リアルもバーチャルも素晴らしい。ライゾマティクスのダンス公演がアートの未来を教えてくれた

GIZMODO

世界は動き出している。でもなんかギコチナイ。

今僕たちはコロナ後の世界を生きているのです。

なぜギコチナイか、それは誰もコロナ後の世界をどう生きていいか分からないからです。不思議です。僕たちはインターネットによってコミュニケーションの新しい形を模索してきたはずなのに。いや、テクノロジーそのものに憧れてきたはずなのに。

そう、僕たちの夢は80年代初頭、ウルトラヴォックスのジョン・フォックスが“機械になりたい”と歌ったようにテクノロジーによって自分自身がハックされることだったのかもしれません。“機械になりたい”というのはアンディ・ウォーホルのパクりですけどね。アンディ・ウォーホルの気持ちを歌った画期的な歌なんです。

僕が唐突にウルトラヴォックスの話をしても「なんですかそれ」とは誰も聞くことはない。スマホをちょっと弄るだけで、ジョン・フォックスの“機械になりたい”という切ない声が流れてくる、それが今の世の中なのです。

未来のアートってきっとこんな感じ

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Video: Rhizomatiks/YouTube

こんなことを真鍋大度・石橋素率いるライゾマティクス、ダンスカンパニー ELEVENPLAYと、演出振付家のMIKIKO、アーティストのカイル・マクドナルドによるダンス作品「discrete figures」を見ていて思いました。

これは未来のダンスパフォーマンスだと

Perfume(パフューム)の振り付けで有名なMIKIKOさんは、今回の振り付けについて、「映像の進化の過程も表現したかった」と言っておられましたが、僕は芸術の未来を見ているかのようでした。

今回の大阪公演について、ライゾマティクス代表の真鍋さんは「これまで東京、北海道、あとは欧米での公演が多かったので、初めて関西圏で発表ができて素直に嬉しいです」と語っていましたが、彼らはすごく大事なことをやっているのに、多くの人がサカナクションやPerfumeを通じてしか、彼らの革新的な活動に触れられていないのは本当に残念だなと思いました。

日本政府よ、企業よ、彼らの作品を色々な人に見せる機会を与えてください。ギズモードももっと記事にして宣伝しなきゃだめですよ!

いやー、もっと大規模なものも見てみたい。もっと予算があったら、ダンサーを何十人も集めて、もっと壮大な機械と人間によるシンクロニシティの気持ちよさが堪能できますよ。最先端のものはニッチでいいなんて一体誰が決めたんでしょうか? いつも売れないというのが世の常なので仕方がないことなんでしょう。

ジョン・フォックスがいた頃のウルトラヴォックスは全く売れませんでした(レディング・フェスティバルのヘッドライナーをしていたのでそれなりには売れていたと思うのですが)。ヴォーカルを替え、ジョン・フォックスがやっていたことを薄めて似非ヨーロッパの香りを出したら、ウルトラヴォックスが世界的大ヒットになったりするんだから、そういうものなんでしょう。ウォーホルもなんで俺の作品がマネより安いんだと怒って機械になりたいと思ってたんでしょうから。

リアルとバーチャル、どちらも肯定してくれた

しかし、いろんな実験にあふれていました。モーションキャプチャーという、映画の世界では何回も失敗しながら編集完成させるようなことを、リアルタイムで、ダンスの世界に取り入れているなんて、言われないとわかんないです。ヤバすぎます。

リアルな人間の動きをAIが学習しながら、新しいダンスを産み、それがリアルなダンサーの踊りに影響を与えていくというディープ・ラーニングなことをやっているのかなというのはなんとなく理解しました。

とにかくすごいものを見させていただいたなと今も感動してます。

僕たちは本当にすごい所に来ているなと思います。テクノロジーの力で人と触れ合わなくてもすごいことが出来る時代に来ている。人がいようが、いまいがどうでもいいのです。人と一緒に何かやりたいと思う人はそうすればいいし、ヴァーチャルの世界だけでぼくはやりたいと思う人はそうすればいい、そういう時代なのです。

市場ではGAFAMの大暴落が始まって、やっぱリアルだという波が来てますけど、どっちでもいいのですよ。僕らはきっと両方で生きていけるのです。それが理解出来ない人は今ギコチナさを感じているんです。そういう人たちに見てもらいたい公演だったなと思うのです。

Photo: Yoshikazu Inoue

Source: Rhizomatiks