「Apple Card」は、同社のApple Payで使用することを想定したAppleのクレジットカード・サービスです。このカードの発行元はゴールドマン・サックスで、同社のプラットフォーム・ソリューション事業の一部となっています。
しかし2019年に開始して以来、米国外への展開はなく、国内でも順調とはいえない状況です。さらに最新の報告では、ゴールドマン・サックスがこのサービスによって、合計30億ドル(約3,900億円)近い損失を出していると指摘されています。
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「Apple Card」で〝大損〟のゴールドマン・サックス
ゴールドマン・サックスは1月14日、Apple Cardを含む「プラットフォーム・ソリューション」事業群についてのレポートを開示しました。これによると、同社の消費者向けサービスは、2020年以降40億ドルの損失が見込まれ、Apple Cardはそのうちの10億ドル以上を占めています。
経済紙「Bloomberg」は、このプラットフォーム・ソリューション部門の厳しい状況を取り上げ、2022年の最初の9カ月間だけで、Apple Cardを含む事業で12億ドルを超える損失を計上したと指摘しました。
テックメディア「9to5Mac」によれば、2020年から2022年9月末までを振り返ると、これらの損失は30億ドルに達しているとのこと。さらに、2022年の第4四半期決算が含まれると、その数字は40億ドル近くになると予測しています。
40億ドルの損失のうち、どれだけがApple Cardに起因しているのか、正確には不明です。ただし「9to5Mac」が取り上げた情報筋の報告では、2021年の10億ドルの損失のほとんどはApple Cardに由来するとされています。また、2022年の20億ドルの損失は、ほとんどがApple CardとGreenSkyという他の同社事業に由来するとのことです。
これらを踏まえた上で「9to5Mac」は、詳細は不明なものの、ゴールドマン・サックスはApple Cardにおおよそ10~30億ドルを費やしたと指摘。損失の主な原因は、貸倒引当金(銀行が将来返済されないと予想される貸付金に対し、費用としてお金を積み立てること)によるものとされています。
また、別のテックメディア「Appleinsider」は、ゴールドマン・サックスがApple Cardをはじめとする消費者向けサービスの立ち上げにも、多額の資金を投じたと指摘しています。同メディアは2019年時点で、ゴールドマン・サックスはApple Cardの新規顧客1人を獲得するためにおよそ350ドル(約4.5万円)を費やしていると報告していました。
とはいえ、これはあくまでゴールドマン・サックスが被っている損失です。これを自社でやらずに、天下のゴールドマン・サックスに被せたAppleはさすが「時価総額最強」企業といったところでしょう。
「9to5Mac」はこの苦戦の理由について、すでにクレジットカード市場には多くの競合が存在することを指摘。競合には人気の小売店での5%還元などさまざまな特典がある中で、Apple CardはAppleでの購入と一部の小売店で3%、Apple Payでの購入で2%還元しているものの、その他ほとんどの購入では1%の還元率にとどまっています。Apple CardがiPhoneとの連携や強力なセキュリティ機能、年会費無料などの部分で優位に立っているのは間違いないものの、これらのインセンティブの弱さが欠点となっているようです。