こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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ダレン・マクドナルド氏は、8月に新設された最高顧客責任者の役割に就いて以来、ペトコ(Petco)での買い物客のエクスペリエンスを改善し、パーソナライズ化する任務に取り組んできた。
ペット関連小売のペトコは、割引などの特典がある有料のロイヤルティプログラムであるバイタルケア(Vital Care)に多額の投資を行ってきた。バイタルケアは、つい最近も、すべての栄養剤の10%割引などの新しい特典を追加し、このプログラムを小型ペットにも拡大したところだ。また、オンラインレコメンデーションでより的確にターゲットを設定し、カスタマージャーニーをパーソナライズ化するなど、自社のパーソナライズ化モデルをさらに発展させている。
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こうした努力の結果、同社のバイタルケアのメンバーシップはアクティブメンバーが40万人に達し、前年比で200%、前四半期比で42%の成長を遂げている。第3四半期の既存店売上は、前年同期比で4.1%増加し、純収益も同4%増の15億ドル(約2060億円)に達した。特に一部の自由裁量のカテゴリーで需要の減少が見られることから、熱心な顧客層を育成することは、ペット用品の小売業者のあいだで、強まっている傾向だ。
同社は今後数カ月に、コールセンターを使ってより多くの顧客にバイタルケアのような新しいプログラムを紹介したり、よりスマートに商品をレコメンデーションできるような新しいテクノロジーを導入するなど、顧客サービスに対してより積極的なアプローチを打ち出す予定だ。「これまでは、何らかの問題を抱えている顧客の電話を受けるという役割を果たしてきた。当社は方針を転換し、自社のビジネスを成長させるためのアセットとして、そのリソースを活用することにした」と、マクドナルド氏は述べている。
同氏は、ペトコがカスタマーエクスペリエンスにどのように取り組むか、そして、どのように顧客ベースを拡大していくのかについて、米モダンリテールに語った。以下の対談内容は簡略性と明瞭性を考慮して編集を加えたものである。
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――最高顧客責任者に就任して、優先的に取り組んだのは何か?
全方位にわたってパーソナライズ化されたペットの健康とウェルネス体験の提供だ。これはペトコにとって独自の差別化要因となっている。人々はペトコを通じて、自身の飼う動物のあらゆるケアを行える。そして、当社はそのエクスペリエンスを可能な限りシームレスで、パーソナライズ化されたものであるよう心がけている。
この機会について、私の最初の構想は、当社の顧客層にとって独自のエクスペリエンスを識別して作り上げ、そのエクスペリエンスが、顧客の動物に対して可能な限り最高のケアを行えると保証することだった。すなわち、その終着点は、当社をペットケアセンター(Pet Care Center)と捉え、第1にオンライン、第2に当社のサービスおよびグルーミングサロン、そして第3にカスタマーケアセンター(Customer Care Center)と考えることだ。
これは、ペトコにとっての新しい役割だ。ある意味、可能なことを実行する技術を作り上げるようなものだ。このような役割は、欧州の市場にはさらに大規模に存在している。米国では欧州ほど大きなものではないが、エクスペリエンスのすべての要素を、より的確に調和させることができるという構想だ。
――ペトコにとって、ホリスティックなニーズに対応することの意味について話してほしい。
この全方位にわたる健康&ウェルネス戦略により、犬のためのフードやベッド、あるいはキャットタワーを購入できるはもちろん、それに加えて、動物のケアに必要なほかのあらゆる異なる方法をシームレスに行えるようにする。このため、獣医によるワクチン接種クリニックがあり、顧客がワクチン接種クリニックに行けば、当社はその情報を獣医やグルーマーにもシームレスに伝えることができる。
処方箋の入手やアドバイスを受けることも、この全方位のエコシステムの一部と考えてもよい。このエコシステムで我々が行えることは真に独自性があり、我々が役割を果たして成功できる場所だと考えている。
――ペトコのバイタルケアのメンバーシップは、大幅に、しかも急速に成長してきた。このプログラムへの投資にペトコはどのような機会を見出しているのか?
当社の大きな消費者インサイトのひとつは、顧客の90%は自分の動物にとって正しいことをしたいと願っているが、その方法を知っているのは50%にすぎないということだ。そこでバイタルケアは、顧客が動物のケアをするために何をしなければならないのかを理解し、それを実行しながら節約できるようにするものだ。
当社が見ている顧客の生涯価値は、通常の顧客よりも3.5倍も大きい。これらの顧客は価値を理解している。当社でより頻繁に、より多くの商品を購入する。
これにより、さらに多くの顧客に新しいカテゴリーを紹介することができる。会員の3分の1は、フードを買うのがはじめてか、ペトコのサービス自体を利用するのがはじめての人だ。このため、顧客の支出に当社が占める割合が増えることになる。
――2023年に向けて、ペトコが注目しているトレンドは何か?
当社がマクロ経済環境で目にしているのは、経済のハイエンドに属する顧客は、引き続き多くの金額を消費する余裕があるということだ。当社はこの部分に関与しているが、同時に、より価値を気にする顧客の要求に対応することができる幅広いポートフォリオを保有している。我々は、これらの機会と、これらのカテゴリーにおいて提供するスキューを拡大していく。
2つ目は利便性だ。顧客にとってショッピングを簡単で、迅速で、便利なものにするために多くの労力を注いでいる。
また当社は、顧客が好きな方法でショッピングを行えるように、支払い方法の種類を増やすなどして、決済の利便性をより高めようとしている。
そして、顧客に関する最後の要素は、顧客が小売業者と1対1の関係を求めているということだ。顧客は、自分が2500万人のうち1人にすぎないと感じることを望まない。自分だけが重要な顧客だと感じることを望んでいる。このため、当社はこの顧客の組織を拡大するにあたり、顧客のエクスペリエンスはどのようなものかをさらに深く追求し、当社のビジネスのあらゆる領域でデータを結合していく。
[原文:Petco CCO Darren MacDonald on what it takes to grow a customer base]
MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Petco