政治家は何にお金を使うのか?:日本の政治資金収支報告書は穴だらけ

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薗浦健太郎衆議院議員が辞職しました。また、テレ朝の報道では森雅子総理補佐官が収支報告書6176万円記載漏れで近日中に修正すると発表しています。薗浦氏が4000万円で議員を辞めたのはそのお金が明らかにどこかに消えていたからですが、森雅子氏の場合は森氏が政治団体に貸し付けた6176万円が返済されていないのにいつの間にか記載から消えているというものです。修正すると言いますが、なぜそんな間違いが起きるのでしょうか?

薗浦健太郎衆議院議員と森雅子総理補佐官 両氏SNSより

収支報告書は総務省の管轄なのですが、報告書は貸借対照表方式ではないのです。大福帳方式でもらったお金と出たお金の帳尻なのです。だから合わない収支が出てくるのです。単純に貸借対照表方式にすればつじつまが合わない数字が出なくなるのです。

実は私は日本で会社法人とは別に青色申告もあり、毎年申告があるのですが、これも珍妙な書式で、いわゆる収支報告書型なのです。つまり「入りと出」でしか見ないのです。今は経理を手で計算する人はかなり少なくなったはずで、普通は会計ソフトかエクセルシートを使っているかと思います。当然ながら貸借対照表と損益計算書の間でバランスするのが経理の第一歩です。それなのになぜ、そういう便利な形に変更しないのだろうと思います。

カナダ歳入局が時たま、企業に監査しに来るときはいわゆる会計ソフトのデータを全部持っていきます。つまりある意味、それが会計データのバイブルなのです。とすれば政治資金管理においても総務省が不正や怪しいものがあった際にはその会計ソフトのデータを全部監査する仕組みを持たせればよいでしょう。

そもそも日本の政治資金収支報告書は穴だらけとされます。その穴だらけの報告書をきちんと書く政治家と秘書もどれくらいいるのか、グレーではないかと思うのです。「虚偽の記載」は理由は何であっても政治資金規正法違反であってそれは見せたくないお金か、単なる間違いかは関係ないのです。間違い⇒虚偽⇒アウトなのです。だから厳密に言えば森雅子氏もアウトだし、かつて安倍さんが桜を見る会の収支を書いていなかったのもアウトです。厳密にはそういうことなのですが、なぜか辞める人、辞めない人がいるわけです。

80年代までの政治ですと裏金が大きく動く大きなスキャンダルはしばしば聞こえてきました。反社会的勢力絡みの資金が洗浄された形で政治家に流れることもあります。個人的に印象深かったのが金丸信元副総裁の東京佐川急便からの5億円裏金受領事件でこの事件の裏側には壮大なるストーリーがありました。そもそもは竹下登が田中角栄を裏切り、竹下が右翼から「褒め殺し」にあっていた際、解決をするために稲川会が関与、その際に東京佐川が間に入って資金洗浄していたという話なのです。1987年の話で私はある部分については精通しています。書けませんけどね。

昔、竹下派7奉行の一人のある秘書と酒を飲んでいた際、いかに政治に金がかかるか、特に選挙となれば借りられるところからは全部借りるからいくらお金があっても足りないと嘆いていたのが印象的でした。様々なところにカネが回っていたわけです。端的に言ってしまえばヤクザの上納金と同じようなものだったのではないでしょうか?

ですが、それは80年代までの話。それからはずいぶんクリーンになり、今の選挙はいくらなんでもそこまで金がかかるものではないと理解しています。とすれば薗浦氏は一体何に4000万円を使い、なぜ、ああも簡単に議員を辞めたのかが気になります。文春の報道もあったようですが、政治ではなく違う目的で使ったのではないかという気がするのです。なぜなら裏金的な使い方をすればその相手方が暴かれた際に困るので必死の工作をするはずですが、ほぼ無抵抗だったということはB級週刊誌が好む顛末があるのではないかという気がします。

もしもそうなら政治家のレベルは落ちたのかもしれませんが、それより中途半端な政治資金規正法と実務ルールをもっと現実に即したものに変えるべきではないでしょうか?本当に意図せず間違えるケースもあるでしょう。また経理処理ではうそをつきにくくなっています。見る人が見れば一発でわかるのです。それを前提にした資料の作り方をすれば毎度毎度、メディアが喜ぶようなニュースを報じる必要もなくなります。

結局、政治家やその秘書がズルができる仕組みを放置した総務省にも大いになる責任があるのではないでしょうか?そもそも秘書に経理会計ができるかどうかは個人の才能次第。ちゃんと税理士か誰かにやらせるか、確認させた方が疑惑はずっと少なくなると思います。今の政治家はまじめになったので裏金のやり取りをする昭和のタイプは少ないと思います。多くは銀座の飲み屋で散在しているか、誰かにたかっているとしか思えないのです。そんなレベルではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

mizoula/iStock


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年12月22日の記事より転載させていただきました。

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