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D2Cアパレルブランドのアンタックイット(Untuckit)は、Covid-19に関連する課題に何年間も取り組んだのちに業績を回復し、過去最高の売上を記録。収益性のある企業として2023年に踏み出そうとしている。
2011年に創設されたアンタックイットは、パンデミックにより従来のオフィス用ウェアへの需要が失速したことにより、2020年に厳しい道を歩むことになった。同社は春先には海外展開の最中だったが、一転して90近い実店舗の一時閉店に踏み切った。それでも、身体にフィットしたボタンダウンシャツを主力商品とする同社は、ビジネスとしての同社戦略を貫き、「当社のブランドの理念に大きな改修は必要ない」と決定したと、CEOのアーロン・サナンドレス氏は2021年2月に米モダンリテールに語った。
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月日が経つにつれて、同社はオンラインビジネスに注力して、カーブサイド引き取りを開始し、顧客の予約を受け入れて店舗を再開した。同社は現在、比類のない成長を実現している。同社は11月下旬、過去11年間で最高のブラックフライデー(11月25日金曜日)とサイバーマンデー(11月28日月曜日)を達成した。そのあとの12月11日と12日の日曜日と月曜日も、ブラックフライデー以外で同社のもっとも重要な日でもあった。2022年初期に黒字化を達成した同社は、収益で2019年の2億ドル(約272億円)を超え、過去でもっとも成功した年となりそうだ。
共同創設者のクリス・リッコボノ氏は、次のように米モダンリテールに語った。「当社は常に、アンタックイットこそパンデミック後に作り上げられる最高の商品だと考えてきた。スウェットシャツ、ジョガーパンツ、Tシャツを着ている人々は、糊付けした白のタックインシャツに戻ることを望んでいないからだ。それでも、オフィスでの見た目は気にしなければならない。では、何をするだろうか。これらの人々はアンタックイットの商品を買い求めた。当社は、今後何年にもわたるカジュアル化に応じたポジションを取り続けると、私は考えている。当社は絶好の場所にいるといえるだろう」。
リッコボノ氏は、同社の記録的な1年、実店舗を重視することを選んだ理由、および2023年に向けた計画について、米モダンリテールに語った。以下の対談内容は簡素さと明瞭さのため、編集を加えている。
◆ ◆ ◆
――2022年度は過去最高益を達成する見込みだ。その原因は何だと思うか?
当社の成長は驚くべきものだった。当社は、年間50%増で推移し、2019年を通してもっとも急速に成長した男性向けアパレルブランドだったと思う。その後にCovid-19が流行し、当社は大きく後退することを余儀なくされた。そして、2021年には多少回復した。もし2020年と2021年がなければ、当社は現在の場所よりはるか先に進んでいたろうが、将来的に同じレベルの成長に戻れないと思う根拠は何もない。そして現在、それが見えはじめている。このため、2023年および2024年について大きな期待を持っている。
当社はパンデミックがはじまるちょうど3〜4カ月前に、英国での展開を開始したところだった。そして、欧州全体、さらには南米まで展開を計画していた。我々は、これらの計画を再開するつもりだ。また、女性向けビジネスは11月、前年比で100%も成長した。これは本格的なビジネスになりつつあり、これから力を注いでいく。
さらに重要な点として、昔は当社の商品の100%がボタンダウンのシャツだったが、その後60%に低下し、今では40%だ。パンツはケタ違いに成長し、ポロシャツやセーターも同様だ。私は、誰もがアンタックイットのことを、タックインすることなく着るようにデザインされたシャツだと考えていることを知っている。当社はシャツで大規模なビジネスを行っているが、顧客はシャツ以外のすべてのものを当社から購入している。
当社のAOV(平均注文金額)は、過去最高のレベルだ。すべての指標が優れた値を示している。CAC(顧客獲得コスト)は2022年に大幅に減少し、2020年と2021年に多くの損失を出したことから一転して、大きな利益をあげた。
我々は、もっとも重要なのは何より収益性であることを理解しており、非常に迅速にそれを実現することができた。それによって、現在の当社は急速に成長しており、利益を上げている。アンタックイットにとって創業以来最高にエキサイティングな時期だ。
――女性向けビジネスの成長やグローバル展開についての話があったが、2023年の全体的な成長計画はどのようなものか?
ここ数年は、Covid-19の影響でできていなかったことだが、2022年は非常に多くの新規顧客を獲得することができた。このまま自然な成長を遂げていくのだろうと考えている。そして、2023年にはさらに多くの店舗を開設する予定だ。2019年には35店舗を出店したが、その後は計画が中断していた。その計画を再開する。
当社は、卸売を行っていない。一方、当社の競合他社であるボノボ(Bonobos)や、オールバーズ(Allbirds)、トミージョン(Tommy John)などは膨大な量の卸売を行っている。我々も今は全く行っていないが、将来的には多少の卸売を検討するかもしれない。当社はある意味、卸売を拒否した。これは、自分たちで商品をマーケティングでき、自分たちで顧客データを保有することを望んだからだ。しかし、2023年から2024年にかけて、さらに大きな成長を実現するため、卸売も検討すべき方針のひとつであると考えている。
――実店舗でのプレゼンスを確立する戦略はどのようなものか? どこに店舗を設置するかを決定するときに何を考慮するか?
主要な地域にはすべて出店している。現在当社は、売上を共食いしない場所に店舗を開設したいと考えている。そのため、オンライン上で大きなプレゼンスを示していないと思われる地域や、一定距離内に我々の店舗が存在しないような、遠隔地も検討している。当社の店舗の約95%以上は利益を上げている。つまり、どれだけの収益を上げられるかに店の規模は関係しない。当社が店舗を開設すれば、利益を上げられる。
一部の人々は、「これ以上店舗を開設するなんて、正気じゃない」と言うかもしれない。しかし、これは当社にとってさらに収益性が大きくなることだ。我々は無駄のない経営を行う。当社には優れたプロセスがある。顧客がショッピングをしやすくするものだ。我々は店舗を愛している。パンデミックの禍中で破産しかけたとき、「店舗を持たなければよかったと思っているか?」と聞枯れたが、店舗を持たずにビジネスを2億ドル(約272億円)、3億ドル(約408億円)以上に拡大できるとは思わない。だから、我々は店舗を愛しているのだ。
――多くのアパレル企業は2022年、手持ちの在庫が多すぎるために苦闘した。アンタックイットもこの問題に取り組んでいたのか?
いや、当社の在庫の状況は理想的だった。2022年は、成長をコントロールすることができた。注文を行うときは、2021年に2022年分を発注する。好転するのが2022年になるのか2023年になるのかは誰もわからなかったので、十分な注意を払った。多くの的確な決定を行ったと私は考えており、それによって当社は黒字を実現したのだと思う。当社は、これまででもっとも理想的な在庫状況を達成することができた。今後も成長を続け、目標を超える成果を達成するために十分な在庫を保有しているが、過剰な在庫は保有していない。
――2023年のマーケティング戦略はどのようなものになるのか?
当社は常に、デジタル以外のさまざまな部分で他社より多くのマーケティングを行ってきた。テレビは、GoogleやFacebookを組み合わせることで、より効果的になる。ラジオも多用している。さらに機内誌も活用している。
要するに、当社は非常に理想的なマーケティングの配合を行っている。それがなぜ重要かというと、多くの企業において、Facebookが非常に困難で高価なものになっても、ほかの分野に移行する経験がないといったことが起こる。しかし当社は、Facebookが困難になればテレビに移行するだけだ。そしてさまざまなメディアを代わる代わる利用する。これが我々の助けになってきた。
JULIA WALDOW(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Untuckit