一般的な自動車用信号機には「赤・黄・青(緑)」の3色のライトが存在していますが、ノースカロライナ州立大学の土木・建設・環境工学准教授を務めるAli Hajbabaie氏らの研究チームは、新たに「4番目の色」を信号機に追加することで交通をスムーズにできる可能性があるという研究結果を発表しました。
White Phase Intersection Control Through Distributed Coordination: A Mobile Controller Paradigm in a Mixed Traffic Stream | IEEE Journals & Magazine | IEEE Xplore
https://doi.org/10.1109/TITS.2022.3226557
Researchers Propose a Fourth Light on Traffic Signals – For Self-Driving Cars | NC State News
https://news.ncsu.edu/2023/02/traffic-light-for-autonomous-cars/
Traffic Lights Could Have a 4th Color in The Future. Here’s Why. : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/traffic-lights-could-have-a-4th-color-in-the-future-heres-why
近年はアメリカを中心に自動運転車の実用化が進められており、将来的には一般道を走行する自動運転車の割合が増えることが予想されます。自動運転車は単にドライバーの負担を減らし、人為的ミスによる事故を回避するだけでなく、人間による「必要のないブレーキ」が減ることで交通渋滞を緩和するメリットもあると期待されています。
数台の自動運転車が道路上に混ざるだけで交通渋滞が減るという研究 – GIGAZINE
by gscruton
Hajbabaie氏らは、自動運転車が周囲の自動運転車や信号機の制御コンピューターと通信し、スムーズな交通を実現する「ホワイトフェーズ」という概念を提唱しています。ホワイトフェーズにおいて、自動運転車は自らの演算能力を活用することで交通の流れを効率的かつインテリジェントに調整し、最適な道路選択や走行速度を選択することが可能とのこと。しかし、すべての車が自動運転車になるには時間がかかり、現実には人間が運転する自動車も一定数混ざった状態が長く続くと考えられます。
そこでHajbabaie氏らは、周囲を走る自動運転車が交通を実質的に管理していることを人間のドライバーに知らせるため、4番目の「白色のライト」を信号機に加えるというアイデアを主張しています。Hajbabaie氏は、「赤信号はまだ『止まる』を意味しており、青信号は『進む』を意味しています。そして白色のライトは、人間のドライバーに対して『前の車に従う』ように指示します」と述べました。
実際に信号機に「4番目の色のライト」を組み込んだ図が以下。黒い車が自動運転車を示しており、白い車は人間のドライバーが運転する車を示しています。自動運転車に乗っている人々は信号機のライトを見る必要がありませんが、人間のドライバーは白いライトを見て「前の車に着いて行けばいい」と判断します。交差点を通行する自動運転車の数がしきい値を下回ると、信号機は通常の「赤・黄・青」のライトに切り替わるとのこと。なお、研究チームは便宜上「白いライト」としていますが、既存のライトとの違いがわかればOKであるため、必ずしも白色である必要はありません。
研究チームが利用した交通シミュレーションモデルでは、自動運転車は周囲との通信で交通を制御するホワイトフェーズの有無にかかわらず、交通の流れを改善することが示されました。ホワイトフェーズが導入されるとさらに交通がスムーズになり、余計な停車・発進が減ることで燃料消費量も削減されました。さらに、白いライトが組み込まれた交差点の割合が高いほど、交差点を通過するスピードが速くなって燃料消費量も減少したとのことです。ホワイトフェーズにおいて10%が自動運転車だと遅延が3%減少し、30%が自動運転車になると遅延は10.7%減少したとHajbabaie氏は主張しています。
Hajbabaie氏は、「自動運転車に交通量コントロールの一部を付与することは、モバイルコントロールパラダイムと呼ばれる比較的新しいアイデアです。自動運転車が関与するあらゆるシナリオで、交通を調整するために使用できます」「しかし私たちは、人間のドライバーに何が起こっているのか、そして交差点に近づいた時にどうすべきかを知らせるために、交差点に白色ライトのコンセプトを取り入れることが重要だと考えています」と述べました。
記事作成時点では、自動運転車や信号機の制御コンピューターが相互に通信し、交通量をコントロールする仕組みは実装されておらず、信号機を更新するには長い時間と多額の費用がかかります。しかしHajbabaie氏は、商用車の割合が多く交通の流れが重要な港湾周辺の道路において、ホワイトフェーズのパイロットプログラムを実施できる可能性があると主張。「商用車は自動運転車の採用率が高いように思われるため、この環境で港湾交通と商業輸送に利益をもたらす可能性があるパイロットプログラムを実施する機会があります」とコメントしました。
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