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スーパーマーケットチェーンのウェグマンズ(Wegmans)が、2019年にセルフチェックアウト用モバイルアプリである「スキャン(Scan)」をリリースしたとき、同社は、食品スーパーである自社でのチェックアウト体験をより速く快適なものにすると約束していた。それからちょうど3年後、このスキャン&ゴーのサービスは、「損失」が出ていたとして中止された。
こうしたセルフチェックアウトのイノベーションによって、何らかの意図せぬ結果を経験している小売業者は、ウェグマンズだけではない。大手スーパーマーケットのウォルマート(Walmart)は2018年、問題のあったスキャン&ゴーのサービスを廃止し、ようやく最近になり、ウォルマートプラス(Walmart+)の会員向けにサービスを復活させた。
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スキャン&ゴーのような、買い物客がレジ列をスキップできるようにする技術にはさまざまなものがあり、かなり前から存在するものもある。レジ列の混雑を解消し、人手不足を緩和する効果があるため、食品スーパーはセルフチェックアウト技術に投資を続けてきた。しかし、消費者の利用は伸びず、店舗側は、万引きや顧客の不満の原因になるというこの技術の欠点をまだ解決できていない。
「技術を実際に導入する際に生じる問題が、重要なユーザー体験を損なってしまうことがある」と、コンサルティング会社のピュブリシス・サピエント(Publicis Sapient)で北米の小売エクスペリエンス戦略リーダーを務めるジャッキー・ウォーカー氏は述べている。「そうなると、摩擦を緩和するはずのものが、かえって顧客をイライラさせる新たな方法に変わってしまうのだ」。
セルフチェックアウトへの不満
パンデミックは、セルフチェックアウトを普及させるための絶好のシナリオだっただ。セルフチェックアウトは非接触型であるため、支払い時にソーシャルディスタンスを保ちやすい。
ウォーカー氏は、それらが持つ可能性を考えると、スキャン&ゴー、ジャストウォークアウト(Just Walk Out)、スマートカートなどの無人化技術に小売店が投資するのは理にかなっているという。レジ列は、多くの買い物客にとって、もっとも不満を感じる場所だ。エクスペリエンス管理プラットフォームのレイディアント(Raydiant)が2021年に行った調査によると、回答者1000人のうち67%が、セルフサービスのチェックアウトマシンのトラブルに遭遇したことがあると答えている。
しかし、消費者への普及はまだ遅れている。市場調査会社のビズレートインサイツ(Bizrate Insights)が米国の成人を対象に、8月に実施したインサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)のeコマース調査によると、無人チェックアウト技術を日常的に使用していると答えたのは、女性がわずか14%、男性が15%だった。一方、女性の27%、男性の22%が、「使ったことがない」「興味がない」と答えている。
高齢の買い物客も、無人化技術の利用にはあまり乗り気ではない。同じ調査によると、18〜34歳の回答者のうちの21%が、このような技術を日常的に使っていると答えているのに対し、35〜54歳では16%、55〜65歳ではわずか6%にとどまった。
「買い物客の反応はまちまちだ」とウォーカー氏は語る。「セルフチェックアウトという選択肢を使うかどうかに関しては、間違いなく、世代間でギャップがある」。
受け入れ体制が整っていない
市場調査会社のインサイダー・インテリジェンスで主席アナリストを務めるスージー・ダビッドハニアン氏は、セルフチェックアウトのイノベーションを大規模に展開しようとすると、費用がかかる。これも消費者への広がりを妨げる一因となっていると述べている。たとえば、2020年に、専門家はAmazonのジャストウォークアウト技術を約100万ドル(約1億4500万円)と見積もっている。大規模な小売店であっても、広く展開することは財政的に難しい。週刊紙のサンデータイムズは8月、経済的な不安と売上見込みの未達の中で、Amazonがセルフチェックアウト店舗であるAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)の数十店舗の展開中止に踏み切ったと報じた。
Amazonは2020年、無人化技術のジャストウォークアウトの販売を開始するとしていた。旅行者向け小売店のハドソン(Hudson)などジャストウォークアウトを採用しているところもあるが、まだこの無人化技術を十分に受け入れていない業者もある。
「ニュースで取り上げられているほど、簡単に利用できるものではない」と、ダビッドハニアン氏はいう。「アメリカは広い。店舗の数も多いため、大多数の人は場所的にそのような技術にアクセスできない」。
技術的な課題以外の障壁
小売店は、セルフチェックアウトの取り組みを立ち上げて終わりではない。買い物客のニーズに応じて、頻繁にメンテナンスとアップデートを行う必要もある。ウェグマンズは、モバイルアプリであるスキャンの廃止を通知するにあたり、「維持するために多くの調整を行った」と述べている。この無料アプリを使えば、買い物客は食料品のショッピングをしながら商品をスキャンし、セルフレジで代金を支払うことができた。
ウェグマンズの広報担当者は、米モダンリテールに「お客様とビジネスの両方のニーズを満たせるよう改善できるまで、アプリを停止することを決めた」とメールで述べた。「今回のことから多くを学んだ。引き続き、将来のショッピング体験を合理化できる新しいデジタルソリューションを導入していく」。
スーパーマーケットの協同組合であるショップライト(ShopRite)も、10年近く前に、アプリのモバイルスキャン(Mobile Scan)で、先進的なスキャン&ペイを試験的に導入した。顧客はこのアプリを使い、自分のスマートフォンで商品をスキャンし、専用の支払い端末で精算する。いくつかの店舗では今でもモバイルスキャンを使用できるが、現在、このアプリの評価はGoogle Playで星2.2、App Storeで星2.8である。レビューでは、「スキャン機能が停止した」「問題を解決するためにカスタマーサービスに問い合わせる必要があった」などと報告されている。
ダビッドハニアン氏は、技術的な問題を別にしても、日常的に利用される小売店にとって、顧客にアプリをダウンロードしてもらうこと自体が大きな障壁になると述べている。「顧客にとって、自分の携帯電話のメモリは貴重だ。必ずしも、すべてのアプリをインストールしておこうとは思わない」。
ウェグマンズがアプリを停止した理由のひとつは万引きだとするレポートもある。スーパーマーケットチェーンのトップスマーケット(Tops Markets)もショップアンドスキャンアプリを導入しているが、買い物体験が向上する一方、「窃盗が日常化している」と声明で述べている。
セルフチェックアウトの試みがなくなることはない
専門家によれば、このような問題は、もはや小売店によるセルフチェックアウトへの投資の加速を妨げるものではないという。
実際、食料品配達サービスのインスタカート(Instacart)は最近、AIを採用したスマートカートのケイパーカート(Caper Cart)やスキャン&ペイ機能を含む店舗向け技術一式をリリースした。会員制スーパーマーケットのサムズクラブ(Sam’s Club)は、スキャン&ゴー(Scan and Go)やスキャン&シップ(Scan & Ship)のようなイノベーションを迅速にリリースできるように、協業デザインスタジオを構築していると述べている。
また、低賃金の仕事に人が集まらないため、一部の小売店では、昨年のホリデーシーズンが終わったあとも店舗従業員の募集を継続する必要が生じている。買い物客が、購入しようとする商品を自分でスキャンするようになれば、従業員がレジで働かなくてもよくなるかもしれない。
「ブランドにとっては、今こそこの技術を実際に試してみるよい機会だ。この技術は人件費に大きな影響を与えるからだ」と、ピュブリシス・サピエントのウォーカー氏は述べている。「なんらかの進化が見られることに期待している」。
MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Walmart