人間の髪の毛よりも薄く軽量であらゆる表面に接着できる太陽電池が開発される

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太陽光発電に用いる太陽電池は主にガラスやシリコンから作られており、サイズや重量が大きいことが問題とされています。しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者であるウラジミール・ブロヴィッチ氏らの研究チームは、あらゆる表面に接着できる、超薄型で軽量の太陽電池を開発し、この問題を解決しています。

Printed Organic Photovoltaic Modules on Transferable Ultra‐thin Substrates as Additive Power Sources – Saravanapavanantham – Small Methods – Wiley Online Library
https://doi.org/10.1002/smtd.202200940

Paper-Thin Solar Makes Any Surface Photovoltaic – IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/thin-film-solar-panels

ブロヴィッチ氏は「これまでの太陽光発電は、従来のシリコン製太陽電池における重量の問題で発展が妨げられています」と述べています。また、有機薄膜太陽電池を使用した太陽電池は、軽量かつ安価だとされていますが、ガラス板に搭載する必要があり、最終的にはシリコン製の太陽電池と同等の重量になるとのこと。


一方でブロヴィッチ氏は「プラスチックのフィルム上に有機薄膜太陽電池を作成し、太陽電池の重量を減らすことは、従来よりも巨大なソーラーパネルの製造や、設置費用の低価格化につながると考えています」と述べています。しかし、これまでに開発された有機薄膜太陽電池は壊れやすく、実用化にはほど遠い性能だったとのこと。

そこで、ブロヴィッチ氏らの研究チームは、電気絶縁性があり、湿気や腐食から保護することができるパリレンの層やさまざまな素材の印刷可能なインクでプラスチックシートをコーティングすることで、人間の髪の毛よりも薄い約2~3マイクロメートルの厚さで高効率な太陽電池を作成することに成功しました。


研究チームが完成した太陽電池をパリレン基板から市販の布に転写させ、電力密度を測定したところ、電力密度は370W/kgで、重量は1平方メートルあたり0.1kgでした。一方、従来のシリコン製太陽電池の電力密度は20W/kgで重量は1平方メートルあたり10.7kg、ガラス板に搭載した太陽電池の電力密度は13W/kgで重量は1平方メートルあたり14kgです。

検証の結果、ブロヴィッチ氏らの研究チームが作成した太陽電池は従来の太陽電池と比較して100分の1の重量で、約18倍の電力を発生することが示されました。

研究チームが作成した太陽電池のサイズは現状10×10cmのサイズですが、大型化が容易とされており、ブロヴィッチ氏は「私たちが実証したものはもっと大きくすることができます。太陽電池の大型化を妨げるものは何もありません」と述べています。

研究チームは今後、この太陽電池の大型化や実用化に向けた改良などを計画しています。将来的には太陽光発電のさらなる普及や、ボートの帆やテントなどにラミネートすることで、遠隔地や災害救援活動中の電力供給に役立つ可能性があると、科学系ニュースサイトのIEEE Spectrumは述べています。

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