Google 史上最大の解雇、同社は販売パートナーをますます重視

DIGIDAY

Googleの親会社アルファベット(Alphabet)は1月20日、1万2000人の解雇を行なう予定であることを認めた。

報道によればこれは、同社史上最大の人員削減であり、この動きは、Googleが大口顧客に対する姿勢を徐々に変更していく未来を暗示していると、広告主らは見ている。

「AI主導の方向転換」

何週も前から流れていた解雇に関する憶測が事実であることをアルファベットは認め、全従業員の6%に上る人員を削減し、「弊社が直面している(中略)経済的現実」に対応すると、同社CEOサンダー・ピチャイ氏は話した。

ブログ投稿の中で氏は、こうした措置はいわゆるビッグテックの他社らが実施した同様の削減と変わらぬものであり、「弊社のフォーカスをより明確にし、コストベースを見直し、才能と資本を最優先事項に投じるための」施策と、主張している。

DIGIDAYはGoogleの広報に対し、「アルファベット本体、さまざまなプロダクトエリア、機能、レベル、および領域に及ぶ」今回の削減が広告業務に対して与える具体的影響に関する質問を送ったが、本記事の配信までに回答はなかった。

とはいえ、ピチャイ氏が上述の投稿の中で、アルファベットの投資優先度が「同社のAI主導型への方向転換」を見据えたものであり、それは「弊社の業務全体における画期的進歩に繋がっている」と、何度か触れている点は、注目に値する。

業界再編の最中におけるフォーカスの変更

1月20日になされた発表の何週も前から、複数の情報筋が米DIGIDAYに対し、Google広告(Google Ads)チーム内の事情通らは早くも昨年11月から解雇に備えていた、と話していた。

ある情報筋は、Googleの広告事業を牽引する者たちとの直接の会話を引き合いに出し、この件は2023年のCESの脇でおおっぴらに話題にされていたし、今回の削減のフォーカスは非効率性に、なかでもとりわけ、2021年の雇用熱の結果生じた余剰人員にある、と話した。

「この業界では、世界が1~2年でがらりと変わるし、多くはおそらく、巨大なバブル期に引き入れた人々を抱えているのだろう」と、同情報筋はコロナ禍の発生を受けて一気に伸びたテック企業勢の成長に言及した。「かなり良い給料をもらっていながら、2021年や2022年ほどは、売上にも純収益にも貢献していない人が相当数いるはずだ」。

投資家およびマスコミに対する最近のブリーフィングの中で、複数の株式アナリストがGoogleの人員削減を予想しており、とりわけ中小企業の広告支出が減少し、コストが高騰するなか、Googleは諸経費を見直すてこ入れを考えているに違いない、といった旨の発言をしていた。

2023年1月第三週前半、リヴィー・インベストメント・リサーチ(Livy Investment Research)が発表した注意書きの中で、人員削減はGoogleにしてみれば、最近の業績不振によって失った投資家の信頼を取り戻すための「手っ取り早い策」だと、アナリストらは指摘している――実際、1月20日の発表を受けて、同社の株価は3%上昇した。

Googleは販売パートナーのネットワーク構築に注力中

一方、メディア業界の複数の情報筋がDIGIDAYに語ったところによれば、Googleはここ数年、広告主に対し、公認販売パートナーからなるネットワークへの参加をますます強く勧めている。

2022年度は、その動きにかなりの強化が見られたと、情報筋の一部は話す。

数人の情報筋によれば、この戦略はGoogleが広告関連業務にかかる諸経費を削減し、SaaSとしての立ち位置を確立するのに役立つという――SaaSならば、メディアサービス企業であるよりも、ウォール街の投資家の間における評価が高まると思われるからだ。

そうした販売パートナー勢――たとえば、アクセンチュア・インタラクティブ(Accenture Interactive)、インキュベータ(Incubeta)、ジェリーフィッシュ(Jellyfish)、メディアモンクス(Media.Monks)、スマートリー・ドット・アイオー(Smartly.io)など――は、Googleの一連のマーケティングサービスを利用した広告キャンペーンの日々の運営において、メディアバイヤーに情報を提供している。

複数の情報筋がそれぞれ、1月20日の発表の前週にDIGIDAYの取材に応じ、今後の業務に支障を来さぬよう匿名を条件に、Googleのこの姿勢を異口同音に「アウトソーシング」と評した。

DIGIDAYは上記の企業らにコンタクトを取ったが、公式な返答は得られなかった。ただし、それら企業内の何人かの情報筋はDIGIDAYに対し、2023年度、Googleからの照会に顕著な伸びが期待されると、話した。

Googleが「あまり得意ではなかった」役割

複数の情報筋はまた、Googleはそうした企業を介して、誰もが知る有名広告主勢さえも引き込もうとしており、それはマージンをほぼ生まない労働集約型サービスとして機能できるサードパーティのエコシステムを始めようと考えているからだ、とも語った。

これは、協力を求めるブランドと直接契約を結んでいたこれまでのGoogleの姿勢とは大きく異なると、年間数千万ドル(数十億円)に上るメディア費を管理する、あるメディア幹部は指摘する。

複数の情報筋によれば、Googleの社員は依然、広告主に対する検索およびYouTubeの売り込みおよびそのサポートを続けている。だが、Googleマーケティングプラットフォームという、アドサーバー、デマンドサイドプラットフォーム、Googleアナリティクスといったアドテクオファリングを擁する傘下ユニットについては、現在、サードパーティ販売パートナーのサポートがなければ、広告主が使用するのは難しいという。

「Googleはいま、顧客ベースとの直接の関わりを断とうとしている(後略)。以前は、問題が生じれば、直接サポートしてもらえたし、それは実際、Googleマーケティングプラットフォームとの契約に含まれていたのだが」と、別のメディアバイイング部門の幹部は言い添える。

「私が思うに、Googleが目指しているのは、販売パートナー勢がサポートや問合せ、アドホックサービスのリクエストといった諸々のやり取りの多くを担ってくれる状態なのだろう。はっきり言って、どれもGoogleがあまり得意ではなかったことだ」。

Googleの姿勢の変化に広告主は

Googleによる広告主とのビジネスの進め方を直接知る別の情報筋によれば、複数の情報筋がこの2年でなおいっそう進んだと指摘するそうした変化は、Googleがいまや、たとえば支払の追跡といった経費のかさむ業務に煩わされなくて済むことを意味する、という。

「広告主の請求設定や30日間の請求期間の管理といった複雑な諸々はすべて、いまやそうしたパートナー企業らが行なっており、それらはこれまでGoogleにとって多大な金銭的負担になっていた」と、その情報筋は言い添える。

「Googleはいまや、自分たちのために働いてくれる少数のパートナーとやり取りするだけでいい」と同じ情報筋は説明し、そうしたパートナーが広告主やエージェンシーから支払を受け取り、手数料をGoogleに回していると語った。

ブランドのメディア業務を手助けするコンサルティング企業、TPAデジタル(TPA Digital)のUK業務を仕切るダン・ラーデン氏はDIGIDAYに対し、そうしたモデルはGoogleが思い描く企業としての立ち位置に即しているが、一部のマーケターを立腹させる可能性はあるという。

「私が思うに、Googleは以前から一貫して、テクノロジー企業と、あるいは少なくともテクノロジー主導型のサービスと認識されることを望んでいる。ただ、広告主にとっての一つの問題は、彼らがその狭間で身動きが取れなくなり、販売パートナーを介さなければならないエンタープライズグループソリューションの価値が理解し難くなることだ」。

[原文:Google is increasingly turning to resellers as it conducts the largest round of layoffs in its history

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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