老舗のマニシュウィッツ、ネタTシャツを発売:「会話のきっかけになるマーケティング作戦」

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マニシュウィッツ(Manischewitz)は、このホリデーシーズンに、人々の食卓やワードローブに登場することをめざしている。

コーシャフードを販売する同社は10月、ソーシャルメディアに精通した若いオーディエンスを念頭に置いてデザインされたブランド・グッズのラインナップを発表した。衣類アイテムには、「マニシュウィッツはゲフィルテドッグの故郷(Manischewitz: Home of the Gefilte Dog)」や、「マニシュウィッツはボール入り(度胸のある)スープ(Manischewitz: The Soup with Balls)」といった愉快なフレーズが印刷されている。この商品ラインは、同社のウェブサイトでのみ販売される。

ブランド名をアピール

ブランド・グッズはこの数年間、レガシーCPGのあいだで一般的だった。ストウファ(Stouffer)は2020年、同社の冷凍食品にヒントを得たマカロニ・アンド・チーズのラウンジセットをリリースした。一方でカップヌードル(Cup Noodles)やトップラーメン(Top Ramen)の親会社である日清食品(Nissin Foods)は、同社のカップヌードル×ハローキティ(Hello Kitty)のグッズなどコラボレーション商品を連続して発売している。同様のプレイブックはチポトレ(Chipotle)やマクドナルド(McDonald’s)などの大手ファストフードチェーンでも使用されてきた。今、マニシュウィッツもまた、若い顧客たちに着てもらいネタにされることを望む、愛される食品ブランドの列に加わろうとしている。

新しいグッズキャンペーンは、ニュージャージーを拠点とするヨセフ・ヤコブ・アドバタイジング(Joseph Jacobs Advertising)が主導したもので、同社はマニシュウィッツのマーケティング代理店として数十年間も協働してきた。ヨセフ・ヤコブのCEOを務めるエリー・ローゼンフェルド氏は、このコーシャブランドに130年以上の歴史があることから、Tシャツとスウェットシャツの新しいラインについては、「ブランド名をもっともアピールしたいと考えた」と、米モダンリテールに語っている。

「ユダヤ教徒の顧客だけでなく、それ以外の多くの消費者にも関わりのあるブランドだ」とローゼンフェルド氏は述べている。マニシュウィッツは、創業以来100年以上にわたって、コーシャワインや、マッツァースープ、ゲフィルテフィッシュなどの人気の消費財商品で知られるようになった。

「このグッズを着て夕食をとり、マニシュウィッツについて会話をはじめてほしい」と、同氏は述べている。

ソーシャルメディアの声がヒントに

マニシュウィッツは数十年間の歴史において、家族経営の企業から、1920年代には株式公開企業となり、1990年代のある時点でプライベートエクイティ所有の食品会社になった。そして2019年にはコーシャフードのディストリビューターであるケイコ(Kayco)が、非公開の金額でマニシュウィッツカンパニー(The Manischewitz Company)を買収した。マニシュウィッツの最新の年間収益額は公開されていない。

同ブランドのグッズは、マニシュウィッツがオンラインマーケティングに参入しようとする最新の試みだ。

ローゼンフェルド氏は、代理店である同社は約1年前にマニシュウィッツのオンラインの声を構築しはじめ、親しみやすさのためにソーシャルメディアに投稿している多くの食品ブランドの仲間入りをしたと語る。同ブランドのソーシャルメディアでの声は主に、風刺的なユーモアとレシピが中心だった。たとえば、今年の春にTwitterのアカウントが「ハッシュブラウニーマカロン(Hash Brownie Macaroons)」の、過越祭(ユダヤ教の宗教的記念日)のディナーのハイライトになると主張した。この戦略は過去1年間に実を結び、マニシュウィッツのゲフィルテドッグに関するTwitter上の口論はこの6月、ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)やエルサレムポスト(Jerusalem Post)でも取り上げられたのだ。

このデジタルの勢いが、マニシュウィッツの商品展開につながった。このタイミングは、ロッシュハッシャナー(Rosh Hashanah)やほかの大祭日が重なり、人々が友人や家族に会う機会が増える時期でもある。「1年間で人々がもっとも我々のことを考える時期であり、これからスープの季節に入ることを考えるとなおさらだ」と同氏は述べている。

同ブランドは、秋のユダヤ教の祝祭日の開始前後に、一貫してトラフィックの急増を経験する。Googleトレンド(Google Trends)によると、「マニシュウィッツ スープ」の検索は、9月中旬に急増しはじめる。同様に、同社のソーシャルメディアの公式アカウントも知名度を上げている、たとえば、今年前半に引き起こしたゲフィルテドッグに関する騒ぎによってバイラル化した。

「会話のきっかけになるマーケティング作戦」

ローゼンフェルド氏は、マニシュウィッツは、今回の商品ドロップと同時に、ミレニアル世代やZ世代の買い物客に向けたパッケージ商品のリリースに集中しているとしている。同氏はこの新しいSKUが何かを明らかにしていないが、2023年初頭には店頭に並ぶと認めている。「当社はコーシャ向けのマカロニ・アンド・チーズを発売したばかりで、ほかのものも企画中だ」と同氏は述べている。

マーケティング戦略家で投資家でもあるニック・シャルマ氏は、ブランドがバズりと関心を呼び起こすもっとも利用しやすい方法のひとつがグッズだと語る。「レガシーブランド、特にこの世代の消費者が子どもの頃からなじんできたブランドは、消費者にとっていつまでも感情的な結びつきがある」と同氏は述べる。同氏は、ユーピーエス(UPS)やカークランド(Kirkland)などの企業がこのトレンドを利用した最近の例を指摘する。「これは双方に益がある関係だ。ブランドは歩く広告看板を手に入れることができ、消費者は好きなブランドを代表することを誇りに思い、興奮する」。

同時に、マニシュウィッツは家族を対象としたブランドであることと、若い人々に対して親近感を持てるブランドに見せることとのバランスを見つける必要があると、ローゼンフェルド氏は語る。「我々はこれを、有名デザイナーのスウェットシャツのような存在にしようとしているわけではない。しかし、当社の遺産に触れ、機会を生み出すための方法だ」と同氏は述べ、キス(Kith)の一連のコカコーラ(Coca-Cola)コレクションなど、最近におけるファッションと食品のコラボレーションに触れている。

ローゼンフェルド氏は、マッツァーボールのシャツの売上はすでに好調で、マニシュウィッツのウェブサイトに通常を超えるトラフィックを生み出していると語る。「大きな投資ではないが、会話のきっかけになるマーケティング作戦だ」と同氏は述べている。

ヨセフ・ヤコブのチームは、今後数カ月に、顧客が自社のグッズを使った画像やコンテンツを送ることに期待している。これらは、マニシュウィッツのユーザー作成コンテンツの一部として使用される。「今後1年間で、需要に応じて商品ラインアップを拡充していく予定だ」とローゼンフェルド氏は認めている。

同氏は次のように述べている。「我々は、自社の歴史と文化的な位置を反映する声を作り出したいと考えてきた。おばあちゃんの好きなブランドという枠を超えて進化するという構想だ」。

[原文:‘A marketing ploy that acts as a conversation starter’: Inside Manischewitz’s merch strategy]

GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Manischewitz

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