・マネジメント(Avanath Capital Management)が所有しているような手頃な価格の住宅コミュニティや高齢者向け居住施設ですでに採用されている。

ミューレン氏は次のように述べている。「(住宅の)購入者の意識は住宅所有者や賃借人の期待や需要につながり、それにより建築業者や開発業者はウェルネスの質と機能を備えた住宅を建てるようになるだろう」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Welcome to a new era of living well

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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