男性より女性の方が夜勤で体内時計が乱れてもメタボになりにくいという研究結果

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人間の体内は約1日周期の体内時計(概日リズム)によって調節されていますが、徹夜や交代勤務などで睡眠サイクルが乱れてしまうと概日リズムが混乱し、心身にさまざまな悪影響が出ることがわかっています。新たな研究では、「女性は男性よりも概日リズムの乱れから回復する能力が高い」ことが示されました。

Sexual dimorphism in the response to chronic circadian misalignment on a high-fat diet | Science Translational Medicine
https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abo2022


Women appear to be more resilient to body clock disruptions than men – new research
https://theconversation.com/women-appear-to-be-more-resilient-to-body-clock-disruptions-than-men-new-research-205713

人間の概日リズムが混乱する要因にはさまざまなものがありますが、最も一般的なものの1つが日勤と夜勤が定期的に入れ替わる交代勤務です。看護師や警察官、工場労働者、24時間営業の飲食店従業員など、昼勤と夜勤が混在する生活を送る人々は、概日リズムが睡眠を指示している時に起きていることが強制され、逆に概日リズムが起きるように指示している時に眠らなくてはなりません。

しかし、過去の研究では、こうした概日リズムに反した生活を続けている人は、肥満に高血糖や高血圧などの症状が複合したメタボリックシンドロームをはじめとする健康上のリスクを抱えやすいことが示唆されています。メタボリックシンドロームは糖尿病や心臓病、脳卒中などのリスクを高めるため、深刻な公衆衛生上の問題といえます。


そこでアメリカ・ペンシルベニア大学の研究チームは、マウスの環境を操作して交代勤務する人間と同じように夜間と日中のサイクルを乱し、概日リズムの混乱がオスのマウスとメスのマウスにどう影響するのかを調べました。

実験の結果、メスのマウスはオスのマウスよりも概日リズムの混乱に対する回復力が高く、高脂肪のエサを食べさせた場合でも心血管代謝への影響が少ないことが判明しました。オスのマウスは概日リズムの混乱に適応するのが困難であり、回し車で運動する時間にも一貫性がなくなってしまったとのことです。

研究チームは、マウスの活動だけでなく肝臓の概日リズムを調節する時計遺伝子に対する影響についても分析しました。すると、オスとメスのいずれにおいても、概日リズムが乱されても肝臓の主要な時計遺伝子は発現し続けることが判明。しかし、時計遺伝子の制御下で代謝を維持するより広範な遺伝子群においては、オスのマウスだと周期的な活動がなくなってしまったのに対し、メスのマウスでは周期的な活動が維持され続けました。

さらに、マウスの腸内細菌を調査したところ、オスのマウスでは人間の糖尿病患者によく見られる特定の細菌が有意に増加したことも判明。一方で、やはりメスのマウスでは概日リズムの乱れにもかかわらず、腸内細菌があまり変化していなかったと報告されています。一連の研究結果はすべて、メスのマウスの方がオスのマウスよりも概日リズムの乱れに対する回復力があることを示唆しています。


もちろん、マウスと人間の体には多くの違いがあるため、マウスの研究結果をそのまま人間に転用することはできません。そこで研究チームは、長期的な健康データを収集したUKバイオバンクに着目し、交代勤務歴のある9万人以上の健康記録やウェアラブルデバイスからのデータなどをデータを分析しました。

分析の結果、交代勤務していた人は男女ともにメタボリックシンドロームの発生率が高かったものの、やはり男性と比較して女性の交代制勤務者は、メタボリックシンドロームの発生率が大幅に低いことがわかりました。つまり、人間でも女性の方が男性よりも概日リズムの乱れに対する回復力が強く、有害な影響をある程度軽減している可能性が示唆されたというわけです。


今回の研究結果が関係するのは交代勤務をしている人だけではなく、すべての人々にとって重要な意味があります。たとえば、「休日に夜更かししたせいで月曜日の朝に起きるのが難しい」といった社会的時差ぼけも概日リズムの乱れの一種であり、積み重なるにつれて人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があります

女性の方が男性よりも概日リズムの混乱に強い可能性があるということは、男性が交代勤務の影響で糖尿病や高血圧になりやすいという知見を補強するものです。これにより、健康的なシフト勤務スケジュールの設計など、概日リズムの混乱による悪影響を軽減するより良い戦略につながる可能性があるとのことです。

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