【涙腺崩壊】昭和の団地を丸ごと再現し「エモい」「実家みたい」と話題になった松戸市立博物館を徹底解剖!

ロケットニュース24

突然だが、千葉県の「常盤平(ときわだいら)団地」をご存じだろうか。

筆者もぼんやりと、昭和の高度経済成長期にはマンモス団地が次々登場し、ライフスタイルが大きく西洋化した……という知識がある程度なのだが、松戸市立博物館にその一角を丸ごと実物大で再現したユニークな展示がある。

写真撮影OKの体験型博物館ゆえに、SNSで写真を見た人のあいだで「エモい」「実家みたい」と話題に。

とはいえ写真は撮影者の腕次第でいくらでも盛れるもの。「写真マジックじゃないのぉ~?」と思って実際に訪ねてみたら、想像以上にノスタルジックでエモーショナルで涙腺崩壊だったのでシェアしたい。


・松戸の3万年の歴史

松戸市立博物館は旧石器・縄文時代から近代まで3万年の松戸の暮らしを概観できるミュージアム。出土品などの実物展示はもちろん、模型やミニチュアなど立体的な展示が多数。「説明文を読む」ことばかり迫られる一般的な博物館に比べ、感覚的に理解できそう。

近代以前の展示も実はかなり面白かったのだが、今日は昭和の団地をご紹介したいので3万年を一気に駆け抜けよう。実際の展示も、人類の誕生から昭和時代までワンフロアで表現されているから相当スピーディだ。「さっきまで石器使ってたのに、もう大名行列かよ!」ってなるぞ。

展示室の最奥まで進むと、外観から再現された団地が登場する! 実際はごく一部なのだけれど、すごく立体的でどこまでも部屋が続いているような錯覚に陥る。実物は4800戸を超えるという。

誰かの部屋をのぞき見しているみたい……と書きかけて手が止まった。少し違う。

筆者も集合住宅で生まれ育ったくちなのだが、夕暮れどきに自宅に帰ってきて、蛍光灯のともった台所の小窓から母親が料理をしている気配を感じるみたいな……。やばい、すでにエモい。なんだこの生活感は。

棟の入口部分。これはエモくないな。現代でもこういう作りのマンションやアパートはよくあるし、ロケットニュース編集部にも似ている気がする。

さっそくお邪魔してみよう。


玄関から入ると、左手に台所。所狭しと調理器具や食器などの実用品が並ぶかたわら、カレンダーなんかの装飾品もあってディティールがすごい!

再現されているのは昭和37年当時の暮らし。筆者が生まれるよりも遥かに前なので、よく見ると「知らないなぁ」という生活用品もあるのだけれど、なぜか既視感がある。それは、住んでいる人の暮らしが脳裏に浮かぶほどリアリティがあるから。

整然と「資料を並べました」という展示ではない。おそらく住んでいる人の年齢、家族構成、生活動線など、細部までしっかりシミュレートして配置してるのだと思う。

子鹿ちゃんのクッションにビニール張りのベビーチェア! 一周まわって「レトロでカワイイ!」ってZ世代でブームになるヤツだこれ。

ベランダに面したメインの部屋はリビング。白い蛍光灯で照らされている。


この雑多な感じ、狭いところにぎゅうぎゅうに家具を押し込んでいるレイアウト、畳の部屋に洋式の応接セットを置いているところ……すべてが実家!

日本式の家屋に、西洋式の家具家電が混ざって独特のスタイルになっている。ものすごく懐かしい。っていうか、筆者ここで生まれ育った……?

リビングの隣には寝室らしき部屋。ベビーベッドがあるから赤ちゃんがいるんだな。間取りとしては2DKになるのかな?

昔の女性はちょっとした服なら自分で作ったという。筆者の実家にも、こういう家具と一体化したようなミシンがあった。

台所に片隅に、おもむろに洗面台が登場する。現代のような独立した洗面脱衣所はなかったようだ。ちなみに洗濯機はベランダにある。

風呂。さすがにこれは筆者でもわからない! 田舎のばーちゃんちでもステンレス風呂だった。

地面まで作り込まれている。神は細部に宿るというが、見落とされそうな部分まで妥協なく手をかけることがリアリティを生み出している。「時間が止まったよう」とはこのことだ。

大げさに聞こえるかもしれないが、本当に人が暮らしているかのような不思議な空気感に包まれている。エアポケットになって別の世界線につながっていてもおかしくない。どこからか「おかえり」って声が聞こえてきそうだ。


・かつての「理想の住まい」

ダイニングキッチンや水洗トイレなど最先端の住宅設備が取り入れられた常盤平団地は「理想の住まい」と考えられ、“団地族” という言葉が流行するほど注目を集めたという。しかし現在、建物の老朽化や住民の高齢化などが社会問題となっている側面もあると聞く。

難しいことは抜きにしてSNS映えする写真を撮りに来てもいいし、もう一歩踏み込んで日本の近代化の歴史に思いを馳せるのも意義深い。秋の博物館探訪、いかがだろうか。


参考リンク:松戸市立博物館
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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