ウェブブラウザーを使わない人はまずいないだろう。筆者の場合は、1日に9時間程度だろうか。「Opera」「Firefox」「Safari」――いろいろなブラウザーを行きつ戻りつしながら使ってきた。総合的に見れば、最も優れたブラウザーはFirefoxだと思うが、タブの管理ではOperaが最高といった具合に、ブラウザーには個性があるからだ。
Sidekickでは簡単にアプリをスタートページへ追加できる
提供:Screenshot by Jack Wallen/ZDNET
実は最近、興味をそそられただけでなく、その出来映えにうならされたブラウザーがある。「Sidekick」だ。
Sidekickは、ユーザーの仕事を効率化し、「集中の敵」から守る、気の散らないブラウザーを標ぼうしている。大胆な主張ではないか。現代において、魅力的な情報から自分の集中力を守ることは不可能に近い。
インターネットとブラウザーのタブが存在する限り、人間の心は永遠に情報の海をたゆたう。
「Amazonにおもしろそうな商品が」
「あっ、記事にコメントがついた」
「新着ニュースがあるぞ」
お分かりいただけただろうか。
ひとつのことに集中していられないのは現代人に共通する病だが、今度はSidekickがOperaやFirefoxから私の注意をもぎ取ろうとしている。
まず、最初に言っておこう。
- Sidekickはオープンソースではない。
- オープンソースの「Chromium」をベースにしたブラウザーだ。
- 無料で使えるが、月額8ドル(約1100円)を払ってPro版にアップグレードすると追加機能を使えるようになる。具体的には、画面の分割表示、複数のアプリアカウント、複数のWorkspaces、パスワード共有、カスタムアプリ、無制限のサイドバーアプリ、プレミアムカスタマーサポートだ。
- 複数のプラットフォーム(「Linux」「macOS」「Windows」)に対応している。
筆者が感じたSidekickのすごい点を具体的に説明していこう。第一に、Sidekickは驚くほど多機能なブラウザーだ。若い世代なら多すぎると思うかもしれない。
アプリを配置できるサイドバー、タブを整理できる「Sessions」(Operaの「ワークスペース」のイメージ)に加えて、カスタマイズできるスタートページがあり、好きなアプリ(「Slack」「Gmail」「Discord」「Skype」「Twitch」「Figma」「GitHub」「Googleドライブ」「Upwork」など)を追加できる。よく使うアプリをサイドバーに常駐させておけば、どのタブを使っていてもすぐにアクセス可能だ。
豊富なオプション機能のなかでも、特に便利だと感じたのはOperaのワークスペースを思わせるSessionsだ。Sidekickでは、複数のタブをまとめたセッションを作成し、それぞれに異なるタブをピン留めできる。例えば、仕事、SNS、ショッピング、ニュースなど、目的別のセッションにタブを分類しておけば、やりたいことに合わせてセッションに含まれる複数のタブを一気に起動できる。
筆者の場合は、次のようなセッションを作成してみた。
- 仕事
- ソーシャル
- 執筆
- ニュース
- 買い物
セッションは簡単に切り替えられる。また、使っていないセッションはアイドル状態になるとシステムリソースを消費しない。一度セッションを作ってしまえば、キーボードのショートカット(Alt+W)で簡単に呼びだし、選択可能だ。
セッション間はショートカット(Alt+W)で簡単に切り替えられる
提供:Screenshot by Jack Wallen/ZDNET
2020年11月30日に公開されたSidekickは、ウェブアプリの統合や優れたタブ管理、極めて高い性能を実現することで、Chromiumを現代化した。ウェブアプリによって、よく使うサービスへのアクセスが容易になっただけでなく、Sessions機能によってタブの管理も格段に楽になった。
パフォーマンス面では、SidekickはOperaに圧勝している。このことは両者を起動してみればすぐに分かる。Sidekickを立ち上げてもSystem76の「THELIO」からファンの音は聞こえないが、Operaを開くとブーンというファンのうなり声がはっきりと聞こえる。
開いているタブの数によっては、Firefoxでも同じことが起きる可能性はあるが、最近のFirefoxはメモリー管理に優れているので、比較はそれほど単純ではない。しかしこれまでのところ、Sidekickで負荷の高い作業をしてもシステムが不安定になったことは一度もない。Sessionsやタブをどれだけ開いても、Sidekickはマシンにインストールされたどのブラウザー(Firefox、Opera、「Vivaldi」、「Brave」、「Chrome」など)より高いパフォーマンスを発揮した。これだけでもSidekickの使用頻度が高まっていたが、さらにSessions機能によって、筆者は完全にSidekick推しとなった。
Sidekickが向いている人
率直に言って、Sidekickを使えば誰でも生産性が向上するはずだ。しかし、ブラウザーのせいでシステムが重くなることにうんざりしている人がいるなら、Sidekickに変えることで状況を改善できるだろう。開発チームがどういう工夫でリソース消費を抑えているのかは分からないが、Sidekickの効率性は高い。まるでパソコンを新調したような感覚を味わえるはずだ。タブの管理に悩まされているならSessions機能が救世主となるだろう。特定のウェブアプリやサービスに素早くアクセスしたい人にとってはサイドバーの恩恵は大きい。
このように筆者はSidekickに完全に魅了された。まだ既定のブラウザーには設定していないが、その日は近いだろう。筆者がFirefoxを使い続けている唯一の理由はオープンソースだからだが、純粋主義者ではないので、Sidekickへの乗り換えはいつ起きてもおかしくない。
関心があるなら、Sidekickを試してみることを強く勧めたい。このブラウザーは、筆者と同じように生産性を重視し、リソース管理に本気で取り組んでいる人が求めるすべての条件(とさらにプラスアルファ)を備えている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。