購買体験を最大化するAmazon広告のフルファネル活用とは?:電通デジタルコマース部門の取り組み

DIGIDAY

コロナ禍の影響を受け、顧客の購買行動が大きく変わろうとしている。オンラインショッピングやオンラインコミュニケーションが生活に浸透する一方で、リアル店舗が苦戦している。

とはいえ、人の生活がリアルである以上、すべての購買がオンラインでまかなえるようにはならない。現在は、オンラインとオフラインがデジタルによって融合し、それぞれのチャネルに求められる役割が変化している過渡期にある。

そうした状況で多くの企業・ブランドが顧客との新たなコミュニケーションを模索するなか、「もはやECだけ、リテールだけ、と個別最適化するだけでは、顧客の要求には応えられない」と語るのは、電通デジタル コマース部門の及川真樹氏だ。「オンオフすべての購買接点を統合し、コマース分野でデジタルテクノロジーを駆使してプロセスの再構築を進め、フルファネルで顧客体験の向上を目指していく必要があります」。

フルファネルで企業・ブランドのコマース事業を支援する電通デジタル コマース部門が注力するチャネルのひとつがAmazonだ。Amazonには、出品者がAmazon内に出稿できるスポンサー広告だけでなく、Amazon出品者以外がAmazonカスタマーに向けてAmazon内外のWebサイトやアプリに配信できるAmazon DSP広告があり、いまや「買い場」だけでなく、「商品・サービス・ブランドとの出会いの場」としても存在感を増している。

それらAmazon広告を活用し、購買体験の価値を最大化する電通デジタルの強みはどこにあるのか? Amazon DSP広告の活用事例とともに迫る。

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Amazon広告による戦略を立案・実施する「Amazonルーム」

――及川さん、園部さんが所属されている「Amazonルーム」では、どのような業務を行っていますか?

及川真樹氏(以下、及川):「Amazonルーム」は、電通デジタルの「コマース部門」にある1つの事業部で、Amazon広告を活用したコマース事業支援に特化している専門チームです。具体的な取り組みは、以下の2点です。

    ①Amazonに出品しているクライアント企業の売上拡大を支援する
    ②Amazon内の売上拡大以外の部分も含めた、マーケティング課題の解決

①のAmazon売上拡大支援も多くのクライアントさまのサポートをさせていただいていますが、最近は②の事例もとても多く増えてきている状況です。

――②はAmazonに出品していないクライアント企業が対象ということなのでしょうか?

及川:そうです。Amazon広告は、内部広告と外部広告の大きく2種類があります。前者はAmazon内にのみ掲載される広告。後者はAmazon内だけでなく、Amazon以外の提携サイトやアプリの広告枠にも掲載されるため、より多種多様なマーケティング課題の解決に活用することもできる汎用性の高い広告です。

Amazon広告にはさまざまな種類がありますが、②に関するクライアント企業の場合、Amazon DSPと予約型広告、インストリーム型動画広告を中心に活用することになります。

――Amazon広告というのは、Amazon内の商品の認知、売上向上のための広告というイメージが強いので、やはりAmazonに出品していない企業が活用するシーンがイメージしにくいのですが、どういった形で活用されているのでしょうか?

及川:「買う場」としてのイメージが強いAmazonですが、実は購買意欲が高く、情報収集を目的としたユーザーが集まる「知る場」としての側面も強く持っています。こうしたユーザー特性を踏まえれば、Amazonに出品していない企業(ノンエンデミックブランド)、特にアッパーファネル、ミドルファネル領域の課題を解決したい企業にとって、Amazon広告は非常に魅力的なコミュニケーション手段です。

Amazon広告はサードパーティークッキーに依存しない方法で精度の高いオーディエンスリーチを実現することが可能です。サードパーティクッキー廃止に備え、それに代わる高精度なアプローチが可能な点も、非常に魅力的だと思います。

及川真樹/電通デジタル コマース部門 Amazonルーム 第2グループ。新卒で航空会社に入社後、営業本部の就航路線運賃担当として全社収入計画を策定するチームに所属。その後DeNAやアドテク系ベンチャー企業など数社経験した後に、総合広告代理店にてデジタルメディアのプランニングを中心にサイト解析やデジタルソリューションも含めたデジタルマーケティング業務に関わる統合プロデユースを担当。エリア支社のデジタル組織の立ち上げにも従事。その後、外資コスメ系クライアントのAmazonを中心としたeコマース領域を担当した後に、2021年6月に電通デジタルにジョイン。

Amazon広告の活用事例

――ノンエンデミックブランドのAmazon広告の活用事例を教えて下さい。

園部思穂氏(以下、園部):1つ目は、国内大手クレジットカード会社様の事例で、新規入会者の獲得を目的にキャンペーンを行いました。Amazon内に作成したランディングページから新規に入会していただき、そのカードを使ってAmazonでお買い物された方を対象にキャッシュバックやポイント還元を行うというものです。ランディングページへの集客に、Amazon DSPで広告配信を実施しました。結果は上々で、獲得単価も含めてご満足いただける評価を頂戴しました。

2つ目は、自動車会社様の試乗キャンペーンをAmazon DSPを活用して実施した事例です。クライアント企業のサイト内に来店予約やお見積もりのシミュレーションができるランディングページを作り、Amazon DSPでユーザーを集客して、CVを獲得するというものです。この施策では、AmazonガレージというAmazon独自のデータセットなどを活用して、オーディエンスへのリーチにも利用しました。このデータセットを使うことで、ほかのメディアでは届きにくい層にリーチすることができ、新規顧客開拓に繋げることができました。その点は特に、クライアント企業からも評価していただいたポイントです。

園部思穂/電通デジタル コマース部門 Amazonルーム 第3グループ。Amazonの全体売上分析と広告プランニングおよび運用コンサルティング担当。前職ではセールスプロモーション会社でのオフラインチャネルにおけるマーケティング支援・販促企画を担当し、電通デジタルに入社。現在は男性用化粧品・飲料メーカーなどのAmazon売上最大化サポートに従事。コマース分野の中でも売場領域のコンサルティングを主とするグループに所属。

及川:Amazon DSPは、Cookieに依存しない方法で適切なオーディエンスにリーチすることが可能です。これにより、さまざまなデバイスやアプリでCookieのシンク率が非常に下がっている昨今においても、精度の高いオーディエンスリーチを実現することができ、特にアッパーファネルにおいて高い効果を期待できると考えています。

また、「オンラインストア」にもかかわらずAmazon内に特集ランディングページを作る施策が有効な手段であるというのも、まさにAmazonが単なる「買う場」ではなく、「知る場」としてのポテンシャルが高く、圧倒的なメデイアパワーを持つ媒体だからこそだということは強調したい点です。

電通デジタルの強み

――Amazon広告の出稿や運用を請け負う企業はたくさんあります。電通デジタルの強みは何ですか?

及川:Amazon広告の強みは5点に集約できます。

1つ目は、Amazonデータセットの分析力です。AMC「Amazon Marketing Cloud」(Amazonのデータクリーンルームソリューション)上で、配信データセットとクライアント企業のファーストパーティデータセットを統合して、分析しています。国内電通グループ独自のデータ基盤であるPeople Driven DMP®のデータも連携済みで、国内トップレベルの運用実績を誇っており、その分析力は多くのクライアント企業に高く評価いただいていると自負しています。

園部:AMCを使える会社はほかにもありますが、電通デジタル独特の強みは、スポンサー広告とAmazon DSPのデータセットを一元管理できるだけでなく、データセット抽出後の詳細な分析ができる点にあります。Amazon内のカスタマージャーニーをより詳細に分析することで、Amazon DSPを実施する価値を明確にすることができ、インサイトの発見や新規顧客の開拓にも繋げていけると考えています。

実際、スポンサー広告とAmazon DSPを併用しているクライアント企業において、AMCを活用して、従来の広告管理画面では見られないデータセットまで見ることで、これまで顕在化していなかったカスタマーを掘り出し、アプローチ施策に落とし込んで、新規カスタマーのボリュームを増やせたという事例もあります。

Amazon Marketing Cloudの分析機能の一例
細かい指標分析や広告ソリューションを横断した効果検証が可能(図をクリックすると拡大)

及川:2つ目は広告インベントリの最適化です。Amazon DSPをIndex ExchangeのSPOを利用して配信することで広告インベントリの最適化が可能な点は、他社とは違う強みだと思います。

3つ目は、広告プロダクトの開発サポートです。2022年4月、日本でもPrime Video presents Live Boxingと題したボクシングのライブ配信が始まりましたが、その中で流すインストリーム動画広告の配信においてはAmazonと国内電通グループが連携を行い、商品化および販売を行っています。

今まさに、コネクテッドTVがものすごい勢いで普及していますが、今後は、スマートテレビの普及でテレビデバイスを通じて動画視聴の活動も増えていくと見ています。さまざまな動画配信サービスの中でも、Amazonプライムビデオは非常に多くの視聴者を抱えるサービスですので、その中で広告を配信するのは、今まで未接触だった視聴者も含め、これまで以上に幅広いリーチを実現できると考えています。

また、MBS/TBS系全国ネットで放送している番組「日曜日の初耳学」のインフォマーシャル内に、Amazonに遷移するQRコードを表示することで、認知から購買までを一気通貫させた新しい取り組みの「TV×Amazonの連動企画」の実例もあります。

4つ目は、マスを含めた統合的なマーケティングプランを提案できることです。マスも含めた統合型マーケティングコミュニケーションプランにAmazon広告を組み込むことができるのは、やはり国内電通グループの強みです。

5つ目として、2022年4月、電通デジタルはAmazon Ads Advanced Partnerに認定されました。まだ国内では10社前後しか認定されていません。多くのクライアント企業の支援実績を持つという点、そして実際の施策の運用力をご評価いただいての認定だと捉えています。

電通デジタルだからこそできる売上最大化支援(図をクリックすると拡大)

コマース領域にフルファネルで対応するコマース部門

――「Amazonルーム」が属している電通デジタルの「コマース部門」は、クライアント企業のコマース事業を支援する部門という理解でいいのでしょうか?

及川:はい、大前提はその通りです。電通デジタルでコマース支援というと、デジタルコマースを連想されがちですが、われわれの守備範囲はデジタルだけに留まりません。現在、あらゆる企業でリテール(小売)を含めたコマース全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。電通デジタルのコマース部門は、実店舗やO2Oも含めたオンライン/オフラインすべての購買接点を対象に、CX(顧客体験)の設計・運用を通じ、事業成長のお手伝いをすることを使命としています。

フルファネルでCXを設計する(図をクリックすると拡大)

――オンライン/オフラインの購買接点の中で、部門として特に注力しているチャネルはありますか?

及川:以下の5つのチャネルには特に力を入れており、各チャネルに「ルーム」と称する対応チームを設置し、それぞれ専門的な取り組みを行っています。

  • 楽天
  • Amazon
  • LINE
  • リテール(実店舗)
  • オウンドEC(自社EC)

「LINEはコミュニケーションツールでは?」と思われるかもしれませんが、いまやLINEはO2Oにおける重要な購買接点です。LINE担当チームがコマース部門にあるのは、電通デジタルの大きな特徴かもしれません。

コロナ禍以前から始まっていたコマースのDX化、すなわち購買接点を統合し、フルファネルでCXの向上を促す動きは、コロナ禍により変化のスピードが加速されました。

その変化に対応するために、コマース部門では、クライアント企業のコマース事業のブランディング、集客メディアのプランニング、エグゼキューション、クリエイティブの開発、これらすべての支援をフルファネルで、一気通貫で行える仕組みを構築しています。

それらを実行できる人材として、コマース部門には、広告会社、小売業界、事業会社、コンサルティング会社など、さまざまなバックグラウンドを持つ人間が集まっています。仕組みも人材も含めて、フルファネルでの支援体制が整っている点は、我々の強みだと思っています。

コマースの顧客体験を向上させるために

――今後、コマースにおける顧客体験の設計・運用が重要視されていくなかで、マーケターの皆さんはどういった点に留意するといいとお考えですか?

園部:コロナ禍を経て、消費者の購買行動が大きく変化するなかで、ECモールはただ物を買う場所に過ぎないという意識では通用しなくなっていることを、施策を運用していて強く感じています。その変化を踏まえて、顧客である生活者と併走していくことが、企業がコマースで成功するための道だと思っています。

顧客接点となるチャネルは今や非常に多岐にわたります。ユーザーの意識もチャネルごとに変容していきますし、メディアもユーザーの変化に合わせて刻々と変化しているなか、そうした変化をきちんと捉え、施策に落とし込んで実行していく力が求められていることを強く感じています。

及川:ユーザーのカスタマージャーニーが大きく変化していて、現在は、情報収集の接点が大きく変わっている状況にあります。ユーザーが知りたいことを調べるにあたり、検索エンジン以外のツールを使いこなすようになっています。その情報収集の場のひとつがAmazonです。

繰り返しになりますが、Amazonは「買う場」だけではなく「知る場」としてますます存在感が高まっており、コマース全体の顧客体験の中で、Amazonを適切に活用してマーケティング課題を解決することは、今後必須になってくると見ています。そうした支援を必要とするクライアント企業の期待に応えられるよう、われわれも常に全力で取り組んでいきたいと思っております。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(内藤貴志)
Photo by 渡部幸和

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