まずは口に出して言ってみてほしい。ラッキーチェリー豆。どうだろう、ちょっと元気になったのではないか。
ラッキーが躍り出て、うしろをまさかのチェリーが続く。食べものの名前にしてはとても楽しい。カジノのスロットが回っているかのような賑やかしさである。末尾には漢字で静謐な「豆」がピリオドのようにそっと添えられており、気品すら感じられるものである。
つべこべ言わず、ラッキーチェリー豆、食べてみよう。
長崎県島原市の豆菓子
「ラッキーチェリー豆」は、長崎県島原市のお菓子だ。
県外の友人が佐世保に遊びに来たとき、「これ美味しいよ」と言ってわたしにくれた。豆菓子は洋菓子のように分かりやすくリアクションしずらい。「えー名前かわいい」とボーっとしながら口に放り込んだところ、これがとんでもなく美味しかったのである。
逆輸入されてきた地元菓子が美味かったときの衝撃たるや。
「そんなのずるい」と、わたしは友人に理不尽な嫉妬心を抱いてしまった。
ラッキーチェリー豆のメーカー「株式会社藤田チェリー豆総本店」の公式サイトによると、先代の藤田貞行氏が、大正三年佐賀県鹿島市で原料のそら豆を油で揚げた菓子を考案し、チェリー豆が誕生したとのことだ。お茶菓子として島原で長年にわたり愛されつづけ、長崎県の特産品としても有名になったそうである。
パッケージの裏側には、「豆のひとりごと」と称して由来やこだわりが丁寧に記されている。
「わたくしを仕上げる衣は揚げ油が植物油であること、精製砂糖のあっさりした甘みが舌ざわりよく溶けるところなどが特長でこれが島原名産の寵児とされるわけでございます。」
と、自分の武器と愛されっぷりをよく理解している。そりゃお菓子のオリンピックで最高賞を受賞するわけである。美人で性格の良いクラスメイトのようだ。
皿に出してみると、薄くまぶされた砂糖化粧がとても綺麗だ。
たまらず1つつまんでみる。うん、おいしい。かすかに生姜の風味がする砂糖は甘すぎず、揚げたそら豆との一体感がすごい。
飲み込む直前にはもう手が次の一粒をつまんでいる。つまり、中毒的においしいのだ。
緑茶、コーヒーがぜひともほしいところだ。こうして記事を書いている今も、わたしはラッキーチェリー豆をつまんでいる。
おつまみにぴったりな「うに豆」
次は「うに豆」を食べてみよう。
うに豆もラッキーチェリー豆の仲間だが、パッケージの雰囲気ががらりと変わる。「お茶菓子だけで済ませてくれるなよ」といった気概にあふれている。
パッケージ裏には、「ラッキーチェリー豆の兄弟分でございます。素質の良い豆にウニを衣にして誠意の加工で仕上げています。ビールやお酒のおつまみに最適な味を有して皆様に喜んで迎えられております。」とある。兄弟分も上品だった。
さきほど「なぜウニ?」と疑問を抱いたが、ウニを誠意を尽くして加工してあるので、別に「なぜ」と問う必要もなかろうと思った。
成分表を見ると「生うに」とのことで、少し背筋が伸びる。柿の種に似た塩っ気と唐辛子の辛さが、揚げそら豆のしっとり軽い食感と合う。真昼間からビールが飲みたくなったぞ。
公式サイトでは、美味いとしか言えないであろう「海苔豆」や「カレー豆」、和三盆や黒蜜きなこ、春限定でネーミングが詩的な「桜咲くラッキーチェリー豆」などが華々しくラインナップ。
フレーバーに応じて飲み物とのペアリングも楽しんでみたいところだ。
ラッキーが舞い込みそうなので持ち歩くのが楽しい
ちょっとした本ぐらいのサイズ感のラッキーチェリー豆は、軽いので持ち運びにも最適だ。
「持ち運びにも最適だ」と提案しておきながら、ただわたしが外出先でも食べたいだけである。みなさんが「そうだね」と同意してくだされば、わたしは堂々とラッキーチェリー豆とともに外出できるのだ。
おやつをバッグにしのばせることなんて、きっと誰にでもあることだろう。
ラッキーチェリー豆だったら、相手に「え、何?」と質問させる間に食べる懐まで持ち込むことが可能だ。ただ、最初のわたしのように「えー、名前かわいいね」とボーっとした顔で言われてしまう可能性もある。
携帯するだけで、ラッキーも舞い込んでくるかもしれない。そんな前向きになれるお菓子だった。
通販でも買えるので、みなさんもぜひ食べてみてほしい。