ダン・タイ・ソン&ブルース・リウ@シャンゼリゼ劇場(パリ8区)

アゴラ 言論プラットフォーム

今月は、音楽強化月間。(といいつつ、先週はポリーニ爺様のリサイタルが体調不良で春に延期になった。最近、音楽界の爺様婆様たち、体調不安な方々多し。皆様、どうぞお元気で。)

ダン・タイ・ソン&ブルース・リウ@シャンゼリゼ劇場。

チケット買った時、まだ曲目出てなくて、「ピアノの森」ラストのカイ君&阿字野先生の公演みたいなデュエットかと想像してたら違った~。共にショパンコンクール優勝者の、前半は子弟、後半は師匠というソロリサイタルの二部構成だった(笑)。

一年ぶりのブルース・リウは、前回アンコールでやったのを含めたラモーたっぷりのあと、ショパン”バラード3番”と”スケルツォ4番”。

ラモー、なんかガチャガチャ聞こえる?ショパンは、スケルツォは特に響かず、バラードはちょっと大袈裟だけれど熱量あってなかなか。この曲、バレエ的には、ロビンス「ザ・コンサート」のラストでおなじみ。いつもバレエで聴いていいる音楽をちゃんとした演奏家で聴くと、バレエ伴奏だから仕方ないと思いつつも、この差って・・・ってついつい思ってしまう。

去年同様、全体的に明るく朗らか、屈託なくぐいぐい来るリウの演奏。

2022年1月ブルース・リウのリサイタルの様子はこちらです。

初体験のダン・タイ・ソン。まずは、フォーレ”ノクチューン33-1”と”バルカロール26-1”。おぉ、なんてまろやかで慈しみ深くしっとりした音色。沁みるわ~。バルカロールのニュアンスが素晴らしい!

フォーレの後に一度下がる師匠。それなりにお歳なのでプチ休憩かな、と思ってたら、会場が明るくなる。係員が出てきて、”ペダルがどうのこうので早急に対処します”と。数分後、ダンが出てきて、再び”ペダルがうんぬん”。どちらも何て言ってるのかよくわからなかったけど、結局技術者がいないのでこのままやりまーす、みたいな感じでリサイタル再開。

後半はショパンで、”3つのエコセーズ”(ノイマイヤー「椿姫」で聴くのと違う~(笑))、”ワルツ70-2”(奥ゆかしい品の中になんとも言えない哀愁が漂う)、”ワルツイ短調遺作”(一月に104歳で亡くなった母親への深い追悼と愛情が伝わる感じ)、”タランテラ”(よどみない清流のようにツヤツヤと瑞々しく流れてゆく音の連なりがなんとまあ美しいこと)、”4つのマズルカ24”(ラスト曲の説得力、圧巻)。そして最後は”英雄ポロネーズ”。

もちろんミスタッチ多い、でもそんなのどうでもいい!と思わせてくれる、感情と情緒の深さ。彼の音が、お腹にずしんと響くように訴えてくるようで、素晴らしい。

ショパン全部を通して、哀しげな通奏低音の気配を常に感じさせながら、そこに、希望や慈悲、愛情や溜息、そして夢を紡ぎ出す感じ。さっすが師匠!弟子とは一線も二線も画す感情表現。リウも、もっともっと経験を積んで、ダンみたいな深い感情表現を出せるようになるといいね。

この二人、そもそもの演奏スタイルが陽キャと陰キャで全然違うと感じる。だからこそ、仲良しなのでしょう。

アンコールは、ショパンのなんちゃらのヴァリエーションと、ラヴェルのなんちゃらを、連弾で。曲ごとにパートを変えて、楽譜に二人仲良く頭を引っつけて、楽しそうに弾いている姿が微笑ましい。師弟関係でいる時の二人はこんな感じなのね~。

ダン・タイ・ソンの深い深いショパン像に感動した演奏会。

「葬送」もう一度読みたくなった。さすがはショパンコンクール優勝者!この年のコンクールで大注目されたイヴォ・ポゴレリチと聴き比べしたくなる。彼の音色、未体験。3月のリサイタルに行きたいのだけれど、プログラムがう~ん。。。どうしようかな。


編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々4」2023年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々4」をご覧ください。

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