タコが魚を殴るって知ってた? タコに関するトリビア8選

GIZMODO

意味もなく、そばにあるモノを殴りたくなったことはない?そう、タコもそういう衝動に駆られるみたい!

タコってどんな動物だったっけ。8本の腕、楕円形のひとみ、色や質感が変化する皮膚、そして恐ろしい「くちばし」があるタコは、ボス(ヒエロニムス・ボス、地獄や悪魔、恐ろしい生き物などを描いたオランダの画家)の画中から作り出されたような生き物ですね。

でも、頭足類であるタコは架空の生き物ではありません。タコは約300種が存在し、潮溜まりから深海までの海水域に生息しています。

近年、タコの研究が進み、習性、さらにはタコの心にまで、目を見張るような知見が得られています。ここでは、タコの知能と行動について興味深い発見をいくつかご紹介しますね(タコの傍若無人なふるまいも!)。

その1:タコは通りすがりの魚にパンチを食らわす

通りすがりの魚をパンチするタコ Image : E. Sampaio et al. 2020 /Gizmodo

2021年に発表された研究では、タコと魚に同時にエサやりをしたとき、タコが魚にパンチをする様子が観察されました。研究者によると、「エサを横取りされないよう、連携を図るため」のパンチだったそう。にわかには信じられませんが、よくいえば、「平和を保つため」のパンチのようです。

そうはいっても、タコが魚をパンチするには、「魚をパンチする」以外の理由がないみたい。タコは反社会的な動物として悪名高く、同じ種類のタコでも「1匹オオカミ」なのです。

その2:もしタコに麻薬を与えたら…

警告表示をするヒョウモンダコ
Image : Wikimedia Commons

2018年、研究者チームは、麻薬として知られるMDMAをタコに与える実験をしてみました。タコは典型的な非社会的な生き物ですが、多幸感や外向性に関わる薬物がタコにどのような影響を与えるか確かめたかったのです。

いつも1匹オオカミ的なタコをMDMAの入浴剤入りのお風呂に入れたら、互いに一緒に過ごしたり、お互い探りをいれるように仲良く触れ合ったりもしていました。この実験結果がMDMAの効果によるものかはよくわかっていないのですが、タコがお互い仲良くすることはイカしてますね。

その3:貝殻を投げ合う

ワルい遊びをするタコたち Video : Godfrey-Smith et al. PLOS ONE, 2022

タコについて知っておくべきことは、彼らは賢くていつも不機嫌だということ。昨年、オーストラリアのジャービス湾で、タコが海底の泥や貝殻を集め、仲間のタコに投げつけるのを見たと報告した科学者がいました。研究者たちは、この行動には社会的な意味があるに違いないと考えています。素人目には、これはかなり反社会的な行為に見えちゃいますけれど、ね。

その4:タコは腕で味がわかる

カリフォルニアにいるツースポットオクトパス(目の下にある青い点は偽眼)
Image : Wikimedia Commons

カリフォルニアのツースポットオクトパスは、獲物と、それ以外に触れたときとで違う反応をすることが、2020年に発表された研究で明らかになりました。

タコの腕には、特定の化学物質に反応する受容体を備えた感覚細胞があって、タコの神経系ではヒトの味覚と同じように感じるそうです。これがタコが持つ、優れた触覚能力の秘密だと考えられています。

その5:タコにはヒトと同じような「ジャンプする遺伝子」がある

一般的なタコ
Image : Wikimedia Commons

2022年に発表された研究により、タコにはゲノムの異なる部分に飛び移ることができるトランスポゾン(細胞内でゲノムでの位置を移動できるDNAの塩基配列)、いわゆる「ジャンプする遺伝子」があることが分かりました。LiveScience誌によると、人類のジャンピング遺伝子の中には、学習や記憶の形成に関係するものがあるとのこと。

タコのジャンプする遺伝子はヒトのものと同じ種類だということも分かっています。今回の発見とタコの脳活動の観察を組み合わせれば、「タコの知能」に関する理解が深まるかもしれません。

その6:タコはGIFみたいな超短い夢を見ている

卵を抱える巨大なミズダコのメス
Image : Wikimedia Commons

2021年、タコの睡眠スケジュールを追った研究が発表されました。科学者たちは、動物の睡眠状態は、ヒトが夢を見るときのレム睡眠とよく似た状態であることを発見しました。しかし、動物が夢を見ていたとしても、私たちの夢のように複雑で長い夢ではないと考えています。「もっと短いビデオクリップ、せいぜいGIFみたいな夢かもしれない」と、ある研究者は米Gizmodoに語っています。タコの心を研究する新しい方法が実用化されれば、タコがどうやって考えているのか、もっと理解できるようになるかも!?

その7:タコは道具を使う

[embedded content]
Video: Museums Victoria/YouTube
ヤシの実の殻を運ぶタコ

この8本足の軟体動物は、目的達成のために道具を使うことが知られている数少ない動物です。タコでは、ヤシの実の殻を「隠れみの」として使っている様子が観察されています。

その8:他にもある?

脳波を記録されながら眠るワモンダコ
Image : Michael Kuba

2023年2月、研究者たちは、自由に動き回るタコの脳活動を初めて記録することに成功したと発表しました。研究者たちは、電極とデータロガーをワモンダコ(Octopus cyanea)に埋め込みました。

この研究で記録された脳活動パターンは、まだ特定の行動と結びつけられてはいませんが、この方法が定着すれば、タコの内部構造、特に脳活動が特定の行動とどのように結びついているか、より多くの情報が得られるかもしれません。

実験のための機器を体内に入れる手術の可否の意思表示ができない動物に、手術をするときと同様、ここでも倫理的な問題はあります。しかし、科学を解明するために動物に装置を挿入するのは、その動物をフライにして食べちゃうよりいいとは思うけど、どうかな。