アウトドア用品販売のREI(アールイーアイ)は、多くの小売業者と同様に、店舗で取り扱ってもらう際にブランドが満たさなくてはならない基準を設けている。REIの倫理的基準は主に環境への配慮に重点を置くものだが、今回同社はその要件をさらに強化することにした。新しい規則では、REIの168の店舗とウェブサイトを通じて販売を継続するには、ブランドは価格と同等で幅広いサイズ展開を提供し、さらにインクルーシブなマーケティングの実践を保証し、文化的流用を排除するよう求められている。
2018年からREIは、毛皮の使用を認めない、ブランドにカーボンフットプリントの測定と共有を要求するなど、ブランドの排出量や倫理的慣行に関連する基準を設けてきた。排出量の基準には具体的な数値はなく、ブランドは排出量を削減する計画をREIと共有しなくてはならないだけだ。だが、REIによると、2020年以降、REIの売上の70%を占める300以上のブランドが排出量の削減に成功したという。新たに追加された基準は、ブランドが多様性とインクルージョンへのコミットメントを保証することに重点を置く。たとえば、ヘッドウェアやヘルメットを販売するいかなるブランドも、かなりボリュームのあるカーリーヘアを含むさまざまな髪のタイプに対応する必要があり、すべてのブランドは製品のデザインやマーケティングにおいて文化的流用を防止するための手段を備えていなければならない。ブランドはその手段(たとえば専門家の助言を得た証拠など)をREIに提示して承認を得る必要がある。
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新しい基準を満たすためにブランドには支援を提供
これらの変更には大きな要求もある。REIのローカル&インクルージョン・マーケティング担当シニアマネージャー、ニコール・ブラウニング氏は、サイズ展開を広げるといった、労力をさらに要する基準については期間を大目にみて、基準を満たすための支援を確実に提供すると述べている。REIは、アンライクリーハイカーズ(Unlikely Hikers)やアダプティブアドベンチャーズ(Adaptive Adventures)といった非営利団体やアウトドア組織との協力を通じて、サイズ展開の拡大を売り込む計画だ。
「相手を辱めて責めるという罰則的なアプローチは、長期的な解決策としては効果的ではない」とブラウニング氏は言う。「私たちと連携するブランドの多くは、こうしたことをこれまで考えたことがなかったかもしれないし、厳格なアプローチをとることが正しい方法ではない。こうしたことには時間がかかるのだ」。
たとえば、インクルーシブなサイズ展開の基準は2024年春まで、ヘッドウェアの要件は2025年までは適用されない。それまでは、REIはブランドパートナーに対してベストプラクティスを学ぶためのインクルーシブデザインコンサルタントなどの専門家を招いたパネルやワークショップへのアクセスを提供する。ブラウニング氏によると、REIは特定のブランドが新たなガイドラインを満たすための支援も実践的に行っているという。たとえば、カヤックブランドのエディラインカヤックス(Eddyline Kayaks)がそのカヤックの起源であるアメリカ先住民の部族を尊重したマーケティングができるよう、REIは同ブランドを植民地時代以前の米国史を専門とするワシントン大学の教授とつないでいる。
将来の課題はアダプティブでユニバーサルなデザイン
サイズ展開を拡張するようブランドに求め、またマーケティングや製品イメージのサンプルとしてそれらのエクストラサイズを要求するという点に関して、REIの戦略が思い起こさせるのは、オールドネイビー(Old Navy)が2021年8月に開始した野心的なボディクオリティ(Bodequality)プロジェクトだ。このプロジェクトは当初は称賛されたものの、最終的には過剰であまりに早急なアプローチのために失敗し、2022年5月にオールドネイビーは投資を撤回するにいたった。性急な実施とその後の撤退の両方がファッションにおけるインクルーシブなサイズ展開についての取り組みを後退させたと活動家は主張し、批判している。
「REIのサイズのインクルーシビティの取り組みはかなり賞賛すべきだが、REIも、またそのブランドも、オールドネイビーがボディクオリティで直面した落とし穴を避けたいと考えているだろう」と述べたのは、フィットテクノロジー企業パーフィットリー(Perfitly)の創業者ラーガブ・シャルマ氏だ。「このようなことを責任を持って行うベストな方法のひとつは、REIの実際の買い物客層の体格と体型を本当に理解し、データを得ることだ。そうすれば、ブランドはREIの会員やほかの顧客を代表しないサイズを過剰生産したり、満たされていない需要に対して過小生産したりしなくてすむ」。
REIは財務情報を年に1度しか発表しないが、4月の報告書では年間売上が40億ドル(約5453億円)近くあり、2020年の売上と比較して36%増となっている。REIは、バスプロショップス(Bass Pro Shops)やディックススポーティンググッズ(Dick’s Sporting Goods)などのスポーツ用品店と並んでアウトドアに特化した最大級の小売業者のひとつだ。そのためREIには、ザ・ノース・フェイス(The North Face)、ヴオリ(Vuori)、コロンビア(Columbia)といった大手企業を含む1000以上のブランドに倫理的慣行を取り入れさせるほどの影響力がある。だがブラウニング氏は、REIにはもっとやりたいことがあると言う。
「米国民の4分の1近くが何らかの障害を抱えて生活している」と、CDCのデータを引用してブラウニングは述べた。「アダプティブデザインとユニバーサルデザインについて、私たちは多くのことを行っていきたい。たとえば、弱視の人のためのデザインをどのように奨励したらよいのか。アダプティブアドベンチャーズ(Adaptive Adventures)のような組織と協力して、何ができるかを考えている。これが私たちにとって次の大きな課題だ」。
[原文:REI implements new inclusive sizing standards for its 1,300 brands]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)