ファンサうちわを振る対象が必ずしもアイドルである必要はない。
うちわを振るのも、振られるのも、自由だ。
ファンサ(ファンサービス)とは、主にアイドルをはじめとした芸能人やスポーツ選手、またはファンサをもらう側にとってアイドルのような存在などから享受するサービスのことである。(例:ピースをしてもらう・手を振ってもらう など)
私は大手事務所のアイドルが好きなので、ファンサをもらうためには要求をしたためたうちわを振るのが最も一般的な手法となる。
突然だが、ここで私が愛用しているうちわをご覧いただきたい。
ファンサをもらう気がゼロすぎる。
これは私がドルオタになって間もない頃に初めて作ったうちわである。昔も今もアイドルに対して最も望むことが「健康」なのでこう書くしかなかったのだ。
しかし、最近メラメラと「本気(マジ)でうちわが振りたい」と思うようになってきた。
ドルオタうん年目にしてやっと、アイドルに向かってうちわを振るオタクが皆一様に楽しそうなことに気付いたのだ。
…いや、うそかも。鬼の形相でうちわを振るオタクも結構いる。しかし、般若と乙女が入り混じって荒ぶる客席は、一人の人間の心を動かすのには十分すぎるほどのパワーを放っていた。
ファンサうちわを振りたい。
その欲望がピークに達した時に、ふと気付いた。
うちわを振る相手は、アイドルじゃなくてもいい。なにも対象をアイドルだけに限定することはない。誰でもいいのだ。なんなら、アイドルじゃなければ確実にファンサをもらえるかもしれない。
そう、たとえば
友達とか。
ということで、私の友人である加藤を呼び出した。
「私がうちわをふるから、ファンサをしてほしい」という誘いに二つ返事で了承してくれた。やはり持つべきものは快くファンサをしてくれるダチである。
振っていく
さっそく今日のために作ったうちわを振っていく。(最初に言っておくが、このうちわをコンサートで使うことは絶対にない。)
コンサート感を出すためにマイクも用意した。
アイドル感を演出するためにメンバーカラーのテープを貼った。
これを加藤に渡したら、
なんのためらいもなく、『歌唱力に自信のあるワイルド系アイドル』みたいな持ち方をしていた。役に入るのが早い。もちろん加藤は今も昔も完全な一般人である。
とりあえずの「ピースして」
まず手始めに「ピースして」のうちわを振る。
最初は近くで振ってみる。
咄嗟にワイルド系アイドルのピースができるのアッパレだな。というのはひとまず置いといて、ファンサ感はない。
距離が近すぎるのかもしれない。実際のステージと客席はもっと離れている。
距離を遠くしてみよう。
さっきよりファンサ感が増した気がする。結構嬉しい。友達がピースしてるだけなのに。
しかし、あまりにもストレートすぎる。ここまで狙い撃ちでピースされたら「こいつら繋がってるのかよ」という雰囲気が出てしまう(事実、我々は10年来の友人である)。
同じ要領で「じゃんけんしよ」も振ってみた。
しかし、やっぱり盛り上がりに欠けた。
「こっち向くかな?向かないかな?」という緊張感が足りないのだろうか。
もちろんここは普通の公園であり花道なんてない。しかし、すでにこのとき我々の気分は「東京ドーム~~~~~!!!!!!!!!盛り上がっていけんのかいッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」だったので、花道も照明も客も立膝をついて背を向けるスタッフも、たしかにこの目に見えていたのだ。
よし。歩こう。東京ドームのステージを。
歩きながら、
じゃんけん。
…ファンサだ。想像以上のファンサ感にテンションがブチ上がってしまったことが、ブレブレでわかりにくすぎる写真からも伝わるだろう。伝わるといいな。伝わってください。
しかし、自分でつくっておいてこんなこと言うのもなんだが、じゃんけんしてもらってもどういう反応をすればいいのかわからない。うれしいけど、「そんなに私に時間を使っていただいて申し訳ない…」という気持ちになってしまう。要求に対して私の度量が追いついていなかった。これは誤算である。
ファンサした側である友人いわく、「曲中にじゃんけんをすると自分のリズムが崩れるから難しい。時間もかかるし、勝敗が決まったからと言って何?という疑問もある」とのこと。
ポジショニングに関していうと、今回は花道から少し離れたアリーナ席を想定し、双方の距離を空けてやってみたのだが、それでもやはり遠いな〜という印象だった。
よって、今後は常に花道横の席を勝ち取ったという想定でやっていくことにした。
歩きながらやる
次は歩きながら、私の目の前を通る瞬間にピースをしてもらった。
これも嬉しい、が、私に向かってやられている感じが少ない。この公園でうちわを振っている人は自分しかいないので、確実に私に向かってピースをされているのだが、それでも「今のピースって…私に…?」という不安が生まれてしまう。
反省を踏まえ、私に向けてやっている感を上げるために、指さしをしてからピースをしてもらう。すると、さっきよりピースされている実感が強く得られた。ファンサ感も十分。
しかし、うーん…程々のうれしさだ。おそらく、ピースという動作があまりにも一般的すぎて非日常感が薄いことが要因に挙げられるだろう。
マジのアイドルにピースされたら嬉しいのかもしれないが、少なくとも友達にファンサをもらう場合においてはピースの攻撃力は弱いと言える。
ここまででわかったことは、距離は離れて、歩きながら、指差しからのファンサがもっともファンサ感が高いということ。シチュエーション設定もしっかり決めるとテンションが上がるので尚よい。
お作法があらかたわかったところで、他のうちわもガンガン振っていこう。
アイドル感は高い「ハートつくってとばして」
とりあえず最近の主流である指ハートをしてもらうも、暗くて全然わからない。これは単純に時間帯が悪かった。
私は腕を大きく振ってデカいハートを作ってみたが、「全然わからん」と言われた。あまりにも運動神経が最悪すぎて、ハートをつくることすら困難だったのだ。アイドル力が足りない。
難しい「釣って」
「『釣って』って何?」と疑問に感じる方もいるかもしれないが、安心してほしい。私もよくわからない。「釣って」の存在は認識しているが、実際に現場で釣られている人を見たことがないのだ。よって、全然上手くできなかった。
「釣って」は、釣る方も釣られる方も技術が必要だ。釣られる側の私は「釣られた」感を出せなかったし、釣る側である友達は「私は音楽に集中したいから、対応するのは難しいかな」と言っていた。ちなみに、この時はなんの音楽もかかっていない無音状態であった。
戸惑ったら負け「投げchuして」
うちわを振った瞬間、自分で作っておきながら「強欲かも」という躊躇いが生まれた。
そして実際に投げchuされ、はっきりと「強欲だったな」と反省した。友達からも「重い」と指摘された。少なくとも、一般人が振り、振られるうちわとしては不適切だったかもしれない。
ちなみに、ファンサする側には更に気分を上げてもらうために、手製のイヤモニをこしらえた。
勘でイヤホンに紙粘土をくっつけてデコったものだ。もちろんイヤモニとしての機能はゼロである。
(※これは普通に邪魔だったので不要です。)
最適解「バキュンして」
これは…嬉しすぎる。
友達にも体験してもらったが、めちゃめちゃ喜んでいた。喜ばれると、アイドル(私)としても素直に「よかったね〜(ニッコリ)」という気持ちになれる。
バキュンは、とにかく「やられた」感がすごい。確実に私にバキュンされた実感が得られる。バキュンされたあとの反応も自然にできた。できた、というか、反射的にのけぞってひっくり返って爆笑した。
衝撃と、喜びと、ときめきと、「てか、『バキュンして』って何?」という根本的な理解のできなさで脳がバグってウケる。
バキュンはファンサする側としても高評価だった。手軽さと攻撃力とやりがいのバランスが最高とのこと。ひとつひとつの動作に区切りがあるため、まさに狙い撃ちしやすいらしい。そんなん最高じゃん。
早くも「友達に振るファンサうちわ」の最適解が出てしまったかもしれない。
というか、ファンサうちわを振って確実にレスがもらえるのかなり楽しい。いいのかな、こんなに構ってもらっちゃって。後で炎上しないだろうか。しないか。一般人だもんな。
すでにかかっているが「魔法かけて」
バキュンとはうって変わって難易度が高い。やられたらまあまあ嬉しいが、動きにキレが少なく不完全燃焼(やる側の技術の問題もある)。
友達は「コンサート自体が魔法であり、すでに私はファンに魔法をかけているのだから、その上でさらに…というのは無理」と言っていた。
アイドルとしての自覚が芽生えてきている。
自意識に勝ちたい「私のこと見えてる?」
これは反応しづらいし、わかりにくい。そもそも「好きな人の視界に入りたくない」という特大めんどくさオタク心(私を視界に入れてないで、自分の生命線の長さでもチェックしていてほしいという感情)が邪魔をして素直に喜べない。だったらこんなうちわ作るなという話である。しかし、アイドルになりきっている友人に対してまでそう感じるなんて想定外だったのだ。
ついでに「好きな食べもの何?」「最近嬉しかったこと何?」のうちわも振ってみたが、このようなオープンクエスチョンは難易度が高い。返答は狭めた方が吉である。
欲望の二択「私のこと…1.好き 2.大好き」
「大好き」だとピースがもらえるという算段の強欲うちわである。
振ってみたところ、友人いわく「私はファンのみんなのことが好きだから、一人に対して『大好き』とか言うのは気が引ける」とのこと。それを聞きながら私は、もうファンサがどうとかよりも、「この人、この短時間でここまでアイドルの人格を降ろせるんだ」という、友人の思いがけないポテンシャルの高さに驚いていた。
ファンサしてわかったこと
”ファンサごっこ”において、うちわに記す文言については、とにかく素早く対応できるものを選ぶのがキーポイントである。なぜならうちわを振られる側は完全な素人だからだ。
ファンサする側の振る舞いに関して言うと、止まりながらやるよりも歩きながらやった方がいい。目も合わせると尚良い(※目を合わせる瞬間も秒数に含まれる)。
心持ちとしては、ファンサ曲(ダンスや歌よりもファンサがメインの曲)中に外周や花道を移動しているつもりでやるのがベスト(心の中でトロッコに乗るのもOK)。サビまでにメインステージ(そんなものはない)に戻ることを意識して、少し速足で駆け抜けるのも良いだろう。
よって、ベストな動きとしては、歩きながら目を合わせて、指をさして、ファンサ。その流れをなるべく素早くやるのが理想的だ。
というのがアイドル経験のない人間二人の出した結論である。
念のためもう一度言っておくが、我々は一度も花道を歩いたこともなければトロッコに乗ったこともないし、コンサートをしたこともない。
ファンサをもらうのも楽しいが、するのも楽しい。旗振りゲームに近いものを感じた。今回やったことはほぼ「赤あげて、白あげて、白下げないで、赤下げない」と同じ要領で「ピースして✌️、ハート作って❤️、バキュンして👉❣️」をする、反射神経の遊びだったかもしれない。
ちなみに、友達(医療従事者)は「これ、意識レベル確認してるみたいだね」と言っていた。
この遊びは、コンサートに行かずともコンサートが終わった後の「楽しかった〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!なーーーーーーーーーーーんも記憶ねぇーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」という気分が味わえる。と、言いたいところだが、友達と遊んだ後って大体記憶ないから、ただ友達と遊べて楽しかっただけかもしれない。
楽しかった
とても楽しかったのでこの思い出を残したくて、後日、コンサート中の自分のアクスタを作った。
使い道は今のところないです。