もし薬とアルコールを一緒に飲むと一体どうなってしまうのか?

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風邪薬など多くの薬の注意書きには「アルコールと一緒に摂取しないでください」と書かれているので、飲酒が好きな人や晩酌が習慣だという人は注意が必要です。薬を飲むために飲酒を控えなければならない時などにふと頭をよぎる、「もしアルコールと薬を一緒に飲んだらどうなるんだろう」という疑問に、薬学の専門家が答えました。

Drinking alcohol this Christmas and New Year? These medicines really don’t mix
https://theconversation.com/drinking-alcohol-this-christmas-and-new-year-these-medicines-really-dont-mix-196646

オーストラリア・シドニー大学の薬学者であるニール・ウィート氏とジェシカ・ペース氏によると、薬を飲むと胃から肝臓に運ばれて、そこで代謝されたり分解されたりした後で血流に乗るとのこと。そのため、薬は肝臓で代謝されることを前提とした用量で処方されます。

同様にアルコールも肝臓で分解されるため、薬の服用と同時にアルコールを摂取すると薬の代謝量に影響が出ます。例えば、一部の薬は代謝量が増えるので十分な量の成分が血流に到達せず、期待した効果が得られなくなります。逆に、薬の代謝が低下すると想定より多くの成分が血に流れ込むので、過剰摂取になる危険性があります。


薬とアルコールを同時に摂取した際に起きる問題を、ウィート氏らは次の4つにまとめました。

◆1:薬+アルコール=眠気、昏睡、死
飲む量にもよりますが、アルコールは中枢神経を抑制する作用をもたらします。そのため、中枢神経を抑制して覚醒や興奮を抑える薬と一緒に飲むと相加効果、つまり2つの物質の作用が足し合わされた効果が現れて、余計に眠くなったり呼吸や心拍が鈍くなったりするほか、ひどい場合は昏睡(こんすい)状態に陥り死に至る場合もあるとのこと。

このようなケースで特に注意すべき薬は、うつ病、不安神経症、統合失調症、痛み、不眠症などの睡眠障害、アレルギー、かぜやインフルエンザに効く薬です。これらの病気や症状のための薬とアルコールを一緒に飲むことは控えた方がいいと、ウィート氏らは述べました。

◆2:薬+アルコール=より強力な作用
薬の中には、アルコールと混ざることで効果が高まるものがあります。そのため、例えば睡眠導入剤のゾルピデムは、アルコールと一緒に飲んではいけないとされています。

ゾルピデムはごくまれに睡眠中の奇妙な行動、例えば夢遊病と呼ばれている睡眠時遊行症、寝ているときに起き出してものを食べてしまう睡眠関連摂食障害、寝ながら自動車を運転し始めてしまう夢遊病運転などの副作用が出ることがありますが、特にアルコールと一緒に飲むとこの副作用が起きやすくなってしまいます。


◆3:薬+クラフトビール=高血圧
薬の中には特定の種類のアルコール飲料としか相互作用しないものもあります。そのアルコールとは、ベルギービールや各地の地ビール、自家製ビールなどのいわゆるクラフトビールや、一部のワインなどです。

これらのアルコール飲料には高血圧発作の原因となるチラミンという物質が含まれていますが、チラミンは自然界に広く存在する物質で、普通は体内で分解されてしまうので何の害も及ぼしません。

しかし、モノアミン酸化酵素阻害薬という種類の薬は体内でチラミンが分解されるのを妨げるため、チラミンの濃度が上昇して血圧が危険なほど高くなる危険性があるとのこと。

モノアミン酸化酵素阻害薬の例としては、フェネルジン、トラニルシプロミン、モクロベミドといったうつ病の薬や、抗生物質のリネゾリド、パーキンソン病の薬のセレギリン、抗がん剤のプロカルバジンなどがあります。


◆4:同時に飲まなくても影響が出るケースもある
薬がアルコールの影響を受けるだけでなく、アルコールと薬が相互作用を起こす場合もあります。症状としては、吐き気や嘔吐(おうと)、顔の紅潮や首の赤らみ、息切れ、めまい、動悸(どうき)、血圧の低下などです。

こうした現象は、治療をやめた後でアルコールを飲んだ際に起きることもあります。例えば、細菌や原虫への感染の治療に用いられるメトロニダゾールを使っている場合は、服用中だけでなく服用をやめた後も、最低24時間はアルコールを控えなければならないとのこと。

アルコールが体内で薬の成分を変化させるケースとしては、乾癬(かんせん)といった皮膚疾患などの治療に用いられるアシトレチンが挙げられます。アシトレチンを服用すると、体外に排出される前にエトレチナートという別の成分に変化しますが、アルコールを摂取すると体内のエトレチナートの量が増加してしまいます。エトレチナートは出生異常を引き起こす危険性があるため、特に妊娠を考えている女性は、薬の服用をやめた後2カ月間はアルコールを避ける必要があるそうです。


このように、アルコールとの同時摂取により重大なリスクが生じる薬がある一方で、「お酒と一緒に飲んではいけない」との俗説に反して一緒に摂取しても問題ない薬もあります。

例えば、アルコールは避妊ピルの効果には直接影響しないので、一般的にピルとアルコールは一緒に使っても安全とのこと。ただし、我を忘れてしまうほど飲酒してしまうとピルの定期的な服用を忘れてしまうおそれがあるほか、飲み過ぎて胃の中身と一緒にピルを吐いてしまうと、計画外の妊娠のリスクが高まるので注意が必要です。

なお、避妊薬に含まれているホルモンはアルコールに対する反応にも影響を与えるので、より早く酔いが回って、より長く酔っ払うという思わぬ効果もあるそうです。

また、抗生物質もアルコールと一緒に飲んではいけないと言われることがありますが、これはメトロニダゾールとリネゾリドに限定されます。そのため、一般的に抗生物質とアルコールを同時に摂取しても問題ないとのこと。ただし、抗生物質もアルコールも胃や体に負担をかけるので、抗生物質を飲まなければならないような病気の時は飲酒を控えた方がいいと、ウィート氏らはアドバイスしました。

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