糖質ゼロ飲料のスーン、ECフルフィルメントを自社運営からAmazonに完全シフト:労力集中とコスト削減を優先

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糖質ゼロ飲料のスーン(Swoon)のウェブサイトを訪れた買い物客は、チェックアウトのときスーンから直接購入するのではなく、Amazonを通してチェックアウトするよう誘導されるようになった。

スーンは2月末、自社の顧客ベースや、顧客の買い物の習慣、および独立系3PLを使用したときの配送とフルフィルメント関連のコストを分析した結果、自社のバックエンドを完全にAmazonのフルフィルメントサービスに移行した。同社は2019年に創設され、レモネード、アイスティー、シロップ、およびミキサーを各種のチャネルで販売してきた。同社は全国のターゲット(Target)店舗で商品を販売しており、ミネアポリスを本拠地とする小売業者であるターゲットのウェブサイトでも、同社の商品を店舗受け取りで購入できる。また同社の商品は、スライブ(Thrive)やインパーフェクトフーズ(Imperfect Foods)など、いくつかのオンライン食料品サービスでも販売されている。同社の売上の約70%はオフラインの小売から、30%はオンラインで得られていると、同社は述べている。

eコマース大手であるAmazonのフルフィルメントサービスを使用し、主要なオンライン店舗をAmazonでのみ運用している食料品やグルメのブランドは増え続けており、スーンもそのひとつになった。これらのブランドは自社独自のD2C運用を構築する代わりに、Amazonを使用して注文へのフルフィルメントを行っている。これは、配送やフルフィルメントのコストが上昇し、D2C部門を維持するためのコストが高くなってきたためだ。

「飲料ブランド全般について、オンラインで利益を上げるのは非常に難しい」と、スーンのマーケティングディレクターを務めるチェルシー・ジョーンズ氏は、米モダンリテールとのチャットで述べた。同氏は、買い物客がすでにAmazonでショッピングを行っているなら、そこからスーンのサイトへ行って買い物をするより、そのままAmazonでレモネードの12パックケースを買い求める方が便利だと付け加えた。

労力を集中し、ひとつのチャネルに特化

スーンが自社のレモネードをAmazonで販売しはじめたのは2021年2月のことだ。その6カ月後、同社はAmazonのほうが注文のフルフィルメントに優れており、スーン自身も物流のコストを削減できると思い、AmazonのFBAへの切り替えを決断した。この計画は今年の春に完了した。同社は今でも自社のウェブサイトを運用しているが、チェックアウトの部分を修正し、Amazonのマーケットプレイスに顧客を直接転送するようになった。

「当社のウェブサイトで商品を見つけた場合でも、カートに商品を追加してチェックアウトするだけなので、マウスのクリックが1回増えるだけだ。顧客にとって複雑なチェックアウトのプロセスではない」とジョーンズ氏は説明している。スーンは、Amazonのフルフィルメントサービスに切り替えてからの3月から7月までに、毎月18%の売上増を記録している。

スーンの共同創設者であるジェニファー・ロス氏によると、これは新興企業である同社にとって、ウェブ戦略における初の大きな変更だ。「当社にとって本当の大きな決断は、自社ウェブサイトでの販売とフルフィルメントを続けるべきか、Amazonに移行すべきかだった」と同氏は述べている。

「飲料は重量があるため、飲料を販売し配送するのは非常に高価になる。このため、消費者の期待を応え、どれだけ迅速に配送できるかを考えながら、D2Cチャネルの利益を維持するのは困難だった」と、ロス氏はさらに説明する。スーンは常にFBAへの移行を計画してきたわけではない。しかし、ビジネスを開始して1年以上にわたって3PLでの配送と配達の管理を行ってきたため、Amazonへの移行が魅力的な提案だと思えた。特に、Amazonには2億人のプライム(Prime)会員が存在し、出品者はその会員にアクセスできるという点が魅力的だった。

「当初、ウェブサイトを作り、そのあとでオンラインでの販売することは決まっていた。そして何がもっともうまくいくかを確かめるため、さまざまなことを試みた。しかし今回、当社ははじめて『労力を集中して、ひとつのチャネルに特化しよう』という決定をくだすことになった」と、ロス氏は付け加えている。

スーンは毎月Amazonで数千ユニットの商品を販売していると、ロス氏は語る。Amazonに完全に切り替えるという決定をくだした理由のひとつは、コストだ。「オンラインで販売するとき、1つや2つの缶を送って採算がとれるようにするのはとても困難だ。つまり、価格帯が大きく異なる。単価の問題もあるが、総合的なコストの問題でもある」とロス氏は述べている。

Amazonの広大な倉庫網

スーンがAmazonに移行する一方で、シアトルを拠点とする大手企業であるAmazonは、出品者向けの運用コストを引き上げており、最近ではホリデー期間などピーク時のフルフィルメント手数料を一時的に追加したマーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)のデータによると、Amazonは2020年以後にフルフィルメント料金を30%以上引き上げた。しかし、スーンは、オンライン販売事業がオフラインの小売事業と比較してはるかに小規模であるため、手数料の値上げを気にかけていない。

「当社の事業のうち小売が大部分を占めている限り、Amazonが多少コスト高になっても、Amazonが当社事業の90%を占めることは決してないので、Amazonを使用することには十分な価値がある。Amazonで強固なプレゼンスがあれば、人々は当社の商品を試し、気に入った商品を買い求め、そのあとで店舗でも購入するだろう」とジョーンズ氏は語る。

Amazon代理店のサプライキック(SupplyKick)のCEOを務めるクリス・パーマー氏によると、スーンの戦術変更と同じことがあらゆる出品者に起きている。

「これは食料品やグルメのブランドだけでなく、Amazonで販売を行っている多くの業界・ブランドに一般的な現象だ」と、パーマー氏はメールに記した。サプライキックは現在、スーンと同じような計算をした食料・飲料のブランドと提携している。そのブランドは、自社商品をオンラインと実店舗の両方で販売しているが、おもなeコマース事業はAmazonとFBAによって管理されている。パーマー氏は、このブランドが「このモデルで指数的な成長と成功を達成した」と述べているが、詳しいことは明らかにしなかった。

同氏は、ブランドがAmazonのFBAに完全に切り替えることにより、米国でもっとも広大な倉庫ネットワークを使用できることになると語る。「プライムの出品者なら、顧客に対して2日間以内の配送を保証することもできる」と同氏は述べている。

「自社の主要なeコマース販売チャネルとして(従来は自社のD2Cウェブサイトを運用していたように)、Amazonを運用することに注力し、マーケットプレイスでの競争力を維持するために必要な時間とリソースを投入する限り、このルートを選ぶことには多くの利点がある」と、同氏は付け加えている。

[原文:Why Swoon abandoned its DTC arm and is using Amazon to fulfill all its online orders]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Swoon

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