2022年、考古学上の不思議な発見まとめ

GIZMODO

長い長い人類の歴史を、この1年を通じて振り返ってみる。

考古学上の発見に関して、今年のベスト!とか考えるのってちょっと不思議な感じです。この記事の中には、100年くらい前になくなったものを見つけたって話もあれば、何千年も昔の話もあります。ともあれ、何もなければ「昔」とひと括りになってる歴史が、考古学者の努力とさまざまなめぐり合わせによって、再び日の目を見られるのは素敵なことですね。

そんなわけで2022年にインパクトの大きかった発見、または奇妙な、はたまた楽しい発見を、以下にまとめていきます。

北米最大の洞窟壁画

221221_2022archaeology2
絵が描かれた洞窟に座る、論文共著者のStephen Alvarez氏。(Image: A. Cressler)

米国アラバマ州にある石灰岩の洞窟で、天井の泥に描かれた絵が見つかりました。絵らしきものは複数あり、人間のような形もあります。洞窟の中で採取された炭を分析した結果、その推定年代は紀元後2〜5世紀頃のものと、7〜10世紀頃のものがありました。なのでこの洞窟の中の絵は、長い時代を隔ててちびちびと描かれたものなのかもしれません。

221221_2022archaeology3-1
盛装した人物らしきもの。頭は四角くて、足は一本。(Image: A. Cressler)

2700年前のトイレに残った寄生虫

221221_2022archaeology4
古代のトイレってこんな風。(Image: Yoli Schwartz, The Israel Antiquities Authority.)

エルサレム郊外の3000年近く前の豪邸からは、多分当時の住人が絶対に見られたくなかったものが発見されました。鞭(べん)虫や回虫、条虫、ぎょう虫といった腸内寄生虫の卵が、当時のトイレらしきものから出てきたんです。上の画像がそのトイレらしきもの、穴の空いた大きめの石です。現代人も衛生に気をつけて、トイレもよく掃除しておかないと、西暦5000年頃にお腹の虫を発掘されちゃうかもしれません。

南極の海に沈んだエンデュアランス号

イギリスの探検家・アーネスト・シャクルトン氏が率い、1915年に沈没した南極探検船のエンデュアランス号が発見されました。沈没したといっても、乗組員が船を降りて氷の上でキャンプ生活を送り、ボートで地上生還を遂げた奇跡の船です。船のほうも「Endurance」(「忍耐」とか「持久力」)という名前の通り、100年以上も水深約1万フィートの海に沈んでいたのに、当時の姿をほぼそのまま保っていました。

バオバブの彫刻

221221_2022archaeology6
オーストラリアのタナミ砂漠にあるバオバブに、ヘビの彫刻が。(Image: Darrell Lewis)

オーストラリア北部のバオバブの木12本から、数世紀前の彫刻が見つかりました。彫りつけられた正確な時期は不明ですが、オーストラリアの大学研究者や先住民族の人たちによるチームが分析した結果、この絵は土着の口頭伝承に関連するらしいことがわかってきました。

ノートルダム寺院の下の鉛の棺

221221_2022archaeology7-1
ノートルダム寺院の床下から見つかった鉛の棺。(Image: JULIEN DE ROSA/AFP – Getty Images)

2019年に火災が起きたノートルダム寺院の復旧作業の過程で、床下からふたつの鉛の棺が発見されました。推定年代は700年前で、ひとつは教会の指導者、ひとつは馬に乗る貴族のものと考えられています。

ツタンカーメンの短剣の出どころ

221221_2022archaeology8
上の2枚がツタンカーメンの短剣の両サイド。一番下は1925年に撮影されたもの。(Image: T. Matsui et al./Meteorit. Planet. Sci.)

ツタンカーメンの墓から発掘された短剣をX線で見ると、そこには隕石由来の金属が使われてます。それは以前からわかってたんですが、2022年には千葉工業大学の研究チームが、短剣の素材の化学分析を行いました。さらに古代の文献調査も総合した結果、この剣は他国の統治者からツタンカーメンの祖父に贈られたものらしい、ことがわかってきました

「シラミが取れますように」のカナン文字

221221_2022archaeology9
象牙のくしに記されたカナン文字。(Image: Dafna Gazit, Israel Antiquities Authority)

カナン人が書いたと見られる一文が、目の細かい象牙製のくしから見つかりました。エルサレム・ヘブライ大学のYosef Garfinkel氏らの論文によれば、くしに書かれた文は「この牙が髪とひげからシラミを取り去りますように」というもの。なので、このくしの目的がシラミ取りだったらしいことも同時にわかった次第です。

串刺しになった人間の脊椎骨

221221_2022archaeology11
(Image: J. L. Bongers et al., 2022/Antiquity)

ペルー南部では、人間の脊椎骨が串刺しになった杭192本が発見されました。串刺しになった時期は、西暦1450年から1650年の間と推定されています。発掘した英国ケンブリッジ大学のチームによれば、植民地時代だった当時は墓荒らしが横行していて、串刺しの骨があったのもそんな荒らされた墓の近くであることが多かったのです。なのでこの串刺しは、死者の体を復元する試みだったのではないかと考えられています。

最古の人類の化石は、もっと最古だった

221221_2022archaeology12
(Image: Wikimedia Commons)

エチオピアのオモ・キビシュという地域で見つかった化石は、以前から世界最古の人類の化石だとされていました。が、英国ケンブリッジ大学のClive Oppenheimer氏率いるチームが新たに行った分析で、この化石は今まで考えられていたよりさらに古い23万3000年前のものだという推定結果が出ました。その数字は、1960年代にこの化石が見つかった場所の火山灰の層の年代推定をしなおしたことで出てきたものでした。

十字軍時代の手りゅう弾らしきもの

221221_2022archaeology13
エルサレムの旧市街。(Image: David Silverman -Getty Images)

エルサレムのアルメニア人地区で1960年代に見つかった陶器を再分析したところ、その陶器の中には爆弾に使う素材が入っていたらしいことがわかりました。なのでこの陶器は、十字軍時代の手りゅう弾だったのではないか考えられています

人が殺したマンモスの化石

221221_2022archaeology14
ニューメキシコ州で見つかったマンモスの骨。(Image: Timothy Rowe / The University of Texas at Austin)

米国ニューメキシコ州で見つかった約3万7000年前のマンモスからは、北米の人類史の一端が明らかになりました。この骨には人間に屠殺されたことを示す痕跡があり、つまり北米の南西部には今まで考えられていたよりも早くから人間がいたことになります。

宇宙線、人類が米大陸に到達した経路を示唆

221221_2022archaeology15
氷河が運んだ丸石。(Image: Ian Watkinson/EGU)

ベーリング地峡から北米のグレートプレーンズに抜ける無氷回廊は、従来の説よりも前に開けていたようだと発表されました。米国オレゴン州立大学などの研究チームは、北米の氷床地域由来の丸石が宇宙線にどれくらい当たってきたかを計測することで、氷床が後退した時期を推定したのです。もし彼らの説が正しければ、米大陸に初めて人類が到達したのは、太平洋沿岸経由だったことが示唆されます。

ポンペイが消えた日の遺物

221221_2022archaeology16
家屋に残されていた皿。(Image: Courtesy of the Archaeological Park of Pompeii)

紀元後79年に火山に埋もれたイタリアの古代都市・ポンペイの発掘場所Regio Vからは、発見が相次いでいます。2021年の発掘調査では、当時のバー兼コンビニ的な存在「テルモポリウム」が発見されました。さらに今年8月、ポンペイの考古学チームは、テルモポリウムと同じ地域にある家屋からいくつか家具付きの部屋を発見したと発表しました。そこには皿やテーブル板といった、当時の中流階級の暮らしぶりを感じさせるモノたちがいくつも残っていました。

タイトルとURLをコピーしました