「なぜタンパク質を構成するアミノ酸は約20種類しか存在しないのか?」を調べた研究で生物の進化についてのヒントが明らかに

GIGAZINE


地球上の生命は約38億年前に誕生したといわれており、原始の地球から一体どのように生命が誕生したのかは大きな科学上のテーマとなっています。チェコのプラハ・カレル大学やアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学などの研究チームが、生命を形作るタンパク質が原始の地球でどのように合成されたのかを調べた研究で、タンパク質の構成要素である約20種類のアミノ酸がなぜ選択されたのか、アミノ酸の組み合わせがその後の生命にどのような影響を与えたのかという謎の一端が明らかになりました。

Early Selection of the Amino Acid Alphabet Was Adaptively Shaped by Biophysical Constraints of Foldability | Journal of the American Chemical Society
https://doi.org/10.1021/jacs.2c12987


Ancient proteins offer new clues about origin | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/980966

Evolution Could Predate Life Itself, Protein Discovery Suggests : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/evolution-could-predate-life-itself-protein-discovery-suggests

Did evolution occur before life even existed? New study sheds light on how amino acids “evolved” | Salon.com
https://www.salon.com/2023/03/01/first-life-on-earth-amino-acid-study/

全アミノ酸のうちタンパク質の構成要素となるのは22種であり、真核生物はそのうち21種、ヒトを含む多くの動物は20種のアミノ酸で構成されています。アミノ酸を「文字」にたとえると、タンパク質は文字を並び替えてできる「言葉」であり、生命は言葉を組み合わせて構成される「文章」と言うことができます。

地球上のあらゆる生物は人間からバクテリア、古細菌に至るまで、共通する約20個のアミノ酸の組み合わせで構成されています。これらのアミノ酸は、原始地球の大気や隕石(いんせき)の破片から選ばれた10種の「初期アミノ酸」と、その後に追加された10種の「後期アミノ酸」で構成されていると考えられていますが、天然に存在する500種類以上のアミノ酸からなぜ約20種のアミノ酸だけが選ばれたのかは不明です。

そこで、ジョンズ・ホプキンズ大学の生物物理学者であるスティーブン・フリード氏らの研究チームは、生命誕生前の地球において豊富だったさまざまなアミノ酸の組み合わせを実験室内で再現し、原始のタンパク質合成を模倣する実験を行いました。


実験の結果、古代の有機化合物はタンパク質のフォールディング(折り畳み)に最適なアミノ酸を選択して組み込んだことが示されました。タンパク質の形状とフォールディングは、他の分子や周辺環境とどのように相互作用するのかを決定するため、タンパク質の機能にとって非常に重要です。研究チームは、特に後から追加された10種類の「後期アミノ酸」が、タンパク質の機能を果たす上で優れていたために構成要素として選択されたと考えています。

科学系メディアのScience Alertは、「つまり、タンパク質合成の段階で進化や自然淘汰(とうた)が進んでいたと言うことができます。最も入手しやすいアミノ酸が選ばれたのではなく、特定の仕事に最も適したアミノ酸が選ばれたのです」と述べています。

フリード氏は、「ダーウィン的な進化を遂げるには、DNAやRNAといった遺伝分子をタンパク質に変える洗練された方法が必要です。しかし、DNAを複製するにもタンパク質が必要であり、鶏が先か卵が先かの問題があります。私たちの研究は、ダーウィン的な進化の以前に、自然が有用な性質を持つ構成要素を選択できたことを明らかにしています」「基本的に、タンパク質のフォールディングは地球上に生命が存在する前から、生命の進化を可能にしていました。生物学ができる前から進化が可能であり、DNAができる前から生命に有用な化学物質の自然淘汰ができたのです」とコメントしました。


今回の研究は地球上における生命の起源だけでなく、他の惑星に存在する生物の可能性についても示唆するものです。フリード氏は、「宇宙はアミノ酸が大好きなようです。もしかしたら、違う惑星で生命を見つけたとしても、地球上のものとそれほど違いはないかもしれません」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
地球の生命の起源となる物質が発見される – GIGAZINE

「生命の起源」に関する7つの理論 – GIGAZINE

人間がどれほど複雑な生物機械なのかがよくわかるアニメーション – GIGAZINE

生命誕生の瞬間を再現するオーブントースターとは? – GIGAZINE

「生命の起源」をアルゴリズムで解き明かす試み – GIGAZINE

新しく発見された巨大なウイルスが生命の起源をさらに悩ましいものに – GIGAZINE

約35億年前の岩石が「地球上における最古の生命の痕跡」だと確認される、火星の生命探査にも役立つ可能性 – GIGAZINE

地球の化石や石に残された痕跡から「地球の始まり」の姿や「地球外生命体」に対する新しい考え方がもたらされる – GIGAZINE

・関連コンテンツ

2023年04月12日 06時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.

Source

タイトルとURLをコピーしました