コロナワクチン接種回数別の死亡率は?

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コロナワクチンの効果への信頼が揺らいでいる。最近では、感染予防効果のみでなく、重症化さらには死亡抑制効果についてさえも疑問視されている。

日本政府からは、今年の5月8日から高齢者などの重症化リスクが高いグループや医療や介護従事者を対象にオミクロン株対応ワクチンを追加接種する方針が発表された。更に、9月からは、5歳以上の全年齢層に接種対象を拡大することになった。この結果、高齢者や医療従事者は2回のワクチン接種をすることになる。

わが国では、3月8日現在、ワクチンの総接種回数は3億8千万回に達している。全年齢層での接種率は80%を、高齢者にいたっては90%を超えている。にもかかわらず、ワクチンを接種するかを決めるに最も重要な判断材料であるワクチン接種回数別の死亡率は公表されていない。

以前、厚労省はワクチン接種回数別の感染率を公表していたが、それさえも、昨年9月からは公表しなくなった。これだけ、ワクチン接種が普及しているのに、わが国には、ワクチンの効果に関するリアルワールドデータが存在しないのである。

接種回数別の死亡率を知る手掛かりとして、昨年8月10日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに、国立感染症研究所から提出された資料がある(図1)。8月2日までに、HER-SYSと自治体に報告があった1,432人の死亡例について、ワクチン接種回数別の死亡数が図示されている。

図1 ワクチン接種回数別の重症者数と死亡者数
2022年8月10日開催第94回アドバイザリーボード資料

接種回数不明者を除くと、死亡例のうち、未接種者、1回接種者、2回接種者、3回接種者の占める割合は、17%、1%、64%、18%であった。コロナによる死亡例のほとんどがワクチン未接種であるというニュースを目にするが、この結果からは、死亡例のほとんどが未接種者ということはなさそうである。

京都大学の福島雅典名誉教授は、ワクチン接種回数別の重症化率と死亡率について、厚労大臣宛てに行政文書の開示請求を行なったが、この請求はデータを保有していないことを理由に却下されている。

海外では、コロナワクチン接種回数別の死亡率に関するリアルワールドデータが公表されている。図2には、英国政府統計局(Office for National Statistics)が、今年の2月21日に公開したデータを紹介する。微に入り細を穿ったもので、1)死因、2)ワクチン接種歴、3)年齢層を細かく分類し、それぞれのグループにおける死亡率が示されている。接種回数によって、ワクチン接種からの観察期間が異なるので、死亡率は人年法によって算出されている。

図2 英国統計局の公表によるコロナワクチン接種回数別の死亡率

死因は、全ての原因を含む死亡、コロナによる死亡、コロナ以外による死亡の3群に分けている。ワクチン接種歴も、未接種、1回接種、2回接種、3回(追加)接種に分類するほか、1回接種と3回接種は、接種から21日未満か21日以上に、2回接種については、21日未満か、21日から6ヶ月の間か、6ヶ月以上かの3群に分けている。年齢についても、全年齢層のほか、18歳から39歳、40歳以上は10歳毎の死亡率を表示している。

膨大なデータが公開されているが、図3には、2021年10月から2022年12月までの、全年齢層における全死亡率、コロナ感染死亡率、コロナ感染以外の死亡率をワクチン接種回数別に示した。1回接種群および2回、3回接種群のうち接種から21日未満の症例ないし21日から6ヶ月の症例は少数であった。そこで、2回接種では6ヶ月以上観察した群、3回接種では21日以上観察した群のデータを示した。

図3 全年齢層におけるコロナワクチン接種回数別の死亡率
出典:英国統計局

全年齢層における全死亡率とコロナ感染以外の死亡率は、全期間を通して、2回接種者は未接種者よりも高く、3回接種することで、未接種者より低下した。コロナによる死亡率は、2021年の12月までは、未接種者と比較してワクチンの2回接種者の方が低かったが、2022年1月以降は、未接種者と同等かそれを上回る月もあった。

また、オミクロン株の流行が始まった2023年の2月からは、未接種者においても、コロナ感染による死亡率は著しく低下した。オミクロン株流行後の死亡率の低下を,ワクチンの効果と見做す意見もあるが、この結果からは、ウイルスの弱毒化によることは明らかである。

3回目ワクチン効果の持続期間は半年間程度とされており、英国においてワクチンの3回目接種が始まったのは、2021年10月からなので、2022年後半にはワクチンの効果も低下したと思われる。実際、2022年6月以降は未接種、2回接種、3回接種群の間で、全死亡率もコロナによる死亡率もほとんど差は見られない。

図4は18歳から39歳の若年者における検討結果を示す。若年者なので、全死亡率、コロナ感染による死亡率ともに、全年齢層と比較して圧倒的に低く1/100程度である。やはり、コロナ感染による死亡が、未接種者においても2022年2月から激減している。

気になるのはコロナ感染以外の原因による死亡において、3回目接種者の死亡率が未接種および2回接種者の死亡率と比較して経時的に上昇傾向が見られ、2022年後半には未接種および2回接種者の死亡率を上回る月も見られたことである。3回接種者の死亡率が他の群を上回るようになる前触れなのか、今後の動きが注目される。

図4 2022年における18歳から39歳のコロナワクチン接種回数別の死亡率
出典:英国統計局

わが国では公開されないワクチン接種回数別の死亡率も、海外では詳細なデータが公開されている。今後のワクチン接種を考える上で大変参考になる所見が含まれている。なぜ、わが国では、ワクチンの効果に関するリアルワールドが公開されないのか、その理由を知りたいところである。

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