CEATEC 2022のオープニングセレモニーが、2022年10月17日午後6時から、東京・虎ノ門の虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された。会場には国内外から約300人の関係者が集まり、3年ぶりのリアル開催となったCEATEC 2022のスタートを祝った。
CEATECの主催者である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の時田隆仁会長(富士通社長)は、「CEATECは、2年間の完全オンライン開催を経て、今年は、幕張メッセ会場とオンラインを組み合わせた初のハイブリッド形式で開催する。オープニングセレモニーも3年ぶりの開催になる」と切り出し、「今年は、グリーンやサステナビリティをはじめ、暮らしに焦点をあてたウェルビーイングに関する展示に注目が集まりそうだ。
とくに、新設するパートナーズパークでは、デジタル田園都市をテーマに掲げ、メタバースやクラウドソリューションをはじめとする、デジタル技術を活用した社会課題の解決や、未来の暮らしに関する提案が多数披露される。ほかにも、半導体産業で働く魅力を発信するJEITA半導体フォーラム、9か国がパビリオンを設けるグローバルエリアおよびスタートアップ&ユニバーシティエリアなど、多彩な展示が目白押しである。明日からの幕張メッセ会場の開幕に大いに期待してもらい、ぜひ会場に足を運んでほしい」と呼びかけた。
岸田首相がビデオメッセージ「デジタル技術は社会を変革し、社会課題を乗り越える鍵」
また、岸田文雄首相がビデオメッセージを送った。
「今年は3年ぶりの展示会場での開催を実現し、関係者の尽力に敬意を表する」と述べ、「CEATECは、IoTや第4次産業革命の潮流を捉え、2016年からは、デジタル家電のみならず、様々なデジタル技術を展示するSociety 5.0の総合展に生まれ変わった。今年のCEATECでは、デジタル田園都市をテーマにした新たな展示スペースであるパートナーズパークを設置した。これは、様々な業種の人や技術が一堂に集い、未来を議論し、常に時代の潮流を感じ取り、進化してきたCEATECに相応しい空間だといえる。デジタル技術は社会を変革し、社会課題を乗り越える鍵である。CEATECに展示される最新技術や、パートナーズパークでの議論がデジタル田園都市国家構想の実現や、日本と世界の社会課題の解決につながっていくことを強く期待している」と語った。
西村経済産業大臣「投資が経済成長につながり、所得向上を生み出し、それがまた投資につながる」
来賓として最初に登壇したのが、経済産業省の西村康稔大臣である。
「過去2年間のオンライン開催のときにも、CEATECに参加している。今年は予算委員会のために参加できないのが残念である」と話し、「2016年のCEATECのオープニングセレモニーには、故・安倍晋三元首相が出席し、『日本は少子高齢化、人口減少というピンチに直面している。だが、優れた技術と果敢なチャレンジ精神があれば、強い日本経済をかならず実現できると確信している』と述べた。いまは、新型コロナウイルス、ウクライナ侵略、気候変動という3つの大きな危機に直面している。これを乗り越えるのはイノベーションしかない。イノベーションの中核がデジタル技術である。コロナ禍においては日本のデジタル技術の遅れも指摘されたが、リモートワークが広がり、様々なことができることもわかってきた。果敢なチャレンジ精神は、アニマルスピリッツそのものである。日本人が忘れていたアニマルスピリッツをもう一度掻き立てて、新たなイノベーションを生み出してほしい」と述べた。
また、10月16日に、政府も出資し、台湾積体電路製造(TSMC)などが建設している熊本県の半導体工場を視察したことに触れ、「10年かかる工事を2年でやっていると言われた。ものすごいスピードでやっている。九州地域では、関連する中堅中小企業の投資意欲が出ており、人材育成に対する意欲も高まっている。CEATECでも半導体人材フォーラムが開催されており、若い人に半導体が持つ魅力を伝え、関心を高めたい。日本は意思決定が遅いと言われるが、いまは政府も変わってきている。スピード感を、官民ともに高めていきたい」としたほか、「中小企業のなかには給料があがっていくことが大変だという声もあるが、ここは苦しくても上げていき、その人たちが、イノベーションを起こしていくという好循環をつくっていかなくてはならない。投資/イノベーションが、経済成長につながり、人材育成/所得向上を生み出し、それがまた投資/イノベーションにつながる、トライアングルの好循環を生み出してほしい」と語った。
柘植総務副大臣「高度な通信インフラを全国に整備し、デジタルの恩恵を享受できる社会を作り上げたい」
続いて登壇した総務省の柘植芳文副大臣は、「CEATECは、開催趣旨として、共創によって、Society 5.0を実現することを掲げている。日本を取り巻く経済環境が大きく変化するなかで、共創というキーワードが重要な意味を持つようになった。今年のCEATECでは、デジタル田園都市をテーマに、多様な共創の形や社会像を発信するパートナーズパークが新設される。楽しみにしている」と語った。
また、「政府は、デジタル田園都市国家構想を重要政策のひとつに位置づけており、総務省は、デジタル田園都市国家構想推進本部を、総務大臣を本部長として設置し、2022年3月に策定したデジタル田園都市国家インフラ整備計画に基づき、光ファイバーや5Gなどのデジタル基盤の整備のほか、デジタルの実装による地方の課題解決、デジタル人材の育成などに取り組んでいる。高度な通信インフラを全国に整備し、地方の企業や個人が、デジタル化の恩恵を享受することができる社会を作り上げたい。情報通信技術は、変化に柔軟に対応しつつ、よりよい暮らしや、よりよい社会をもたらすものになる。社会経済の発展や、国民のよりよい暮らしのために力を尽くしたい」と語った。
河野デジタル大臣「アナログ規制を一気に無くし、デジタル技術で置きかえていく」
最後に登壇したのが、デジタル庁の河野太郎大臣だ。
「10月はデジタル月間であり、CEATECの開催は、それを盛り上げる役割を果たしている」とし、「紙でやれ、対面でやれ、専任者を設置しろ、といった時代にあわないアナログ規制が、数1000件ある。これを一気に無くし、デジタル技術で置きかえていこうと思っている。規制を取っ払うことはやるが、置きかえる技術が出てこないと、なにもできない。こうした分野にも目を向けてもらい、置きかえられる技術があったら積極的にやってほしい」と述べた。
また、先ごろ視察に訪れた茨城県境町では、ドローンで配達を行っている先行事例に触れたものの、「ラーメンを運んでも、スープをこぼさずに運べる技術が実現しているが、規制により、ドローンの飛行ルートは最短距離では飛べずに、道路の上を飛ぶことになり、赤信号になったら空中で止まらなくてはいけないと聞いた。わけがわからない。そうした規制を外していきたい」と述べた。
挨拶の最後には、マイナンバーカードの登録を呼びかけた。
経団連 篠原副会長「DXに精力的に取り組んでいる」
乾杯の音頭を取った一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の篠原弘道副会長(NTT相談役)は、「CEATECは、経済発展と社会課題の解決を目指すSociety 5.0の実現に取り組んできた。コロナ禍においても、共創によって、未来を描くという趣旨のもと、様々な業界の技術などを活用し、画期的な提案を行う役割を果たしたことには大きな意義がある。経団連でもコロナ禍からの回復、持続的な成長への道は、Society 5.0の実現にほかならないと考えており、DXに精力的に取り組んでいる。経済界でも、政府や多様なステークホルダーと連携を図りながら、政府が2022年6月に発表した『「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ」の実現に向けた一翼を担いたい』と述べた。
また、CEATEC AWARD 2022の大臣賞表彰式も行われた。
経済産業大臣賞、総務大臣賞、デジタル大臣賞を受賞した企業に、各大臣および副大臣から表彰状と、記念の盾が贈られた。
経済産業大臣賞は、シャープの屋内光発電デバイス「LC-LH」で、シャープの沖津雅浩副社長が表彰状と盾を受け取った。総務大臣賞は、NECのローカル5G小型一体型基地局「UNIVERGE RV1200」で、NECの新野隆会長が登壇して表彰を受けた。また、今年から新設されたデジタル大臣賞は、工作機械を動かす加工プログラムを完全自動生成する世界初のAIソフトウェアであるアルムの「ARUMCODE1」が受賞。同社の平山京幸CEOが受け取った。