再生可能エネルギーのリサイクル問題、ドイツの現状

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東京都や川崎市で、屋上に太陽光パネル設置義務化の話が進んでいる。都民や市民への事前の十分な説明もなく行政が事業を進めている感が否めない。関係者によるリスク評価はなされたのであろうか。僅かばかりのCO2を減らすために税金が使われようとしているが、国民の間で不公平感は生まれないのであろうか。また、パネルや部品の調達先など、多くの問題が指摘されている。課題の一つがパネルの廃棄処分である。

今回は、太陽光パネルを含め、再生可能エネルギー先進国であるドイツの現状を概説する。

補助金が終わり、太陽光パネル設備が解体・廃棄される

ドイツではエネルギー転換を加速し、2030年までに転換率を電力需要の80%まで拡大、2045年までに必要な電力をすべて再生可能エネルギーで賄おうとしている。再エネの中でも太陽光発電と風力発電の貢献度が高いといわれる。

ドイツにおける太陽光発電の普及はこの20年間で急激に進んだ。国内の発電設備容量は114メガワットから59,000メガワット近くまで増加した。現在、これら設備の多くは国の補助金の対象外となっている。技術的には運転できるのだが、大規模ソーラーパークを運営する事業者にとっては、もはや採算に合わない状態である。これから、毎年多くの設備が解体されていくことになり、多くのモジュールが撤去され、新しいモジュールに置き換えられたりする。

フラウンホーファー研究機構のシリコン太陽光発電研究センターによれば、「2002年に設置したものが2022年に撤去され回収される予定だが、今後の10年間で年間50万トンもの古いモジュールが蓄積される」ということだ。

リサイクルができず、貴重な原材料が失われる

ドイツ政府は電気電子機器法によって、太陽光発電システムのリサイクル率を80%以上と定めており、これはパネルを構成素材のうち、ガラスとアルミについては達成されている。

太陽電池(セル)は、プラスチックフィルムに封入されているため、機械的・化学的な分離が難しく熱処理は可能であるが、良質の排ガスフィルターが必要だという。シリコンや銀などの有価物の回収は、原理的には可能だが、経済的な理由から実用化されていない。

風力発電のリサイクル問題

ドイツの陸上風力タービンの数は、2001年から2021年の間に11,438基から28,230基へと倍増し、現在、累積設置容量は約57,000メガワットになった。20年前に建設された風力タービンのほとんどは、国の補助金がなくなるために、経済的に運転できなくなっている。

修理や保全、その他の費用が売電収入よりも高くなり、事業者はプラントの解体を迫られている。連邦環境庁は、今後10年間で、ローターブレードの廃棄物が年間最大20,000トン、2030年には年間50,000トンに達すると予想している。

同研究機構の風力システム研究所によれば、ローターブレードは、一体型設計で製造された強化プラスチックで作られているので、原理的に複合材料を分離することは可能でも、まったく経済的ではないという。

当初、企業は、解体された風力タービンの最大80%をリサイクルできると宣伝していた。しかし、現在でも循環経済は確立されていない。実際にリサイクルされているのは、スチールなどの金属のみで、ネオジムなどの貴重なレアメタルを含む発電機の磁石でさえ、リサイクルできていない。

また、コンクリート支柱は粉砕される利用されているが、品質が良くないため、路盤材などの用途に限定される。コンクリートの基礎部分は、そのまま地面に放置されたままである。さらに、SF6など、廃棄が困難な有害物質も排出される。

膨大な廃棄物の山ができる

業界は何年も前から「100%リサイクル可能な工場を建設する」と言い続けてきた。しかし、太陽光や風力発電設備のリサイクル・プラントは実現されていない。

両設備とも、製造時に消費したエネルギーより多くのエネルギーを生み出すことはできるが、設備の寿命が来れば、残るのは、リサイクルできない巨大なゴミの山である。

我が国の太陽光パネルの廃棄物・リサイクル問題

太陽光パネルは、25~30年で劣化し廃棄される。2012年導入された固定価格買取制度(FIT)が2032年には20年の期限を迎え、廃棄パネルが急増するといわれている。環境省リサイクル推進室の推計によれば、2015年の2,351トンから2040年は80万トンになるという。

太陽光パネルは鉛、カドミウム、セレンなどの有害物質を含んでいるため、産業廃棄物として処理される。また、太陽光パネルのリサイクル事業も始まっており、架台のスチールやレールのアルミ、パネルに使用されているガラスなどは再利用されている。その他の多くは「埋め立て廃棄」であり、今後埋め立て処分場の残余容量は不足し、廃棄パネル問題が深刻化するのは必至である。

政府の補助金(原資:再エネ賦課金など)を所与のものとして運営される再生可能エネルギーの横展開、「金の切れ目が縁の切れ目」で、廃棄パネルが山積みされるという事態に陥らないよう、設置義務化という拙速な事業の見直しを含め、将来のリスクを見通した十分な検討が必要である。

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