子ども時代によく「悪夢」を見た人は認知障害になる可能性が2倍でパーキンソン病は7倍

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悪夢を見ると現実の恐怖にも強くなるとの研究結果がありますが、眠りの質が悪化し寝覚めも最悪になるので、できれば悪夢は見たくないものです。1950年代に生まれた子どもが50年後に脳疾患を患っているかどうかのデータを分析した新しい研究により、幼少期に見た恐ろしい夢が後年の悪夢の予見となる可能性が突き止められました。

Distressing dreams in childhood and risk of cognitive impairment or Parkinson’s disease in adulthood: a national birth cohort study – eClinicalMedicine
https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2023.101872

Bad dreams in children linked to a higher risk of dementia and Parkinson’s disease in adulthood – new study
https://theconversation.com/bad-dreams-in-children-linked-to-a-higher-risk-of-dementia-and-parkinsons-disease-in-adulthood-new-study-199822

バーミンガム大学の神経学者であるAbidemi Otaiku氏は、今回The Lancet誌の医療関係者向けオープンアクセスジャーナル・eClinicalMedicineに掲載された論文の中で、子どもの頃に見た悲惨な夢と50歳までに認知症を含む「認知障害」や「パーキンソン病」を発症するリスクとの関連性を調査した結果を報告しました。

Otaiku氏がこの調査に乗り出したのは、同氏が2022年に発表した研究がきっかけです。この調査でOtaiku氏は、週に少なくとも1回は悪夢を見る中年の人は、その後の10年間で認知症やパーキンソン病と診断される確率が2倍以上も高いことを突き止めています。

中高年が見る「悪夢」は認知症のサインかもしれない – GIGAZINE


研究の中で、参加者らが「子どもの頃から頻繁に悪夢を見ていた」とよく話すことに気づいたOtaiku氏は、悪夢と認知障害の関係は幼少期にさかのぼることができるのではないかと考えるようになりました。

こうして調査を始めたOtaiku氏は、まず1958年3月3日からの1週間にイギリスで生まれた全ての子どもを長期にわたって追跡した「1958年イギリス出生コホート研究」のデータを調べました。

このデータには、1965年と1969年、つまり対象者が7歳と11歳の時に母親が「ここ最近の3カ月間で悪い夢を見た?」と尋ねた結果が含まれていたので、Otaiku氏はその回答から対象者を「悪夢を全く見ない」「たまに見る」「よく見る」の3つのグループに分けました。

そして、統計ソフトを使用して各グループの対象者が50歳になった2008年までに認知障害やパーキンソン病と診断されていたかどうかを調べたところ、悪い夢を定期的に見る子どもは見ない子どもに比べて認知障害を発症する可能性が76%高く、パーキンソン病を発症する可能性は640%高いことが分かりました。この結果は、男の子でも女の子でも同様でした。


今回の研究は、悪夢と病気のリスクとの関係を調べただけなので、「悪夢が病気を引き起こしている」のか「悪夢と病気が共通の原因を持っている」のかといった因果関係をはっきり確かめるには、さらなる研究が必要です。

Otaiku氏はあくまで「推測」と前置きした上で、どちらの仮説も正解ではないかと話しました。Otaiku氏によると、悪夢を見るリスクを高めることが知られている「PTPRJ」という遺伝子は、高齢になってからのアルツハイマー病発症リスクの増加にも関係しているとのこと。また、悪夢によって睡眠という脳の回復プロセスが阻害されることが、脳疾患の直接的な原因となっている側面もあると考えられます。

「子どもの頃に悪夢を見ると将来の疾患のリスクが640%も高まる」と聞くと恐ろしい印象を受けますが、Otaiku氏はそれほど心配する必要はないとしています。なぜなら、分析の対象となった6991人のうち、7歳の時から11歳の時まで悪夢を定期的に見続けた人は268人(4%)しかおらず、そのうち50歳までに認知障害やパーキンソン病になった人は17人(6%)と、悪夢をよく見た人の大半は認知障害にもパーキンソン病にもなっていないからです。

Otaiku氏は次の研究で、脳波測定を使って子どもが悪夢を見てしまう生物的なメカニズムを探る予定です。そして、長期的には悪い夢に悩む全ての人のための治療法開発を目指し、最終的に睡眠の質や心の健康の改善を通じて認知症やパーキンソン病の発症を予防できるようにしたいと語りました。

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