レノボ・ジャパンは6月21日、ThinkPadシリーズの特徴そのままのChromebook「ThinkPad C14 Chromebook Gen 1」を発表、現在販売中だ。少し時間が経ってしまったが、編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
第12世代Core i5を搭載したChromebook!
一般で売られているChromebookは、どちらかと言えば、あまり速くないSoCやプロセッサを搭載し安価なマシンが多い。自宅や余暇は、サイトを徘徊したり、動画や音楽を再生する程度なのでそれで十分的な用途もあるだろうし、Googleアカウントを切り替え家族などで共有も可能。それはそれで十分役に立つ。
とは言え、仕事で使うならできるだけ速いマシンで筐体やキーボードなどもしっかりしているのが欲しい。また企業だと一括管理できるGoogle Enterprise対応のマシンが……となるだろう。このような用途に投入されたのが今回ご紹介するThinkPad C14 Chromebook Gen 1だ。名前の通り、ThinkPadの堅牢性/信頼性、TrackPointや打ちやすいキーボードなどを備えたChromebookとなる。主な仕様は以下の通り。
「ThinkPad C14 Chromebook Gen 1」の仕様 | |
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プロセッサ | Core i5-1235U (10コア12スレッド/~4.4GHz/キャッシュ 12MB/Base 15W/Turbo 55W) |
メモリ | 8GB/LPDDR4X(オンボード) |
ストレージ | eMMC 128GB |
OS | Chrome OS |
ディスプレイ | 14型IPS式1,920×1,080ドット(16:9)、非光沢 |
グラフィックス | Iris Xe Graphics/Type-C、HDMI |
ネットワーク | Wi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.2、LTEモデルあり |
インターフェイス | USB 4/Type-C×2、USB 3.2 Gen2/Type-A×2、1080p Webカメラ(プライバシーシャッター付き)、microSDカードスロット、nanoSIM(LTEモデル)、3.5mmジャック、指紋センサー、キーボードバックライト |
バッテリ/駆動時間 | 3セル(57WHr)/最大約11.1時間 |
サイズ/重量 | 325.4×217×19.83mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.56kg |
カラーバリエーション | アビスブルー |
税込価格 | 19万300円(ダイレクト価格/LTE非対応) |
プロセッサは第12世代Core i5-1235U。10コア12スレッドで、クロックは最大4.4GHz。キャッシュは12MB、TDPはBase 15W、Turbo 55W。昨今、Windowsマシンでこのクラスは珍しくないものの、Chromebookとしては珍しく、本機特徴の1つとなる。
メモリはオンボードでLPDDR4Xの8GB。ストレージはeMMC 128GB。OSはChromeOSを搭載する。価格が20万近くするのにさすがにeMMCは……と思うところ。
ディスプレイは14型IPS式で非光沢のフルHD(1,920×1,080ドット非光沢)。外部出力用にUSB Type-CとHDMIを備えている。
ネットワークはWi-Fi 6E対応、Bluetooth 5.2。LTEモデルも用意されている。そのほかのインターフェイスは、USB4/Type-C×2、USB 3.2 Gen2/Type-A×2、1080p Webカメラ(プライバシーシャッター付き)、microSDカードスロット、nanoSIM(LTEモデル)、3.5mmジャック、指紋センサー、キーボードバックライト。
カラーバリエーションはアビスブルーのみ。3セル(57WHr)のバッテリを内蔵し、最大約11.1時間駆動可能。サイズ325.4×217×19.83mm(幅×奥行き×高さ)、重量約1.56kg。価格はLTE非対応モデルで19万300円(ダイレクト価格)、LTE対応モデルで20万9,000円となる。
今年は円安の影響が大きく、各社同クラスのノートPCが20万円前後するため、仕方ない部分ではあるが、それでも8GB/eMMC 128GBで、この価格はやはり高いと言えるだろう。Chrome Enterprise Upgradeが用意されているモデルもあり冒頭に書いた通り基本企業向けだ。
筐体は扉の写真からも分かるようにThinkPadそのもの。ただ色がブラックではなくアビスブルーなのが個人的には残念なところ。ThinkPadは一時期茶色っぽい頃もあったが、やはりマットブラックが好みだ。重量は実測で1,526g(nanoSIMなし)。14型としては少し重い方だろうか。筆者は14型のThinkPad T440sを持っているが、幅や高さはほぼ同じ。奥行きだけ少しあり、重量は1,485g(バッテリ着脱可)。ざっくりよく似た雰囲気となる。
前面はパネル中央上に1080p Webカメラ。その右側にプライバシーシャッターがある。天板はThinkPadのiの点の部分が赤く光る。左側面にType-C×2、HDMI、Type-A、音声入出力。右側面にロックポート、Type-A、microSDカードスロット、後ろ側面にnanoSIMスロットを配置。裏は四隅にゴム足。バッテリは内蔵式で着脱できない。付属のACアダプタは、サイズ約93×40×30mm、重量196g、出力45W。USB Type-C/PDなのでほかの同クラスのアダプタであれば充電可能。
14型IPS式1,920×1,080ドット(16:9)のディスプレイは、非光沢で写り込みがなく見やすい。明るさ、発色、コントラスト、視野角も十分。180度倒すことができる。ただ色は少し黄色っぽい(色温度が高い)感じがする。以前ChromeOS Flexの時も触れたが、ChromeOSは外部からキャリブレーションする手段が無く、パネルの特性を測ることも補正することもできない。そろそろ何とかして欲しいところ。
キーボードはTrackPoint付きの何時ものThinkPadキーボードだ。キーボードバックライトはオフ+5段階式。キーピッチは実測で主な部分は18mm。[Enter]キーの周囲だけ少し狭いものの概ね良好だ。打鍵感やキーストロークも好み。この辺りはさすがThinkPad。ただし、ファンクションキーなどはChromeOS準拠になっているのでWindows用とは少し異なり、Windowsキーはもちろん、PrintScreenなどのキーもない。なお、電源ボタンは指紋センサーを兼ねており、設定で簡単に登録することができる。
Webカメラは1080pなので解像度は高めだが、発色は平面的でいかにもWebカメラっぽい映りだが、一般的なビデオ会議ならこれで十分といったところか。
発熱やノイズは試用した範囲では特に問題なかった。サウンドはバッテリベンチマークテストで設定した出力50%でもかなりパワーがあり、最大だと煩いほど鳴る。ノートPCっぽいカマボコレンジだが、ビジネス用としてはいい方だろう。
Core i5-1235UのパワーでWebはもちろん、Androidアプリもサクサク動く
初期起動時、Windows風に言うと下にタスクバー、左端のボタンをクリックでスタートメニュー、右側に通知/設定パネル……と、非常によく似ているため、特に戸惑うこともないだろう。ダークモードにも対応している。
同じGoogleアカウントでChromeOS環境を構築している場合は、アプリも含め同じ環境が自動的に復元される。
設定に関しては、多くの項目がブラウザのChromeと同じであるが、デバイスにマウスとタッチパッド/キーボード/ディスプレイ/ストレージ管理/電源など、ハードウェアに依存したChromeOS固有のものが含まれる。この点はChromeOS Flexも同じ。ストレージは128GB中37.4GBが使用中(内システムに36.5GB)だ。
プリインストールのアプリケーションは、「スキャン」、「メッセージ」、「Chrome」、「ウェブストア」、「Playストア」、「Gmail」、「Google Meet」、「Google Chat」、「ドキュメント」、「スライド」、「スプレッドシート」、「ファイル」、「YouTube Music」、「Googleドライブ」、「Playブック」、「Google Keep」、「電卓」、「カメラ」、「Googleカレンダー」、「YouTube」、「フォト」、「Google TV」、「Play Music」、「設定」、「Chrome描画キャンパス」、「使い方」、「Googleマップ」、「電卓」、「スクリーンキャスト」、「ギャラリー」。
カメラやファイル、電卓など、一部別ウィンドウで開く単独アプリもあるが、基本各WebサービスがそのままChromeで開く。
なお、ChromeOSとChromeOS Flexの違いはAndroidアプリ(Googleストア)が使えるかどうか。Linux環境はどちらも作動する(後者はプロセッサの世代などに制限があるかも知れないが)。本機は前者なのでAndroidアプリが使用可能だ。
筆者はCloudReadyも含め付き合いが長く、当初はやはりAndroidアプリが使えないと……っと思っていたものの、実際使い出すと現時点で欲しいのはGoogleフォト(ポートレートライトなどOneファンクションが必要)など若干の画像処理系程度。事務所理系の仕事と言う意味では全く困らなくなっている。この辺りは用途にもよると言ったところだろうか。
届いたのがLTEモデルだったので、手持ちのOCNモバイルONE(4G)で試すことにした。設定は今回のケースでは自動でAPNまでセットされ簡単。具体的にはnanoSIMを挿入した後、設定→ネットワーク→モバイルデータ→SIMでAPNが選択可能になっている。該当がない場合はそのほかで必要事項を入力する。
ただChromeOSにはPhone Hubがあり、接続先がAndroidスマホであれば、ChromeOS側からテザリングのオン/オフができるので、あまりLTEモデルにこだわる必要はないかもしれない。
ベンチマークテストは、簡易式でGoogle Octane 2.0とGeekbench 5を使用。バッテリ駆動時間は、Wi-Fi経由でフルHDの映像を明るさ50%、音量50%で連続再生した結果となる。なおアプリはAndroid版のVLCを使用した。
Google Octane 2.0のスコアは81,403。これだけでもかなり速いのが分かる。GeekbenchはAndroidアプリでは、シングルコア1,430、マルチコア5,569。Linux環境では、シングルコア1,490、マルチコア5,948。Geekbench 5 CPU Search Resultsのスコアを見ても似た結果なので、然程オーバーヘッドはないようだ。
筆者は数台、ChromebookやChromeOS Flexをインストールしたマシンを所有しているが、さすがにこのクラスはなく、動きはかなり良い。試しで短期間使ったi9-12900+ChromeOS Flexに近い動きだ。Chromeのレンダリングは速く、Androidアプリもサクサク動く。ChromeOS Flexで古いマシンが蘇る的なキャッチを多く見かけるものの、やはりパワーのあるマシンの方が快適に操作できる。
バッテリ駆動時間は今回のテストだと約7時間ちょっとと、8時間には届かなかった。輝度/音量50%は十分以上の環境なので絞ればもう少し伸びる可能性はある。企業用途で8時間の勤務中、ずっとバッテリ駆動と言うのもまれだと思うので、7時間以上作動すればOKと的な感じだろうか。
以上のように、Lenovo「ThinkPad C14 Chromebook Gen 1」は、第12世代Core i5を搭載したThinkPadなChromeBookだ。T440sと雰囲気やサイズ感が気持ち似ており、良い意味で往年の無骨な感じが残っている。またLTE対応モデルがあったり、企業用途でChromeEnterprise Upgrade対応しているところもポイントが高い。ただし構成の割に価格が高めなのが惜しいところか。
個人的には色がブラックでない、ディスプレイが16:9、ストレージがeMMC……と残念な部分もあるにはあるが、Chromebookにパワーはもちろん、堅牢性や信頼性、キーボードのクオリティなど、ThinkPad的な要素を求めるユーザーに使って欲しい1台だ。
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