今さら聞けない、会社員が知っておきたい「インボイス」の超ポイント (高山 弥生)

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最近、テレビCMや街中の広告でも「インボイス」という単語を見かけるようになりましたが、インボイスとは何でしょうか?

インボイスは英語で「請求書」という意味ですが、今、日本で「インボイス」というと、令和5年10月から新しいルールの下で発行される請求書や領収書のことを指しています。

主に事業の仕入れやフリーランスへの外注費などに関わってくる話であり、漫画家・声優などフリーランスが大多数を占めるエンタメ業界などが中心になり、反対表明したことが度々ニュースで取り上げられています。

ただ、世間の反応はいまひとつと言えます。それは、サラリーマンが多数を占める日本国民にとってあまり影響がないと考えられているためだと思われます。

では、インボイス制度は本当に会社員には関係がない話なのでしょうか? 実は会社員もインボイスを知らないと、会社での指示内容や動向を理解できず困ってしまう場合があります。

会社員にとってどんな場面でインボイスの知識が必要になるのか、そもそもインボイスとは何なのか。税理士の立場から考えてみたいと思います。

metamorworks/iStock

会社員がインボイスを知らないと困る場面

会社の業務として、インボイスの知識が必要な場面とはどのようなときでしょうか? ここでは例を2つ挙げてみます。

■ 例1

営業マンのAさんは、得意先に年始のご挨拶に向かう途中、手土産を購入しました。購入した店は小さな和菓子店で、有名ではありませんが味は良く、差し上げた人は喜んでくれます。

帰社後、経理担当者にレシートを持っていき、経費精算をお願いすると、「インボイスじゃないと困るんですよね。」と突き返されてしまいました。インボイスがわからないAさんはどうしていいかわかりません。

■ 例2

ラジオ局で働いているBさん。いつも一緒に制作してくれている構成作家さんに来年度も依頼をしようと思っていましたが、会社から「相手方からインボイスをもらえるのか? もらえない相手とは今後取引はやめるように」と言われてしまいました。

今までのやり方をよく知ってくれていて、あうんの呼吸でやってきている構成作家さんなのに……。そもそも、インボイスって何だろう? あの構成作家さんからはインボイスをもらえるんだろうか?

こういったときに「インボイスって何ですか?」と聞けば「知らないの?」とあきれ顔をされてしまうかもしれませんね。ただ、インボイスは少し複雑な制度なので、自分で調べても何がポイントになるのか分かりづらいかもしれません。

ここでは最低限、インボイスで押さえておきたいポイントを絞って紹介します。

インボイスとは

冒頭でお伝えしたように、いま日本で「インボイス」というと、令和5年10月から新しいルールの下で発行される請求書や領収書のことを指します。

インボイス制度では、インボイスを発行できるのはインボイス発行事業者として税務署に登録申請した課税事業者だけです。

受け取った請求書や領収書、レシートなどがインボイスかどうかは「登録番号」の記載があるかどうかでわかります。「T+13桁の数字の固有番号」が登録番号です(図1の7番)。

(図1:筆者作成)

インボイスの場合とそうでない場合、何が変わるのか?

では、具体的な数字を想定して、もらった請求書がインボイスの場合とそうでない場合とでどう違ってくるのか確認してみましょう。

【もらった請求書がインボイスなら】

あるお店がバッグを11万円で売ったとします。うち消費税額は1万円です。このバッグは8万8千円で仕入れたものです。内訳は原価8万円、消費税8千円です。お店は、仕入先からインボイスをもらえたときだけ、売り上げたときの消費税1万円から仕入先に支払った消費税8千円を差し引くことができます。つまり、お店が国に納める消費税は2千円です。

【もらった請求書がインボイスでないと】

仕入先がインボイスを発行できない事業者(免税事業者)の場合、仕入先に消費税として支払ったつもりの8千円は消費税として払ったとは認められず、バッグ購入者から消費税として受け取った1万円をまるまる消費税として納税しなければなりません。

消費税として認められない8千円は、原価となります。インボイスをもらえた場合、税抜き8万円で仕入れたバッグを10万円で売ったわけですから利益は2万円ですが、インボイスをもらえなかった場合、原価は8万8千円となり、利益は1万2千円となってしまうのです。

(図2:筆者作成)

インボイスがもらえないと、利益が減って、消費税の納税額が増える。経済合理性から考えれば「インボイスじゃないと困る」「もらえない相手とは今後取引はやめるように」というセリフが会社側からどうして出てくるのか分かります。

会社員であっても会社の指示内容や動向を理解するため、インボイスの知識を持っているに越したことはありません。「インボイス」という単語がニュースなどで流れてきたら、少し耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

高山 弥生 税理士 ベンチャーサポートグループ所属税理士
一般企業に就職後、税理士事務所に転職。「顧客にとって税目はない」をモットーに、専門用語をなるべく使わない、わかりやすいホンネトークが好評。税理士事務所の入所当初、知識不足で苦しんだ自らの経験をもとに、「高山先生の若手スタッフシリーズ」を出版している。インボイス関連では『消費税&インボイスがざっくりわかる本』『インボイスの気になる点がサクッとわかる本』がある。 URL https://vs-group.jp/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年1月18日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。