卵かつ丼なのにサクサク。「焼きカツ丼」「後乗せ」「とじないカツ丼」など様々な名で呼ばれる卵ととんかつが別のかつ丼は、かつ丼のジレンマを解決した存在と言える。そんな世間に隠れたセパレイトかつ丼を探すのが連載『卵とじないカツ丼を探せ』だ。
近年、盛り上がりを見せているこのムーブメント。名店に勢いはあるが、まだどこでも食べられるというほどは広がっていないのも事実である。そんな中、近所でとじないカツ丼を発見した。
・蔵前のとんかつ屋
店の名は『浅草とんかつ かつ嬉』だ。蔵前の駅前にあり、シンプルでオシャレな外観が蔵前っぽいこの店。パッと見はちょっと高そうにすら感じる。でも実は、ご飯、味噌汁、サラダがお替わり自由で、ロースかつ定食が税込み980円とコスパも悪くない。ご飯も粒が立っていてウマイし。
ちなみに、塩はピンクソルトで、塩で食べてもちゃんとウマイのも私(中澤)が好きな点。言うならば、現代的なとんかつ屋である。
・新メニュー
というわけで、何度か食べに行ったことがあるのだが、ある日、壁にかつ丼メニューが貼られていることに気づいた。へえ、こんなのあったんだ。メインメニューには載ってないから気づかなかった。と、よくメニュー写真を見てみたところ……
とじてない!
その名も「肉厚極柔かつ丼(並1680円、上2280円)」。かつ嬉のInstagramによると2023年3月1日から販売開始しているもののようだ。しかし、注文してみたところ売り切れ。
・そそり立つとんかつ
まだ13時頃だったのだが、店員さんいわく、低温調理で大量に用意できないのと人気なこともあり、結構売り切れてしまうそう。確かに、メニューにも数量限定と書かれている。そこで後日、改めてオープン直後の11時に出直し、肉厚極柔かつ丼(上)を注文してみた。
平皿に盛られたかつ丼はオムライスのようにも見える。しかし、添えられたとんかつはとんかつ屋の面目躍如という感じ。そそり立つほどにぶ厚い。試しにとんかつを食べてみると……
ホロホロと口の中で崩れるようだ。まさに低温調理という感じの柔らかさ。別皿でついてきたタレをかけてみると、甘辛い醤油タレでさっぱりしている。その後味の軽やかさに蔵前っぽさを感じた。
・広がるかつ丼の深海
かつ丼と言えば男がかき込むものなイメージだったが、このとじないカツ丼は女性もいけそう。事実、ゆったりとした店内には女性客の方が多いくらいの印象だ。かつ丼にも色んな在り方があるんだなあ。
また1つ世界に新たなかつ丼が生まれた。どこまでも広がっていくかつ丼の深海に、これからもサーチライトを照らしていきたい。
・今回紹介した店舗の情報
店名 浅草とんかつ かつ嬉
住所 東京都台東区蔵前3-13-14
営業時間 11:00~15:00、17:00~22:00
定休日 年末年始
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.